月詠三言の求愛(1)
文字数 1,992文字
仕事は派遣で魔王退治をやっている。
年齢は35歳、独身だ
昨日、母親から見合いの相手を探すと連絡があった。
バ、バカヤロウ! 結婚するなら阿部寛しか認めん!
っていうか阿部寛は結婚してるじゃないか!
そんなことを考えながら
人材派遣会社「KAMASEYA!」にやってきた。
ここは私が勤める企業なのだが、
自分でもかなり気に入っている。
まず「KAMASEYA!」という企業名がじつにイイ!
私は関西出身で「かましたれ!」という関西弁に音が似ていて心地いいのだ。
おまけに魔王を退治できそうな勢いが感じられるではないか!
企業ロゴもいい。
ロゴは「勇ましい犬」が吠えているのだが、
いかにも魔王を倒せそうではないか!
会社の外観は2階建てでさほど大きくはないが、
白を基調にしたシンプルなつくり。
私の身なりは魔法剣士ということで呪符などを頭に巻いたり、
ゴチャゴチャしているが本来はシンプルなモノが好きなのだ。
さて、次はどんな派遣先なのだろう?
私は意気揚々と会社の玄関に入り、
鼻息とともに社長室のドアをバーンと開けてやった。
ドアを3回ノックする三言。
三言のおでこに本の角が突き刺さる。
10階建ての立派なビルを所有しているのは
魔王退治業社「株式会社HERO」
緊張した面持ちで三言が事務所のドアをノックすると
「どうぞ」と低い深みのある声が返ってきた。
事務所の中に入る三言とフミ。
そこには俳優の阿部寛に似ている
渋く漢気ある戦士が立っていた。
三言の顔がぼふっと赤くなる。