03.日記のきれはし

文字数 3,086文字

[山ノ下 かほり]

アキちゃん、この日記さあ…………



 かほりは「ねえねえ」とアキを呼びます。



[山ノ下 かほり]

この君入ってさ、あの子かな?

[須藤 アキ]

そうある名前ではないしね

ただこれ、本当にやったことかなあ

[山ノ下 かほり]

ここまでのことしなくない?

[山ノ下 かほり]

十年前? 15歳、中学三年生の頃?

[須藤 アキ]

今でこそあの赤い髪だけど当時はそうじゃなかったんでしょ

なんせ学生デビューしたって言ってるくらいだから

[須藤 アキ]

一方的にどうこう言ってもアレだし、一応本人に覚えがあるか確認したほうが良くない?

覚えてなくてやってるって可能性もあるけど

[山ノ下 かほり]

そうね

[木坂 陣矢]

終わった?

[君入 宗太郎]

どうしたどうした

何か見付けたの?

[山ノ下 かほり]

これ読んで



 かほりは日記を木坂と君入に見せました。



[君入 宗太郎]

ほう~~~

[木坂 陣矢]

君入、やったの?

[君入 宗太郎]

やってないやってない

全然覚えてもない

[山ノ下 かほり]

覚えてないだけじゃないの?

[君入 宗太郎]

エピソードとしては俺が理想かもしれないけど、やってない

[木坂 陣矢]

言いそうなセリフだなとは思うけど

[君入 宗太郎]

言いそうだけど、全然記憶にない

これ中学生でしょ? 中学のとき地味だったし

[山ノ下 かほり]

地味だといってやらないとは限らないんだけどな~

[須藤 アキ]

何の保証にもなりはしないが、とりあえず覚えにはないということで

山ノ下 かほり【目星】⇒ 成功



 かほりは本棚をよく見てみましたが、気になる本はありませんでした。



[山ノ下 かほり]

本棚に日記本体は無さそう

[須藤 アキ]

部屋がいっぱいあるし、他の部屋にあるかもしれないね

[君入 宗太郎]

(何か知ってる本ないかな~)

君入 宗太郎【図書館】⇒ 失敗



 本棚には帝王学などの分野の本がたくさんありましたが、君入も日記を見付けることはできませんでした。



[君入 宗太郎]

全然興味ねーな、この本棚

帝王学って、ここの人たち何なんだろうな



 かほりは大きな金庫に近付き、開けようとしてみましたが鍵がかかっていました。



[山ノ下 かほり]

金庫、開かんのう

金庫を力尽くで開けるのは無理だしなあ

[須藤 アキ]

ということは引き出しのカギと金庫のカギ

須藤 アキ【目星】⇒ 成功



 アキは金庫に怪しいところがないか調べてみました。

 無理矢理こじ開けようとした痕跡はなく、外側には傷もなく普通に使われていた金庫のようです。



[須藤 アキ]

強盗が入ったというかんじでもないね

[須藤 アキ]

他の部屋を調べてみようか

この部屋にはカギは無さそうだし



 君入は日記のページの裏を見てみましたが真っ白でした。とりあえずそれを持っていくことにしました。



[君入 宗太郎]

何も書いてねーな

[山ノ下 かほり]

次どこの部屋行く?

[君入 宗太郎]

出れそうなところがいいから部屋3か部屋5とかじゃない?

[須藤 アキ]

ああ、そうね

手分けしますか

[山ノ下 かほり]

分かれますか

二人二人で行くか

[君入 宗太郎]

4人で行こうよ4人で

[山ノ下 かほり]

大丈夫だよ

何かあったら大声で呼んで

[君入 宗太郎]

何かあるでしょっ、もう既に何かあるし

死体もあるしさ、あんま分かれたくないやん

俺弱いし! 俺弱いし!

[山ノ下 かほり]

多数決で決めよう

[君入 宗太郎]

苦い思い出が蘇る

[山ノ下 かほり]

じゃ、4人一組で行動したほうがいいと思う人ー

[君入 宗太郎]

はぁーい

[木坂 陣矢]

……………………。

[須藤 アキ]

……………………。

[君入 宗太郎]

みんなちょっと聞いてるっ?

[山ノ下 かほり]

二人一組で分かれたほうがいいと思う人ー

[木坂 陣矢]

はい

[須藤 アキ]

はい

[山ノ下 かほり]

じゃあ二人一組で分かれることになりました

[須藤 アキ]

あんまり長居したくないから

[君入 宗太郎]

うーん…………分かった

納得してないw

[君入 宗太郎]

じゃあ強い人と組みたい

警察官と組みたいっ

[山ノ下 かほり]

アキちゃんは嫌じゃない? 君入くんと一緒で嫌じゃない?

[須藤 アキ]

いえ、いいですよ

[山ノ下 かほり]

大人だなあ

[木坂 陣矢]

いざとなったら逮捕していいから

[山ノ下 かほり]

じゃあわたし木坂くんと組むよ

[須藤 アキ]

一部屋調べたら戻ってきて確認するってかんじで進めていこうか

[山ノ下 かほり]

あんま離れると恐いしね

[須藤 アキ]

どこの部屋を見たい?

[君入 宗太郎]

部屋3か部屋5がいい

[山ノ下 かほり]

木坂くん、どこいく?

[木坂 陣矢]

じゃあ部屋5

[須藤 アキ]

じゃあこっちは部屋3に行きましょうか

[君入 宗太郎]

(館を出てもこの3人と仲良くする自信がない)









 部屋3のドアはごく一般的なものでカギもかかっていません。

 アキはドアを開けました。


 部屋はかなり広い豪華なキッチンです。

 大きなオーブンと大きな冷蔵庫があります。広い調理台やガスコンロ、流し台などがあります。調理台には引き出しがあります。



[君入 宗太郎]

でっかいキッチン

[須藤 アキ]

所謂、厨房だね

[須藤 アキ]

食べ物あるかな



 アキはキッチンの中に入ってゆき、冷蔵庫の前に行きました。



須藤さん、【アイデア】をどうぞ
須藤 アキ【アイデア】⇒ 成功

成功ですね

【聞き耳】ができます

須藤 アキ【聞き耳】⇒ 成功



 冷蔵庫の中から何か人ではない生き物の呼吸音が聞こえてきました。



[須藤 アキ]

!?

そんな呼吸音を聞いてしまった須藤さんは【SAN値チェック】です

成功で 0、失敗で 1 です

須藤 アキ【SAN値チェック】⇒ 成功

[須藤 アキ]

中に何かいるから静かにして



 アキにそう言われ、君入はアキの後ろに隠れました。



[須藤 アキ]

(弱いなキミは)

[君入 宗太郎]

ヤバくない? 何かいるってヤバくない?

し、静かに探し回ろう

[須藤 アキ]

君入くんはドアを開けて待機しててもらっていい?

最悪の場合、ドア閉めて逃げよう

[君入 宗太郎]

分かった!



 君入はキッチン入り口のドアを押さえに戻りました。


 アキは調理台の引き出しを開けました。

 中には様々な調理器具が入っており、使いやすそうな包丁に目が留まりました。包丁は三本あります。



[君入 宗太郎]

何かあったー?

持ってきて持ってきて

包丁は【こぶし】で振れます

ダメージ【1d6】です



 アキは包丁を一本取り、残りの二本を君入に渡しました。



[須藤 アキ]

オーブンかあ



 アキはオーブンをじっくり見てみます。オーブンは最新式のもので、火が入っていないので中身はよく見えません。



[君入 宗太郎]

何かいる?

[須藤 アキ]

今のところは何も

[君入 宗太郎]

開けちゃうのっ?

[須藤 アキ]

開けるさ



 オーブンのドアを開けてみても中は暗く、照らせるものを持っていないので何も見えませんでした。



 アキが調理台の上を隅々まで見てみると、先程書斎で見付けたような日記帳の1ページを見付けました。それは半分に破れているようです。






[君入 宗太郎]

アキちゃんどうしたの?

何か見付けた?



 アキは君入に半分に破れたページを渡しました。



[須藤 アキ]

自分がされるとショックが大きいっていうのが個人的にすごい気になって…………

自分がされるとってことは、他の人がされてたのを見てたのかなと思わないでもない

[君入 宗太郎]

なるほど

[須藤 アキ]

とりあえず二人が調べ終わるのを待とうか

[君入 宗太郎]

うん、そうしよう

[須藤 アキ]

ロビーに戻りましょう

[君入 宗太郎]

いやあ、アキちゃんは頼りになるなあ

警察官は違うなあ☆

[須藤 アキ]

イヤイヤ、がんばろう?



 君入とアキの二人はキッチンから出てゆきました。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

木坂 陣矢(きさか じんや)

薬局に勤めながら薬学の勉強中。

口数少ないが唯一君入を覚えていてくれた友達甲斐のあるナイスガイ。

君入 宗太郎(きみいり そうたろう)

非力な YouTuber・イリリンとして活動中。

大学で❝デビュー❞したため、中学時代の同級生にはあまり覚えられていない。

須藤 アキ(すどう あき)

婦警。

何事にも冷静に対処できるが運があまりよくない。

君入によく頼られるので、自分でできることは自力でがんばってほしいと願っている。

山ノ下 かほり(やまのした かおり)

農家に嫁ぎ、農作業を手伝いながら収穫物を個人のネットショップで販売したりしている。

君入をまったく覚えていなかった。

しゃりんさん[キーパー]

初心者ぞろいのプレイヤーたちを真理へと導こうとする天の声。

ダイス

運命を左右する無慈悲な無機物。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色