七
文字数 804文字
ミライの両親は、ミライがまだ幼い頃に離婚していた。高校を卒業するまで徳山の祖母と一緒に暮らした。父も母もミライを祖母に預けたまま、どこかへ行ってしまった。それ以来、家庭というものを信じられなくなった。一度しかない人生を他人に委ねて暮らすより、自分の魂を解放できる仕事に就いて、自分を捨てた人たちを見返してやりたかった。高校生の頃に一学年先輩に恋し、初めて体を許したが、その男も卒業と同時に去っていった。だから、ミライの意識の根底には、男はいつか自分を捨てるという考えが染み付いている。言い寄ってくる男はこれまでにもたくさんいた。けれども、付き合うことは無かった。上京し、学校でテツヤと出会い、心と体を許したことは自分でも意外だった。
ベッドに横たわりながら、自分の幼い頃の姿を思い出した。同時にテツヤの幼少時代を知りたいとも思った。
「あなたの子供の頃ってどんなだったの?」
「子供の頃?」
ミライの大きな瞳が潤んでいる。
「一応、野球少年だった。それから絵も得意だった」
「凄いのね、私なんて何一つ得意なことなんて無かったわ」
「でもね、結局はどちらも途中で挫折してしまったんだ。いつも熱中して、さぁ、これからって頃になると、急に情熱が冷めて行くというか、野球やってたってプロに行けるわけじゃないし、絵を描いたって画家で食って行けるわけでもない、そんな風に思い始めると大抵が終わっちゃう。辞めて一時勉強もしたけど、大学受験の手前で飽きちゃった。あの頃から人生の選択肢がどんどん減って行った」
「今の私も、そう。この先、どうなっちゃうのかなって時々眠れなくなるわ。でも、今の私にはテツヤくんがいる」
何も答えられなかった。
「私ね、これまで誰にも話したこと無かったけど、両親が幼い頃に離婚して、もう、帰る場所なんて無いの」
「つらかったね」
「人生って、諦めることだもの」
テツヤの中で、何かが壊れた。
「心臓の音が聞こえる」
ベッドに横たわりながら、自分の幼い頃の姿を思い出した。同時にテツヤの幼少時代を知りたいとも思った。
「あなたの子供の頃ってどんなだったの?」
「子供の頃?」
ミライの大きな瞳が潤んでいる。
「一応、野球少年だった。それから絵も得意だった」
「凄いのね、私なんて何一つ得意なことなんて無かったわ」
「でもね、結局はどちらも途中で挫折してしまったんだ。いつも熱中して、さぁ、これからって頃になると、急に情熱が冷めて行くというか、野球やってたってプロに行けるわけじゃないし、絵を描いたって画家で食って行けるわけでもない、そんな風に思い始めると大抵が終わっちゃう。辞めて一時勉強もしたけど、大学受験の手前で飽きちゃった。あの頃から人生の選択肢がどんどん減って行った」
「今の私も、そう。この先、どうなっちゃうのかなって時々眠れなくなるわ。でも、今の私にはテツヤくんがいる」
何も答えられなかった。
「私ね、これまで誰にも話したこと無かったけど、両親が幼い頃に離婚して、もう、帰る場所なんて無いの」
「つらかったね」
「人生って、諦めることだもの」
テツヤの中で、何かが壊れた。
「心臓の音が聞こえる」