中編・調査と推理

文字数 932文字

生徒指導室から、ガンガン響き渡る怒声と、すすり泣く声。
例の事件の取り調べを担当しているのは
学年主任の夢山先生。
かつてお礼参りに来た生徒をボッコボコにして全員病院送りにした事がある。

「あなた以外に誰がいるの!」

あーあ、可哀想に。
あんな調子で責められたら冤罪でも認めてしまうだろうな。早く何とかしないと。

ミリちゃんに協力を頼んで、 庭に出る。
先生が居なくなったタイミングで、窓をノック。
泣き腫らした目で、噂の男子は開けた。

「だれ、ですか。どうしてそんな所に」

「君、やってないんだろ!?」

「えっ・・・」

「犯人なら証拠の財布を自分の鞄にしまったりしないし、アリバイも用意するはずだ」

「はい、やってません・・・」

「ボクは探偵だ。話を聞かせて!」

彼の話をまとめると
◯職員室に行ったのは担任の榊先生に呼ばれたから。
◯直前は体育の時間だった。

体育ならクラスメイト以外の人物が鞄に入れる事は可能だ。
カツカツと足音が響く。
まずい、時間が無い。まだ大切なことが分からない。

「何か見なかった?
不自然な物とか人とか、なんでもいい!」

「・・・そう言えば昨日、三階のトイレで生徒会長さんを見ました」

「それは確か?」

「はい。入学式で見ただけですが、綺麗な人なので印象に残っています」

繋がった!
後は証拠を見つけるだけだ。

「ご協力ありがとう。一つだけ言っておくよ。
君はやっていないんだ。
どんなに脅されても負けないで欲しい。

ボクが必ず助けるから」

話に夢中になっていたら、ドアが開いてしまった。夢山先生と目が合う。

「何をしているのです!?」

「えーと。窓から好みのタイプが見えたから、ちょっとナンパを」

後で職員室に来なさいと叱られた。
むしろ都合がいい。
無言電話係をやってくれたミリちゃんに感謝の言葉を告げてから、もう一つお願いする。

「ボクの推理が間違っていた場合、君も怒られちゃうかもしれないんだけど」

「構いませんわ。わたくしもう共犯です」

コスモスのような可憐な笑顔に、気持ちがふわりと和らぐ。
事件が解決したらパンケーキでも奢ろう。

「よし、犯人を捕まえよう!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み