somewhere -1-
文字数 527文字
深夜。
それは目を覚ました。静かな目覚め、ではない。それは激しく上体を起こし、肩で息をしながら見開いた目をギョロギョロ動かした。
はぁ、はぁ、はぁ、……はぁ。
落ち着いたところで、大きくため息をつく。
それは両腕で頭を抱え、声を押し殺して泣き出した。
静かな部屋に響き渡る嗚咽。月明かりが、それを見守っている。しかしそれは自分の頬を濡らす涙が月明かりに暴かれることを拒み、顔を上げなかった。
月明かりは、星は、空は、……布団は、枕は、ライトスタンドは、携帯電話は、――それを取り囲むものたちは、皆一様に押し黙っている。その中で、それは声を上げた。
それはベッドに仰向けに倒れ込んだ。
そして、笑った。