1.オルトランド家・大広間にて
文字数 1,533文字
ここは古城の大広間。居並ぶ執事とメイドたち。
添えつけられた荘厳な玉座が厳格な雰囲気を醸し出している。
玉座には、誰もいない。
玉座の横には小さなテーブルとティーセット。
そこに座って優雅に紅茶を嗜む幼い少女。
13才にして十分な気品を漂わせる彼女こそ当該領地・当主代行、リリーア・オルトランドである。
私が当主様から命じられていますのは、あくまでも事務所作、物事の方向付けのみで御座います。
全ての最終決定権はリリーア様に在りますれば、そのようには参りません。
どうか居られるべき場所にお戻りを。当主の威厳が損なわれます。
控えるのは貴様だウォルス。
ラクトンブレッドは正式にリリーア様から任命されたリリーア様付きの正当な執事だ。リリーア様の命によりここに居り、リリーア様の命で動いている。
・・・貴様、リリーア様のお考えに逆らうか?
無闇に敵を増やす言動は慎むことだ。
お前の敵が増えるということはリリーア様の敵が増えると同じと知れ。
・・・実際にはそれほど短絡的ではないがな。可能性は増える。
主に掛かる危険は可能な限り排除するよう心掛けよ。
仕方ありませんわね、争いの種を持ち込むつもりは御座いませんもの。
きちんとそちらの席に付かせて頂きますわ。
でも、一日中そちらの席に座っている必要もないのではなくて?
私のする仕事といえば、出来上がった書類に署名をするだけでしょう。そこまでは貴殿が取り仕切って下さいますものね。
流れるように進んだやりとりの後、リリーアは居住並ぶ執事たちをぐるりと見渡し、
実質的な決定権を握る執事長と当主代理が話をまとめたのだ。
口を挟める者がいるはずはない。
こうして、リリーアとラクトンブレッドは大広間を後にした。