第四話「カミガカリたち」
文字数 1,865文字
3人が任務を受けた数日後の6月某日日曜10時前。
川中グランドホテルの1階ロビーのカフェに久世竜胆の姿があった。
コーヒーを傾けながら2人を待つ。
進藤まゆみは同じ学校の生徒と教師である上にカミガカリとしても何度か一緒の任務についたことがあった。
氷室護は初めて聞く名だったが、特対にも名が通っている睦月達雄の弟子とのことだった。写真を見たのですぐに分かるだろう。
そんなことを考えていると若い大学生風の男性がカフェに入ってきた。
周囲をキョロキョロと見回している。隠しているがほんの少し霊気を感じた。
彼が氷室護だろう。
護も他と違う霊気を感じたのか、竜胆に話しかけてきた。
特対の若いエージェントと聞いていたが、自分より年下とは思わなかった。
物静かで霊気を感じなければ目立たない一般人として目に留めなかっただろう。
腰の低い丁寧な対応にいささか動揺する護であった。
そろそろ集合時間ということでロビーに場所を移す2人。
軽く自己紹介をしながら最後の1人を待つ。
護がそう呟くと、もの凄い勢いでロビーに駆け込んでくる女性が1人。
いつものことなので竜胆は苦笑いをする。
本人は独り言のつもりだろうが、随分と大きい。
竜胆はため息を一つ吐いた。
護は名前くらいしか知らされていなかったので少し戸惑った。
何故この先生はいつも姦しいのだろうか、毎日何か良いことでもあるのだろうか。
学校7不思議の1つ「毎日元気な進藤先生」について思案しながら竜胆は声をかける。
川中市で連続して人が失踪もしくは死亡している事件が発生している。
現在判明している行方不明者などは8人、うち1人は身元不明で死体としてなっていた。
7人は同じ住宅街に住む家族だそうだ。
表向きは行方不明だが、実際は霊魂を抜かれて霊肉化している。
川中十番駅前の古書店で妙に目を引く本が置いてあった。
古書店は老人が趣味でやっている店で、閉まっていることも多い。
失踪事件が発生し始めてからその老店主とコンタクトが取れていない。
この土地には土地神と言える存在がいない。
正確には「いた」。
16年前の煉獄の夜にアラミタマと闘い、相討ちになったとされている。
現在、神社跡地の霊脈は聖堂騎士団が管理している。
考えるよりまず行動のまゆみの提案だったが、竜胆に制止される。
ホテルから出た3人は繁華街を通って十八番駅に行き、電車に乗って十番駅に向かうようだ。
その途中で彼らは異邦人と出会う。