第35話 忘れた頃に身体検査がある-別視点-
文字数 3,857文字
仮眠をとり終えたリアと共に私は、頼まれて用意して置いた部屋にやって来た。
リアはまたローブを被 ってはいるものの、今の被り方は浅いためある程度顔が見えている。十分表情も分かるし可愛いので、今回はこのままにして置こうと思う……下手にいきなり脱がせると危険なことも分かったしな。
「それではアルフォンス様、まず服をお脱ぎ下さいませ」
そう、まず服を脱ぐ……ん?
「だから服を脱いで頂きたいのですよ」
「き、君はいきなり何を言っているのだ!?」
一度目は聞き間違いかと思ったが、わざわざもう一度言ってきたぞ!?
「何って言われますと……他の方には行った身体検査がアルフォンス様だけまだなので、お受け頂こうと思いまして」
「身体検査……?」
「はい、そうです」
いつの間にか、そんなことをしていたのか……。
いや、でもそんな話聞いたような聞かないような……。
「そうは言っても嫌だと仰るのであれば無理強 いは致しません。嫌なのであればハッキリ言って頂いて結構ですからね」
こちらが悩んでいるのを見かねたらしいリアが、そう付け加えてくれた。がそう口にするリアの表情はほんの少し悲しげというか残念そうな雰囲気を醸 し出していた。
な、なんだこの謎の罪悪感は……!?
決して露骨 な感じではないが、そこはかとなく断ると悲しむのだろうという空気は伝わってくる……。
そして、もし断ればもっと悲しそうな顔をすることが予想できてしまい更に罪悪感が……くっ!!
「……分かった受けよう」
「そうですかー! ありがとうございます、そう言っていただけると大変助かります」
私が承諾 すると、こちらの気も知らずに表情を一気に明るくして無邪気 に笑うリア。
可愛い……何ならさっきの悲しげな表情も含めて全部可愛い……!!
これを無意識にやっているのだから、恐ろしい子だ……。
そんなことを考えていると、こんどはリアのこんな声が聞こえてきた。
「そうだ、よろしければお手伝いしましょうか? 確か高貴なお方はお召替 えをお一人ではしないとお聞きしたのですが……」
「!?」
驚いて顔をを上げると、さも良い事を思い付いたとでも言いたげなリアの表情があった。そしてこちらの返事も聞かない内に、ニコニコした顔で手を差し出して来ているではないか。
「いい、いらん!! 脱ぐだけだからそんなもの必要ない……!!」
「そうですか……」
こちらが強い口調で断ると、リアは手とともに笑顔も引っ込めて渋々 と言った様子で引き下がった。
本当にこの子は何を考えているんだ……!! 何故その思い付きで名案だという顔ができる!?
これ以上余計なことを言い出されたら堪 らないと、そそくさと服を脱ぎリアに声を掛ける。
「……脱いだぞ」
「はい、ありがとうございます」
リアはにっこり笑ってお礼を言った後に、真剣な目付きでまじまじとこちらを見つめてきた。
………………。
たぶん彼女は私には分からない魔力的なものを見ているのだとは理解しているが……なんというか、今までにない恥ずかしさを感じる。
「あっ、もし気になるようであれば目を閉じて頂いていても構いませんよー」
するとこちらの様子に気付いたらしいリアが、そんなことを言ってきた。
その言葉に少し悩んだ末に、私は目を閉じる。
それでもまだ見られていると思うと落ち着かないが、先程よりはだいぶマシだった。
「なるほど…………」
リアが小声で何やら呟いている。
気になることは気になるがまぁいいだろう……。
しかしいつまで掛かるのだろうか……。
「それでは今度はちょっと触 りますねー」
「はっ?」
そんな声と共に腕に触れられる感覚があった。
「っ!?」
目を閉じているから実際の動きは分からないが、それはさすられているというか……撫 でられている感覚に近い。
「そっか、そういう感じか……」
こちらが驚いているうちに何か分かったのか、リアは勝手に納得したような声を零している。
そして今度は何故か指先でトントンと軽く腕を叩き始めた。
な、謎過ぎる……。
いつまで続くのかと困り始めていた頃、リアのこんな声が聞こえてきた。
「それでは次は心音 を聞かせていただきますねー」
えっ……心音……?
すぐに言葉が呑 み込めず困惑 していると胸の辺りに何やら温かいものが触れてきた。
驚いて反射的に目を開くと温かいそれはリアの頭だったようで、どうやらこちらの胸に押し当てられているようだった……。
「うわぁぁ!?」
私が驚いて身を引くと同時にちょうど彼女も頭を引いた。そして私が上げた叫び声にも動じることなくこんなことを言い出した。
「アルフォンス様、もしかして緊張していらっしゃいますか?」
「それより君は何をしてるんだ……!?」
リアは無駄に真剣な面持ちで問いかけてきたが、正直今の私にはそんなことに答えてる余裕などない。
「何故いきなり人の胸に頭を押し付けて来ているんだ!?」
「先程言ったとおり心音を聞こうとしたんですよ。流石に聴診器 などの器具の持ち合わせはなかったため、直接心臓に耳を寄せて音聞こうとしたのですが……どうもだいぶ早い気がしますね」
「当たり前だ!! そんな不用意に触れられたり近付かれれば驚くに決まってるではないか!?」
「そういうものですかね……?」
「そういうものだ!!」
「しかしそう言われると困りましたね……もし心音は諦めるとしても、せめて正常な脈拍 くらいは測りたいのですが……」
「それは本当に必要なのか……?」
「もちろん必要ですよー! ところで普通の人と同じ部位で脈を測ることは可能でしょうかね?」
「そんなこと私が知るか……」
「それでは試してみましょう!!」
リアはそういうや否 や、今度は私の腕を素早く腕を掴 みを脈を測ろうとしてきた。
「だから不用意に軽々しく触るなと言っているだろうが!?」
「分かりました次からはそうするので、今はジッとしてて下さいねー」
「…………くっ」
グイグイ迫ってくる彼女の様子をみるに、たぶんここで何を言っても無駄だということだけは分かった。
仕方ない、今は一旦諦めるか……。
しかし上半身だけとはいえ服を着てない状態で、ずっと触れられているのやはり恥ずかしいな……一応毛皮を着ているといえば着ているのだがこれはどういう扱いなのだろうか、自分でも分からんぞ……。
「毛皮でちょっと測りづらいな……それにやっぱり脈が早い……そういうものなのかな?」
リアが小声で何か言ってるが、小さすぎて内容は不明瞭 だ。
なんだ何を言ってるんだ気になる……。
真剣な眼差しで腕を見ていたリアが顔を上げて、真剣な表情のまま彼女はこう問いかけてきた。
「もしかしてまだ何か緊張などされておりますか?」
いや、緊張しているかと聞かれれば緊張しているに決まってる!!
本人はまったく自覚していないが、その行動一つ一つが際 どいというか……なんというか……正直心臓によくない。
それを差し引いたとしても、彼女から一方的にべたべた触られている事実だけでも十分なくらい緊張できるんだが……!!
「……さ、さぁな」
しかし、そんなことを肯定 するワケにもいかず私はただ答えを濁 した。
「ええっ……そこはハッキリしてくれませんと!!」
「分からん……」
リアのジトーっとした視線に耐えきれず、私は思わず顔を反らした。
本当に頼むから勘弁して欲しい……。
しばらく黙り込んで追求するような空気を出せていたリアだったが、ある程度経ったところで大きな溜息 をついた。
「分かりましたよー、じゃあそれでいいです。ご協力ありがとうございました」
どうやら諦めてくれたのか、そんな言葉とともに彼女は私の腕から手を離した。
「もういいのか……?」
まるで身体検査自体を終わらせるような口ぶりに聞こえたため、念の為に確認をする。
「はい、欲しい情報は大方 把握 出来たのでもう結構です。服も着ていただいて構いませんよ」
そう言い終えたところで突然、彼女は少し前にみたような名案でも思い付いたと言いたげな明るい表情で再び口を開く。
私は瞬時に嫌な予感を感じた。
「そうだ、今度こそ私がお召し物を着るお手伝いを……」
「いらん、下がっていてくれ……!!」
またしても得意げなニコニコ顔で着替えを手伝うと言い出した彼女の言葉を聞いた瞬間、一も二もなく断りをいれる。
「……分かりましたよ」
そうするとリアは不服そうな顔をしながらもすごすごと引き下がった。
まったく油断も隙もあったものじゃないな……というか何故不服そうなんだ!?
そんな彼女の様子を横目で見つつ、もし手出しされたら堪 ったものではないと私は慌てて服を着るのだった。
リアはまたローブを
「それではアルフォンス様、まず服をお脱ぎ下さいませ」
そう、まず服を脱ぐ……ん?
「だから服を脱いで頂きたいのですよ」
「き、君はいきなり何を言っているのだ!?」
一度目は聞き間違いかと思ったが、わざわざもう一度言ってきたぞ!?
「何って言われますと……他の方には行った身体検査がアルフォンス様だけまだなので、お受け頂こうと思いまして」
「身体検査……?」
「はい、そうです」
いつの間にか、そんなことをしていたのか……。
いや、でもそんな話聞いたような聞かないような……。
「そうは言っても嫌だと仰るのであれば
こちらが悩んでいるのを見かねたらしいリアが、そう付け加えてくれた。がそう口にするリアの表情はほんの少し悲しげというか残念そうな雰囲気を
な、なんだこの謎の罪悪感は……!?
決して
そして、もし断ればもっと悲しそうな顔をすることが予想できてしまい更に罪悪感が……くっ!!
「……分かった受けよう」
「そうですかー! ありがとうございます、そう言っていただけると大変助かります」
私が
可愛い……何ならさっきの悲しげな表情も含めて全部可愛い……!!
これを無意識にやっているのだから、恐ろしい子だ……。
そんなことを考えていると、こんどはリアのこんな声が聞こえてきた。
「そうだ、よろしければお手伝いしましょうか? 確か高貴なお方はお
「!?」
驚いて顔をを上げると、さも良い事を思い付いたとでも言いたげなリアの表情があった。そしてこちらの返事も聞かない内に、ニコニコした顔で手を差し出して来ているではないか。
「いい、いらん!! 脱ぐだけだからそんなもの必要ない……!!」
「そうですか……」
こちらが強い口調で断ると、リアは手とともに笑顔も引っ込めて
本当にこの子は何を考えているんだ……!! 何故その思い付きで名案だという顔ができる!?
これ以上余計なことを言い出されたら
「……脱いだぞ」
「はい、ありがとうございます」
リアはにっこり笑ってお礼を言った後に、真剣な目付きでまじまじとこちらを見つめてきた。
………………。
たぶん彼女は私には分からない魔力的なものを見ているのだとは理解しているが……なんというか、今までにない恥ずかしさを感じる。
「あっ、もし気になるようであれば目を閉じて頂いていても構いませんよー」
するとこちらの様子に気付いたらしいリアが、そんなことを言ってきた。
その言葉に少し悩んだ末に、私は目を閉じる。
それでもまだ見られていると思うと落ち着かないが、先程よりはだいぶマシだった。
「なるほど…………」
リアが小声で何やら呟いている。
気になることは気になるがまぁいいだろう……。
しかしいつまで掛かるのだろうか……。
「それでは今度はちょっと
「はっ?」
そんな声と共に腕に触れられる感覚があった。
「っ!?」
目を閉じているから実際の動きは分からないが、それはさすられているというか……
「そっか、そういう感じか……」
こちらが驚いているうちに何か分かったのか、リアは勝手に納得したような声を零している。
そして今度は何故か指先でトントンと軽く腕を叩き始めた。
な、謎過ぎる……。
いつまで続くのかと困り始めていた頃、リアのこんな声が聞こえてきた。
「それでは次は
えっ……心音……?
すぐに言葉が
驚いて反射的に目を開くと温かいそれはリアの頭だったようで、どうやらこちらの胸に押し当てられているようだった……。
「うわぁぁ!?」
私が驚いて身を引くと同時にちょうど彼女も頭を引いた。そして私が上げた叫び声にも動じることなくこんなことを言い出した。
「アルフォンス様、もしかして緊張していらっしゃいますか?」
「それより君は何をしてるんだ……!?」
リアは無駄に真剣な面持ちで問いかけてきたが、正直今の私にはそんなことに答えてる余裕などない。
「何故いきなり人の胸に頭を押し付けて来ているんだ!?」
「先程言ったとおり心音を聞こうとしたんですよ。流石に
「当たり前だ!! そんな不用意に触れられたり近付かれれば驚くに決まってるではないか!?」
「そういうものですかね……?」
「そういうものだ!!」
「しかしそう言われると困りましたね……もし心音は諦めるとしても、せめて正常な
「それは本当に必要なのか……?」
「もちろん必要ですよー! ところで普通の人と同じ部位で脈を測ることは可能でしょうかね?」
「そんなこと私が知るか……」
「それでは試してみましょう!!」
リアはそういうや
「だから不用意に軽々しく触るなと言っているだろうが!?」
「分かりました次からはそうするので、今はジッとしてて下さいねー」
「…………くっ」
グイグイ迫ってくる彼女の様子をみるに、たぶんここで何を言っても無駄だということだけは分かった。
仕方ない、今は一旦諦めるか……。
しかし上半身だけとはいえ服を着てない状態で、ずっと触れられているのやはり恥ずかしいな……一応毛皮を着ているといえば着ているのだがこれはどういう扱いなのだろうか、自分でも分からんぞ……。
「毛皮でちょっと測りづらいな……それにやっぱり脈が早い……そういうものなのかな?」
リアが小声で何か言ってるが、小さすぎて内容は
なんだ何を言ってるんだ気になる……。
真剣な眼差しで腕を見ていたリアが顔を上げて、真剣な表情のまま彼女はこう問いかけてきた。
「もしかしてまだ何か緊張などされておりますか?」
いや、緊張しているかと聞かれれば緊張しているに決まってる!!
本人はまったく自覚していないが、その行動一つ一つが
それを差し引いたとしても、彼女から一方的にべたべた触られている事実だけでも十分なくらい緊張できるんだが……!!
「……さ、さぁな」
しかし、そんなことを
「ええっ……そこはハッキリしてくれませんと!!」
「分からん……」
リアのジトーっとした視線に耐えきれず、私は思わず顔を反らした。
本当に頼むから勘弁して欲しい……。
しばらく黙り込んで追求するような空気を出せていたリアだったが、ある程度経ったところで大きな
「分かりましたよー、じゃあそれでいいです。ご協力ありがとうございました」
どうやら諦めてくれたのか、そんな言葉とともに彼女は私の腕から手を離した。
「もういいのか……?」
まるで身体検査自体を終わらせるような口ぶりに聞こえたため、念の為に確認をする。
「はい、欲しい情報は
そう言い終えたところで突然、彼女は少し前にみたような名案でも思い付いたと言いたげな明るい表情で再び口を開く。
私は瞬時に嫌な予感を感じた。
「そうだ、今度こそ私がお召し物を着るお手伝いを……」
「いらん、下がっていてくれ……!!」
またしても得意げなニコニコ顔で着替えを手伝うと言い出した彼女の言葉を聞いた瞬間、一も二もなく断りをいれる。
「……分かりましたよ」
そうするとリアは不服そうな顔をしながらもすごすごと引き下がった。
まったく油断も隙もあったものじゃないな……というか何故不服そうなんだ!?
そんな彼女の様子を横目で見つつ、もし手出しされたら