2020年5月23日

文字数 2,610文字

2020年5月23日
  パンデミック以前、世界的規模において最も重要な現代的課題は地球温暖化である。それにはグレタ・トゥーンベリの活動の影響が大きい。彼女の行動力が世界的なエコロジーの連帯を生み出している。

 もちろん、同時代的な優先順位からその報道量は減っている。しかも、メディアに取り上げられる際、それはパンデミックとの関連した内容である。

 NHKは、2020年5月20日 0時13分更新「世界のCO2排出量 外出制限などで減少も温暖化防止には不十分」において、そうしたパンデミックの影響を受けた環境問題について次のように伝えている。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出制限などの影響で、世界全体の二酸化炭素の排出量が最大で17%減少したとイギリスなどの研究グループが発表しました。一方で、地球温暖化防止のためには十分な減少とは言えず、各国は、経済を回復させる過程で排出量を増やさないための構造的な改革を進めるべきだと指摘しています。
これはイギリスやアメリカの大学などの研究者で作るチームが日本時間の20日、発表しました。
研究では、69の主要な排出国について、外出制限の度合いに応じてことし1月から4月の二酸化炭素の排出量を試算しました。
その結果、1日当たりの排出量は去年に比べ中国で23.9%、日本で26.3%、アメリカで31.6%最大で減り、世界全体では先月7日のピーク時に17%減少していたことが分かりました。
これは、世界的に外出制限が広がり自動車からの排出が大きく減ったことが最大の要因だということです。
一方、ことし1年間の排出量は最大でも7%程度の減少にとどまる見込みで、国連が、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるために毎年必要だとしている削減目標にようやく届いた水準です。
執筆者の1人で、イギリスのイーストアングリア大学のコリーヌ・ルケレ教授は「コロナ後の経済政策においてどの程度気候変動を考慮するかで、今後、数十年間の排出量が決まる」とコメントし、各国は、経済を回復させる過程で、徒歩や自転車の利用を促進したり在宅勤務を奨励したりするなど、排出量を増やさないための改革を進めるべきだと指摘しています。

 二酸化炭素排出量の減少は尾案でミックによる経済活動の停滞が原因であって、一時的な現象である。コロナ化が下火となり、消費が回復して、生産量が戻れば、温室効果ガスの排出量は増加するだろう。技術革新やライフスタイルの変化を通じて改善される可能性はあるが、パンデミック下の値が維持されるとは考えにくい。

 近代は自由で平等、自立した個人によって成り立つ社会を理念とする。社会契約説によれば、政府、すなわち国家はその社会のための機関である。功利主義によると、個人の功利、すなわち幸福の増大が社会にとって望ましい。その際、経済成長や科学技術の進展による物質的豊かさが必要で、それにはそうした活動の自由が不可欠である。国家は産業発展を邪魔しないのみならず、促進する制度整備や政策実施を担当していく。

 しかし、急激な産業発展は自然環境にその回復力を大きく上回る負荷を加える。それは無視できない状態に至り、公害を始めとするさまざまな環境問題が噴出する。こうした状況は近代文明自身への懐疑をもたらす。物質的豊かさの追求がこの事態を招いたことは確かである。それは社会の功利の増大に基づいており、この幸福はあくまで人間が中心だ。その信託を受けた政府の活動も同様である。産業主義には人間中心主義が背後にある。

 エコロジーはこうした人間中心主義への批判を含まざるをえず、それは近代を相対化する思想である。エコロジーの政治は人間社会の維持と繁栄、すなわち人間の満足以外の課題の考察を促す。伝統的な共通善、すなわち公共の利益に人間以外の自然界全体のそれを加味する。むろん、環境悪化は社会における功利を減少させる。功利を増大させるために、政府はエコロジーの問題提起に応える必要がある。だが、人間の幸福追求自体が環境悪化を招くとすれば、自由の制限が伴い、人々の同意が必要となる。

 エコロジーの主張を自由主義と調和させた発想が持続可能な開発である。フェミニズムがそうさせたように、エコロジーも自由主義を進化させている。持続可能な開発によりエコロジーは拡張された自由主義でもある。

 人間中心主義批判は近代文明全体を射程に入れるので、近代以降に蓄積されてきた知識の全否定を招きかねない。それは非合理主義の台頭を許すことになる。その一つが既得権や生活習慣の維持のため、エコロジーの異議申し立てを軽視・無視する動向である。それは、アメリカの地球温暖化懐疑論者が示している通り、科学の知見を恣意的に利用する。一つ一つ挙げるまでもなく、グレタの主張に反対する言説の多くがこの非合理主義に含まれる。

 新型コロナウイルス感染症をめぐる非合理主義も、ドナルド・トランプ米大統領が示すように、エコロジーに対するそれと重なるところがある。そこに共通しているのはパターナリズムだ。

 このごろどうも、おじさんぽい言説が、社会の表層で幅をきかせているような気がする。社会の価値観が変わろうとしているときだけにかえって目につくのかもしれない。
 伯父さんやおばさんの言説的特徴は、ものごとを単純に割りきり断定したがることだ。「人間が生きていくにはきびしさが必要だ」とか、「どの世界にもいじめはある」とか。さすがに今では、「男は女を征服したがるものだ」とか「金さえあれば幸福が買える」だとかは口に出しにくいが、心の底で考えていないでもない。
(森毅『みんなおじさん化』)

 夕食には、牛肉とも野菜の炒め物、セロリとパプリカのピクルス、野菜サラダ、豆腐と海苔の中華スープ、食後には玄米茶、ウォーキングは10037歩。都内の新規陽性者数は22人、

参照文献
森毅、『21世紀の歩き方』、青土社、2002年
「世界のCO2排出量 外出制限などで減少も温暖化防止には不十分」、『NHK』 、2020年5月20日 0時13分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200520/k10012436651000.html?fbclid=IwAR2oJlYbZ1cEUiKZv1QplYpSNujd4zB_cVhACfSyJNR-zsg7Cyz7iTbM10k
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