二ツ神温泉の謎
文字数 1,718文字
－PM11時20分－
《二ツ神温泉》
··ここが二ツ神温泉か
かなり立派ですね···
老舗旅館のような
ああ··
それにしても···
随分山の麓に建っているです
ここの温泉旅館は
都心からはとても離れていましたが
山の麓と言うこともあり、緑が多いので
心身ともに休めるにはとても環境が良く
素晴らしい場所に在ることは間違い
ありませんでした
そんな癒しの場で
一体何が起きているのか···
···それじゃあ、旅館のオーナーに挨拶してから始めるぞ
はい··
(今のところは特に何も感じない··、まだ少し離れているからなのか··)
－PM11時30分－
《二ツ神温泉－フロント》
いらっしゃいませ
依頼を受けて来た伊吹だ
これは···っ！お待ちしておりました！
こんばんは···です
可愛らしいお嬢さんまで··
お二人で御越し頂いたのですね
っ！！
取り敢えず、『鬼灯の間』に案内してくれ
かこしまりました
『鬼灯の間』
···········
ほう··
やはり全体的にレトロな雰囲気ですね
···ああ
···ここが『鬼灯の間』でございますが、この部屋に宿泊された女性のお客様の様子が必ずおかしくなると···
·········
······十朱
はい··？
何か感じるか？
···それがですね、
何も感じないのですよ
···そうか
で、ですが必ずこの部屋のお客様に起きる事なのですよ？！
だが、今この部屋に何かがいる気配は無い
そもそも···、必ず何かが起きるのであればこのお部屋に宿泊させないようにしなければならないのでは？
···········
··何か、訳ありか？
···実は
····今から1年ほど前の事です
露時期の紫陽花が咲き誇る季節にあの方は此処に来られました
···あの方？
···修行僧の仏眼、と名乗っておられました
仏眼(ぶつげん)···
···それは少し盛りすぎなお名前です
···え？
仏眼(ぶつげん)とは即ち、五眼と言われる悟りを開いた者にのみ備わる、全ての実相を見通す仏の眼を指す言葉だ
残念ながら、修行僧には備わりません
···しっ、しかし···
あの方のおかげで、この旅館は繁盛していると言っても過言ではありません！
·······
···そいつは何をしに此処に来たんだ？
··あの日は凄い豪雨で
あの方は、たまたまこの旅館を見つけたと言っていました
そして、雨宿りをさせて欲しいと···
雨宿り···ですか
···それで？
当時のこの旅館は、あまり客足も好ましくなくあまり繁盛はしていませんでしたが··、雨宿りとは言え大切なお客様でしたので
丁重におもてなしをさせて頂きました
何か食い物を与えたのか？
そ、そんな犬猫のような言い方を··っ
·········
···あの方は、ろくに何も口にしていないと仰有っておりましたので、熱いお茶とお食事を少々··
なるほど··
それでそいつは礼に何を置いてったんだ？
はい···
それがこの部屋の屋根裏に祭ってあるのですが、錆びた古い鏡と有り難いお経の書かれた包みを···
···そうか
だが、それが何故商売繁盛の由縁だと思う？
··あの日、仏眼様に必ずこの部屋の屋根裏にそれを祭り、女性客を泊めろと言われ··
それからと言うもの、この旅館は驚くほどに繁盛して参りましたので··
·······
ですので、我々からすれば仏眼様は神も同然な存在なのです··
···では、今回の依頼内容の様な出来事はいつから起きるようになったです？
それは···、大体1ヶ月前くらいでしょうか
なるほどな···
まあ、今は何も感じねえが口寄せが始まれば必ず何かが起きるだろ
···またそんな適当な事を
それでは···、何卒宜しく御願い致します
ガラ― ﾊﾟﾀﾝ
····その仏眼とか
明らかに百鬼の類いだな
百鬼ですかぁ··、それは私の管轄外ですね～
···しかし、人の姿をしていれば普通の人間には見分けなどつきませんよね
ああ、だから家の中に入れちまう
そして、食い物を与えた時点でろくな事にはならねえんだよ
今回、口寄せして何が降霊されるか分かりませんが··さっさとやっちゃいましょう
ああ、後は俺が何とかするから十朱はそいつを外に出さないようにしてくれ
了解です
