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文字数 638文字
今にも降り出しそうな雨だった。
白く、どこまでも霧っぽく、澄み渡るほどに雲がかっていて。
私は、空を見上げる。彼と同じように。
同じ空を見ることはない、そんな風に考えていた時期もあったかしら。
たとえば少女が大人になるまでに、見上げた空が同じ景色にはならないように。
同じに見えて、違う空。
同じに見えて、違う心。
同じに見えて、違える想い。
同じに見えて、違えた幻想。
同じに見えて、違う心。
同じに見えて、違える想い。
同じに見えて、違えた幻想。
私だけがそれを繰り返し、なぞる。
世界で一番ズルい存在。
もう一度、世界はあるべき方向へと収束する。そこに彼の望むものはない。
ここにある結末は数あれど、共通しているのは不幸だけ。
その身を破壊神のために捧げた、彼の悲しい末路。
少年少女は永遠の幸せを得る。その影に隠された墓標など知らずに。
私はもう一つの物語を映し出す鏡だ。
逆さ写しの虚像は破り捨てて、鏡の向こうにある忘れられた世界を焼き付けろ。
降りだす雨に合わせて何度でも、声枯らして歌い、その身粉になるまで舞い踊れ。
――アン・ドゥ・トロワ。
――シャル・ウィ・ダンス?
――シャル・ウィ・ダンス?
再び、物語は動き始める――。
天龍舞に導かれし少年少女たちの運命が廻りはじめた。
その先に待つのは絶対的な不幸だとも知らずに。
東方天龍舞、それは喜劇か悲劇か――。