第12話 海の見える高校

文字数 578文字

 20kmを過ぎる頃までは順調だった。2件目のコンビニを出発する頃で家を出てから2時間ちょっと経過。10km1時間って言ったら、多分、マラソンの市民ランナー並のスピードぐらいなのかな。わたしとしてはそれなりの速さと自負した。けれども、その後、25kmくらいに差し掛かると、突然足が鉛のように重くなってきた。やはり、普段全く運動をせずに高校生活を送ってきたツケなのかな、筋肉が疲労してきたみたい。いや、そもそも、わたしの脚に筋肉など無いくらいかもしれない。
「よいしょ」
 思わず掛け声をかけてペダルを回す。回転させるつもりが、ママチャリのように漕ぐ感じになってしまい、とても情けない。ごめんね、相棒。
 しかも、ここから先はどうやらだらだらとした上り坂が延々続くみたい。北星高校は丘の上にある高校、とは知っていたけど。丘陵地帯のてっぺんに建った北星高校の窓からは、海が見える。なんでこんなことを知ってるかと言うと、去年の夏、北星高校が、10代の新人女優の主演映画「海、見る街」のロケ地となり、その映画をクラスの女子みんなで観に行ったから。夕暮れの校舎の窓から主演の子がじっと空を見つめているシーンがとても印象に残った。わたしの好きな映画のひとつになった。
 よし、後もう少し、北星高校の素晴らしい景色を楽しみに踏ん張ろう!校舎の中に入れるかどうかはわからないけど。
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