ワギャンランド

文字数 905文字

 ものごころついて間もない時期に遊んでいたゲーム。記憶の古い層に印象が残っている。自分にとっては、生まれて初めて好きになったゲームだと思う。少なくとも、いま思い出せるかぎりでは。
 緑色の恐竜型ロボット? といっていいのかどうか、正体をよく知らないが、とにかくそんな姿のワギャンというかわいらしいキャラクターを操ってステージをクリアしていく2Dアクションゲーム。
 とにかく幼いころに触れたゲームなので、ボタンを押すと反応があるという、それだけで嬉しかった。なんせ、別世界を動きまわれるのだ。楽しくないはずがない。
 ワギャンは音波で攻撃する。口から「ワッ」とか「ギャ」とかの文字を発射して、敵を固まらせるのだ。固まった敵を踏み台にしてジャンプすることもできる。ワギャンも不思議な存在だけど、敵もかたつむりだとか動くキノコだとか動くステッキだとか、なかなかファンシーな世界観だった。背景もほんわかした色使い。夢の世界だ。
 印象的なのがステージラストに控えているボス戦で、アクションゲームなのにボス戦はアクションではない。しりとり、もしくは神経衰弱による勝負である。なんで? という気もするが、夢の世界に不自然はない。疑問に思い始めたら、この世界すべてが疑問だらけだ。受け入れるのみである。
 このしりとり勝負、知識も言葉もおぼつかない子どもにとっては、ちょっと難しい部分もあった。絵の描かれたパネルから選択するのだが、なにこの絵? なんの言葉を表している絵なの? と迷うことしきりであった。このボス戦を楽しみとしていたのか、苦手と感じていたのか、はっきり思い出せない。よく負けていたことだけは憶えているけれど。知識欲を喚起し、言葉への興味を抱かせるという点においては、教育的なゲームだったのかもしれない。こじつけだけど。
 自分にとっては、ゲームは夢の世界であり、遊びの天国だということを教えてくれたゲームのひとつだった。初めて出会う本、初めて出会う映画、初めて出会うゲーム。そういったものが与えてくれた善き印象は、忘れるくらいに時が経っても、世界への根拠のない信頼感を支えてくれているような気がする。大げさな話だけど。
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