第1話

文字数 572文字

 何度も記憶によみがえる風景…。
 少年の頃に見た、エーゲ海の島のギリシア正教会…。それは、海に反射する陽光を受け、美しかった。
 ボクは、白壁の家に住んでいた。三階のベランダから、エーゲ海の青い海が見えた。毎日学校から帰ると、飼い犬がボクを迎えた。
 ボクは理科に興味を抱いていた。NASAのロケットの映像を見て、いつか宇宙へ行きたいと考えていた。
 ボクは養子だった。養父母は、五月から八月まで、白壁の家のゲストルームに、観光客を宿泊させていた。それでボクは少年時代に、色々な国の人に出会った。

 父母は申し分なかった。ボクは彼らを愛していたし、今も愛している。彼らはボクに大きな影響を与えた。養父はいくつも海原の風景を、時間を見つけては描いてた。養母は、海辺のアート・ギャラリーを手伝ってた。ボクが住んでいたクレタ島は、エーゲ海では大きい島で、飛行機でアテネから四十五分で到着する。大昔クレタには独自文明が在った。一九〇〇年、エヴァンス卿の発掘隊が、地下に埋もれていた迷宮クノッソスを発掘した。それがクレタの古文明が残した遺跡だ。ボクは養父母に連れられ、古文明の遺物が展示されているイラクリオン考古学博物館へ何度か足を運んだ。養父は非常に熱心に展示を見ていた…、そんな記憶がある。ボクはミュージアム・カフェで飲むコーヒーが好きだった。
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