第6話(3)

エピソード文字数 2,913文字

「ぁぁん、なんだオメーら。何しにきやがった」

 着いた場所は一戸建ての門の前で、体中にトゲが生えた男性がガンを飛ばしてきた。
 今回は室外で、反応も大きく違ってる。これはイケる予感だ。

「はーい質問です。アンタは、自分の意思でピマ山ピマ彦を脅したんだよな?」
「…………そうだ」

 空白、十三秒。ちょっと微妙。

「……なあ。この世界に、自由に編集できるネットの百科事典的システムはあるか?」
「おう。『ディクショナ』、ってのがあるぞ」
「んじゃ、それを使いたい。インターネットをできる機械を貸して」
「はぁ? 嫌だと言ったら?」
「『チェンジ・マナ』という素敵ーな究極奥義で、貴様を魔力に変換する。それが嫌なら貸しやがれ」
「……ケータイだ。これで出来る」

 この究極奥義は、もはや印籠。こちらは勝手が違っていたので京栄に検索させ、『月詠京栄』のデータを出した。


《月詠京栄24歳 名誉にこだわる傾向があり、品評会で暴れた過去あり。
        作るピーマンは美味いが値段が高く、庶民は手に取りにくい。   》


 ホッ。
 やった、やったよ……! この男が犯人だ!

「よーしぃ京栄っ、自首しろ! 電話をするか交番に走れ!」
「………………」

 京栄は、はいと言わない。しかもついさっき認めたくせに、ソワソワしだした。

「にゅむむん? どーしたのー?」
「…………………………やっぱ……。自分も大事だよな……」

 ヤツは、ギリッと切歯。何かに悩んだ末に、俺らを見回した。

「…………オレ様の意思でやったのは、偽りだ。何者かが脅迫状を出してきたんだよ」
「ふーん、そうか。面白い冗談だな」

 俺は、即刻笑い飛ばす。
 京栄、お前はやる人間だよ。振る舞いに加え白状の方もこれまでと違ってて、正体不明ってのは信用できません。

「月詠さん。嘘はいけないわよ?」
「こっ、これはホントーなんだっ。手紙だってちゃんとあるんだぜっ!」

 彼は、猛ダッシュ。すんごい勢いで家に入り、封筒を握り締めて出てきた。

「ほら、こいつだ! 読んでくれ!!
「「「「…………」」」」

 そう言われたので、皆で読んでみた。


《ピマ山ピマ彦を脅し、ピマ彦に2位を脅させ、2位には1位を、新たな者が1位になった時は元1位にそうさせろ。そしてお前は午後11時59分に辞退しないと、畑に害虫をばら撒くぞ。
 ※脅し方は、脅迫状。必ず手書きにしろ。                   》


 そんな文字が、ワープロで打たれていた。
 とっても、怪しかった。
 自作自演の臭いが、プンプンした。

「月詠先生。これ、自分で作ったろ?」
「違う違うホントーに送られてきたんだよ! ほらっ、ここに違う星の消印があるだろっっ!」

 封筒の右上には、んーと……。《葉輝星(はきせい)9ー9ーP》、とある。
 簡単に違う星から届くことにビックリだが、それはさて置き。確かに、別の場所から送られてはいる。

「しかも、葉輝族――葉輝星の住人が手紙を送る際に入れる、葉っぱも入ってるんだよ! どうだっ? 信じてくれたかっ?」
「いんや、ちっとも信じねーよ。だってソレは、自分が行って葉っぱを入れたら作れるもん」

 そういう手紙は、いくらでも偽装できる。よって証拠にはならんよ。

「月詠先生。やっぱりこれ、自分で拵えたがやろ?」
「ち、違うっ。嘘偽りはねぇんだ! 信じておくれよぉ!!

 京栄は俺に縋り付き、服に顔を埋めて大泣きする。
 こいつは、泣き落とし作戦的なモノ――。に、見えるけど……。妙に、本気っぽく感じるんだよなぁ。

「んーむ。真偽を見分けられる方法はないかな?」

 と口にしてみたが、そんな都合の良いモンがあるワケないよね。ぽんぽん進むのは、ドラマや漫画の世界だけ

「あるわよ」

 ドラマや漫画の世界さん、ごめんなさい。現実世界でもあるワケがありました。

「従兄くん。『無の追憶』を、覚えてる?」
「うん。死んだヤツ――厳密に言うと死んで間もないヤツの魂を調べて、その記憶を読み取れるんだよね」

 それは初めて会った日に使ったから、忘れるはずがない。あの日のビクンビクンは衝撃的で、前後の出来事まで脳に焼き付いていますもん。

「あれの姉妹魔法があって、植物に語りかけてその記憶を読み取れるのよ。そこの葉っぱは作り物じゃないから、時間を遡れば誰が作成したか分かるわ」
「おねーざんっ、だのむ! おでざまのごとばぼっ、じょめいじで!」

 多分京栄は、『おねーさん、たのむ! オレ様の言葉を、証明して!』と言ってる。これを理解した俺は、京栄検定5級だな。

「私に触れていれば、視覚と聴覚を共有できるわ。従兄くん、太腿に触れて頂戴」
「や、そこじゃなくていいでしょ……。肩にするよ」
「駄目。肩だと魔法を使いません」

 д!? なんですと!?

「どうする、従兄くん? 肩にする? 太腿にする?」
「ああもうフトモモにしますよ! はい触ります!」

 レミアは、シズナの右肩。フュルは、シズナの左肩。優星は、左の太腿に触れた。

「んんっ。こんな時に…………従兄くんったらエッチ……っ」

 変人1号はモジモジと肩を動かし、人差し指で俺の眉間を軽く突っつく。
 こんな時に、なのは貴様だ。解決したら蹴り飛ばしてやる。

「こら、シズナいそげ。魔法やれ」
「はいはい、エッチな従兄くん。『無(む)の軌跡(きせき)』、発動」

 その瞬間全方向から浮遊感に似た違和がやって来て、やがてカチッという音がする。そうしたら視界が一瞬で変わり、目の前は真っ暗になった。

「従兄くん、これは葉っぱの視点なの。封筒に入っているから暗いのよ」

 どうして真っ暗? と思っていたら、シズナが説明をしてくれた。
 なるほどなるほど。葉っぱさん目線で確認してくんですな。

「にゅむっ。それならそれなら、ここから巻き戻せばいーんだよねーっ。シズナちゃんスタートだよー」
「ええ。巻き戻し、開始」

 そうすると今度はキュルキュルという音が発生し、時折チラッと光が差すようになる。恐らくこれは、運搬中に浴びた太陽光かライトだろう。

「…………一分くらい経ったけど、まだ変化がないにゃぁ。どれくらい掛かるがやろう」
「大きな変化があるまでは数千倍の速さで動くようにしてるから、もうじきだと思うわ。あと少しで………………動きが、あったわね」

 光が、大量に降り注ぐようになった――これは封が開いている状態で、即ち葉っぱを封筒に入れた直後となった。ということは……もうすぐ送り主が葉っぱを手に取るから、そこで全て判明するな。

「にゅむむっ。ウソだったのかな、ほんとーだったのかな?」

 視界が動き出し――葉っぱは掴まれ、ついに封筒から出た。さあてこの手の主は、京栄なのか?

「「「「!」」」」

 視認した俺らは、一様に息を呑む。
 これは…………予想だにしなかったな。まさか、


 ピマ山ピマ彦が映るだなんて。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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