第81話  大熊先生  2

文字数 2,708文字

 ※

 

 先生が受け持った生徒に悪いヤツなんていない。

 そんなの! 全然納得できないよ!


 大熊先生は赤木達に「何故いじめたのか」そう質問した。


 だけど全員何も言わず、頭を下げるだけだった。


 当然だと思った。言える訳がない。
 僕はお前達に何も悪いことをした覚えがないんだから。



 誰がどう見ても、悪いのは赤木達なんだ! クラスのみんなもきっとそう思ってる!


 


黒澤にムカついたのか?

 その質問に赤木と目が合う。

 すると赤木は「そうだよ!」言い放った。



 そんなの理由にならない。ムカついたからって人をいじめていい訳がない。

何にムカついた?

【赤木】

な、生意気だから……

どう生意気なんだ?

【赤木】

こいつ。転校生のくせに……キモいし、喋らないし……女ばっかりと喋ってるし!

 こんなの。誰も納得できないはずだ。

 喋るだけ無駄だ。逆に赤木の方が惨めじゃないか!


 僕はそう思ってたけど、大熊先生は「なるほど」と言って赤木への質問をやめた。

転校生だから……キモいし、喋らない。これについて話そうか。黒澤。別にお前が悪いんじゃないぞ
 先に断ってくれたので安心したけども、先生は話を続ける。

こういう外面だけの理由で、その人を嫌いになると言うのは、赤木だけに限らない。


この先の人生でもみんな……体験する事になるだろう。

それは黒澤に限らず、誰でも起こりうること。人間なら誰しも避けて通れない道なんだ

連日ニュースでも取り上げられてる事件があるだろう?

ただ、目があっただけで、その人間を殴る蹴るの暴行や、些細なことで人の命を奪ったりする。

理由は? と聞かれれば……それはとても単純で、理解しがたいものばかりなんだ。

黒澤は赤木の理由を心にとどめておいて欲しい。

どんな些細な事だと思っても、赤木のいう「キモい」「女の子とばかり喋る」とか……

それが原因でお前はいじめられた。それは事実なのだから。


無理に直さなくてもいい。納得できないなら、そのままでもいい。

だが、こういう事があった。それだけは忘れるな

赤木。お前はもっと具体的に教えてやれ。お前が怒るほど腹が立ったんだろう?

魚住、名谷。お前達も黒澤や先生達に分かるように説明してみろ。

 すると赤木は泣き出すと、自分の机に涙がこぼれた。


 ここまで大熊先生が怒るのは初めてだった。

 そんなに年寄りじゃないのに、ヒゲが濃いくて、見た感じは怖そうだけど、いつも優しい先生なんだけど……

 

【赤木】

ごめんなさい……俺、そんなつもりで……ただ、ただ……腹が立っただけで……

【名谷】

僕もです。そんな理由なんて……なかった

【魚住】

黒澤……ごめん。

 赤木達三人が一斉に謝り出したんだ。みんなボロボロ涙が出てた。

 

 ごめんなさい。そう謝ると、大熊先生は「分かった」と大きな声で返事する。

もういい。黒澤はもう怒ってないだろう?
……うん。怒ってないです
よし。それでいい

 そう言って熊本先生はニコって笑ってくれた。


 

良かったな赤木。魚住。名谷。黒澤が優しい奴で……
 僕はただ、もういじめられないのなら、それでいいんだ。

三人とも良く言ったぞ。さっきまでケンカして腹がたった奴に謝罪する。とても勇気のいることだ。


恥ずかしがる事はない。情けなくもない! むしろ素晴らしいことなんだぞ。

お前達の謝罪は黒澤に届き、問題はこれで解決したんだ

よぉ~し! これで一件落着だな!
 バシっと机を叩く熊本先生。
 だけど、僕はちょっと待ってと手を上げた。
もう一つお願いがあります。ろ、六角君もいじめられてる
 するとクラスのみんなが一斉に六角君を見ると、凄く驚いちゃって、手で顔を隠してしまう。
いいぞ黒澤! もうお前は……昨日までのお前じゃない!
 ちょっと! そ、そんなに褒めなくていいよ。
 ただ六角君も僕と同じで、赤木達にいじめられてる。
六角。お前もそうなのか?
 先生が六角君の目の前に来たけど、下を向いたままガクガク震えていた。
先生待って。ろ、六角君も僕と一緒。きっと人前で、しゃ、喋れないんだ。き、聞かないであげてほしい
 すると先生は「よし! わかった!」と気合を入れた返事をすると、教壇に戻りながら。

六角。先生に喋れるようになったら教えてくれ。それはクラスの皆でもいいし、黒澤だけに喋っても構わん。まずは喋る事。人に伝えることが大事なんだ。お前が喋らない限りその気持ちは誰にも届かない。お前も後一歩黒澤のように勇気を出すんだ。


大丈夫。このクラスの生徒は絶対にお前を助けてくれる!

先生。今はそっとしてあげてほしい。ごめん……六角くん。急にこんな事を言って……ほんとうにごめん
黒澤。一気にレベルアップしたな。今度はお前のその優しさを……クラスのみんなに教えてやってくれ
 レベルアップって言われると凄く嬉しかった。
 
 優しさ。それは……
 お姉ちゃんからいっぱい教えてもらってるんだ。 
みんな。黒澤のようにどんどん本音を出せ。何でもいい。つらい事、悲しい事、家族の事でもいいんだ。その気持ちをクラスのみんなで共有する事で、絆はどんどん強くなる

俺はそういうクラスを目指している。お前達が大人になった時、小学六年生の時は楽しかったと。そう思えるクラスにしたい!

 大熊先生は真面目に話している。なんだか今までの先生とは違う。そんな感じがした。


 ふと隣に座る赤木と目が合うと、まだ目が赤かった。
 こんな状態を見られるのは恥ずかしいだろうと思った僕は、前に向き直った

。その時――


「黒澤……ごめん」って声が聞こえた。
もういいよ。もう……大丈夫だから

 続いて魚住や名谷も謝ってくると、大熊先生は「全員拍手」と言った瞬間、クラスのみんなが拍手してくれた。


 と、同時に赤木と僕の頭を持った先生は、頭同士を無理矢理引っ付けるんだ。

ここだけの秘密を教えてやる。お前らみたいにケンカするほど激しくぶつかった奴はな……

とんでもなく親友になる。先生が言うんだから間違いない

 ええ~? そ、それは、どうなのかな?
 ちょと……先生といえども納得できないかも。

まだ五月だ。この大熊学級は最高のクラスになる! その為には誰一人欠けてはいけない。ここにいる全員で盛り上げるぞ!


 今までこんな先生はいなかった。


 ここでようやく、聖奈お姉ちゃんが良い先生だと言ったのが分かった気がした。

 僕はただ。いじめられないように、赤木と決着をつけようとしただけなのに、先生はもっと違うことを考えていたんだ。



 そして僕はもう……学校でいじめられる事は無くなるだろう。


 その日の僕はお姉ちゃんに早く伝えたくて……早く授業が終わらないかと心待ちにしていた。


 お姉ちゃんに早く……伝えたい。
 もう僕は、一人でも大丈夫だって!

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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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