第10章「ぎゅぎゅっと詰めたり、ぴょーんと跳んだり」

文字数 2,262文字

いよいよ最終章です。
この章で学ぶことは……
ダルダルダルダルダルダルダルダル
「書かない」
という方法です。
???
何も中島敦の『名人伝』みたいな謎かけじゃありません。
弓の極意は、弓をも忘れることじゃ!みたいな。
そうではなくて、
 物語に何を入れ、何を入れないか、という話です。
 細部(ディテール)の書きかたの話です。
 どこに焦点(フォーカス)を置くかという話です。文の焦点、段落の焦点、作品全体の焦点。
 私はこれを、「クラウディング(詰めること)とリーピング(跳ぶこと)」と呼んでいます。この言いかたは作業を具体的な体感で想像させてくれるから、好きなんです。

(『ル=グウィンの小説教室』第10章より。強調はヒツジによります)

mimura_akira

「クラウディング crowding」=「クラウド crowd する」とは、例えば座席などにぎゅっと詰めて座る、あの感じです。
言い換えれば、余白を残さないことです。

「リーピング leaping」=「リープ leap する」とは、脚の力でぴょんと跳ぶことです(翼で「飛ぶ fly」ではなく)。
言い換えれば、余白を残すことです。

言うは易く、行うは難し、ですよね!
私も一度やらかしちゃいました。連載中の小説で、いったん公開しちゃったエピソードを4話まとめて削除しました。ああー誰も読んでないといいな(恥)。
基本、頭の中で自分の愛するキャラクターたちがあれやこれやしている妄想だから、思いついたら全部書きたくなっちゃうんですよねー。
でもそれじゃ、ゲームのプレイを実況放送するのと変わらないですよね。
あ、いや、もちろんそれでもぜんぜんいいので、こういうサイトはそのためにあるので、楽しみのために。でも『ル=グウィンの小説教室』はその上をめざす人たちのために書かれた本なので、「小説がうまくなりたい」と思っている人たちのために。で私も「1ミリでもうまくなりたい」と毎日思っているので「本気でうまくなりたかったらプレイ実況じゃだめじゃん私」と自分にツッコんで反省していたところなんです。

小声かつ早口で言ってみました。
「クラウディング」=ぎゅぎゅっと詰めるほうは、まだわかります。
スカスカのところを充実させていく感じですよね。
「楽しかった」だけじゃなくて、どう楽しかったのか。
「悲しかった」だけじゃなくて、どう悲しかったのか。
生き生きと、的確に、具体的に、正確に、緻密(ちみつ)に、濃厚に。
(vivid, exact, concrete, accurate, dense, rich)
(同書同章)

mimura_akira

難易度がより高いのは「リーピング」=跳び越えるほうですね。
寅さんに「それを言っちゃあおしめえよ!」とツッコまれないように、「おしめえ」の部分を書かずにおく、というね。
↑微妙にわかりにくい説明かもw
 跳び越えるとは、書かないでおくということです。
 そして、書かないでおくことのほうが、書いておくことより、ずっとずっと大きいものです。
 言葉のまわりには余白が、声のまわりには静寂がなければなりません。なんでもかんでも列挙するのが描写ではありません。
 書かれるのにふさわしいのは、関係のある事柄だけです。

(同書同章)

mimura_akira

これ紙に大きく書いて壁に貼っておきたい……!
 順序としておすすめなのは、第一稿は思いっきりクラウドする(ぎゅぎゅっと詰める)。
 もう全部書いちゃってください。だらだらもべらべらもオーケー、なんでもかんでも入れちゃってください。
 それから推敲に入ります。たんなる水増しや重複、ストーリーの流れを遅らせたり邪魔したりしている部分を見つけて、切る。
 ストーリーにとって意味のある部分、何かを明らかにしている部分を見さだめ、そこを残して切ってはつなぎ直し、最後に残った部分イコールすべて意味ある部分、になるまでくりかえします。
 リープするのです。大胆に。

(同書同章)

mimura_akira

御意!
ということで、今回のエクササイズはこんなのです。
〈練習問題10〉つらい仕事

あなたが書いた課題の中で、少し長め(800字以上)のものを1つ選び、
半分に切ってください。

該当するものがなかったら、
あなたがいままでに書いたすべての作品の中で800~2,000字のものを1つ選び、
半分に切ってください。
つらい仕事ですがやってみてください。

お話の意味をそこなわず、印象も同じくらい生き生きとしたままで、
字数を半分に減らしてください。

mimura_akira

!!!
無理ムリそんなのぜったい無理!
と思ったんですよね……
ところが、
やってみたら……できました!
半分どころか三分の一になっちゃいました。
このダイエット超~快感。
ということで、この後にダイエットの「ビフォー」と「アフター」を載せてたんですけど、
(「白い嘘」という短編)
思うところあって、削除しました。
ミミュラはどうも、「削りすぎる」くせがあるみたいなんですね。
自分ではビフォー版とアフター版だと、アフターのほうが良くなったつもりで載せてたんですけど、
「ビフォーも良かったよ?」と複数の人に言われて、考えこんじゃって。
なので、詰めたり跳んだりの例は、次のページ「『焦点と軌道』」のコーナーに書きました。
小分けにして具体的に書いたので、ただ並べて比べるよりわかりやすいと思います。
ご参考にしていただけたら嬉しいです。

念のため、

この章で言う「クラウド」は、最近よく聞く、データを置いておく「クラウドcloud」とは違う語です。

「クラウドcrowd」です。「群衆」という意味もあります。つまり人がぎゅぎゅっとたくさんいる状態。

mimura_akira

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
※これは制限参加コラボです。参加ユーザーが制限されます。作品主が指定した方しか参加できません。参加希望の場合は、作品主の方にご相談ください。

※参加ユーザーの方が書き込むにはログインが必要です。ログイン後にセリフを投稿できます。
※本コラボは完結済みです。

登場人物紹介

ミミュラ


このコラボノベルの管理人。ときどきアマビエに変身する。

アーシュラ・K・ル=グウィンをこよなく慕い、勝手に師と仰いでいる。

ヒツジのくせに眠るのが下手。へんな時間に起きてしまったり寝てしまったりする。

犬派か猫派かでいったら、犬派。(←ヒツジだけにお犬さま方にはつねづねお世話になってます(^^ゞ)

たい焼きは頭から、チョココロネは太いほうから食べる派。

ミニャノ

管理人に「眠り下手仲間」のよしみで誘われ、このコラボに参加することになった紀州犬。と言っても紀州には何のゆかりもなく、出身は相州鎌倉。現在、台湾台北に生息中。

「鳩サブレー」は頭からでも尾からでもなく、袋の状態のまま、指でぶちぶち潰してから食べる派。

日本語と中国語の間をふらふら往き来する人生ボケ担当大臣(自称)。ときどき別形態になるんだって。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色