「お前の幼女で天を突け!」
文字数 2,151文字
「そ、それじゃ、不束者ですがよろしくお願いします、セキカさん」
「そうかしこまるじゃあないっ! セキカって呼び捨てにしてくれ、ナナ! それから、そっちの子は……」
「れ、レユです」
「そうか、レユかっ! お前可愛いなあっ! ちょっと私にもだっこさせてくれよっ!」
「え? ああ、いいですけど」
セキカさんは手際よく、レユさんを自分の胸に抱いた。
セキカさん――意外と胸、あるじゃん。軍服の上からでも分かるくらいだから相当だ。土下座したら揉ませてくれるだろうか。
「そうか……妹か……」
ふとセキカさんが悲しげな表情を浮かべる。
何か妹に思い入れでもあるのだろうか。さてはシスコン?
ちなみにロリコンとシスコンは全然違うからな。ベトコンとファミコンくらい違う。
ま、その違いはおいおい説明するとして。
「すまんな、ナナ。返す」
「あ、ああ、はい」
セキカさんがぼくにレユさんを手渡す。抵抗なくぼくの腕の中に納まるレユさん。
っていうかこの人はもう少し人を警戒した方がいいと思う。このままじゃ悪い大人に掴まって過激イメージビデオにでも出演させられそうだ。
そんな大人、絶対にぼくは許さない。表向きは。
「ここ、前時代の遺跡みたいだなっ。もと来た道を戻って魔王軍に見つかっちゃ大変だ。奥の方に出口があるかもしれないし、先へ進んでみるぞっ!」
セキカさんはそう言うと、遺跡の更に深部へと歩き出した。
そこでふと、ぼくはセキカさんの声に違和感を抱いた。
「どうかしましたか、ナナさん?」
レユさんがぼくを見上げる。
「あの、何か変なんですよ。セキカさんの喋り方」
「確かに。「っ」が多いような気がします!」
「それはキャラ付けなんであんまり気にしないでください。ぼくが言いたいのはそこじゃなくて、セキカさんの発音と口の動きが合っていないような気がするってことなんです」
そうなのだ。
言葉とか言いたいことは伝わって来るのに、面と向かって話していると変な感じがする。
そもそも異世界人とコミュニケーションが取れてること自体、おかしなことなんだけど。
「ああ、それなら簡単な事ですよ、ナナさん」
「え?」
「その力こそ、私の父があなたに与えた能力だからです」
「なるほど、わからん!」
「ですから、あなたはチート能力によってどんな言葉でも理解することができるようになったのです。言葉を理解するというよりも、相手の意思を理解すると言った方が正しいのですが、とにかく便利でしょう? いい能力だ、馬力が違いますよ」
「わけがわからないよ……要するに、テレパシー的な能力ってことですか?」
「その通りです。この能力の素晴らしいところは意思の疎通が一方的でなく双方向に行われる点で……」
「いや、もう説明はいいです。本当にありがとうございました」
これ以上説明パートが長引くとストーリーがどんどん進まなくなる。
気付けばセキカさんはぼくらをおいてどんどん先へ進んでいた。
急がなきゃおいて行かれる。
「セキカさん、待ってくださいよ!」
と、ぼくが声を上げた瞬間だった。
『そこにいるんだろ、反乱軍!』
がらがらがらっ!
轟音と土煙を上げながら遺跡へ突っ込んできたのは、あの鋼鉄の巨人だった。
それも一機じゃない。後ろに二機ほどの仲間を連れている。
「ナナ、走れ!」
「は、はい!」
セキカさんの声に弾かれるようにして、ぼくは再び走った。
「走るのはもううんざりですーっ!」
レユさんが悲鳴を上げるけど、お前、走ってないだろ。
なんて心の中でツッコミを入れながら、セキカさんの待つ通路口へ飛び込む。
中は暗く、そして狭かった。これなら敵のロボットも入っては来れないだろう。
「怪我はないか、ナナっ!?」
ぼくの後ろから、セキカさんが這入って来る。
「大丈夫です。この通路、どこまで続いてるんですか?」
「行ってみなくちゃわからないんだっ!」
そのどこまで続いているか分からない通路を、ぼくらは這うようにして進んだ。
レユさんは自分で歩く気がさらさらないようで、ぼくの胴体にしがみついて離れない。
まるで親に寄生するニートのようにな(自虐)!
……なんか自分で言ってて悲しくなってきたなあ。
細長い通路を抜けると、広い空間にでた。
「ここは……?」
計算されたように四角い、ブロックをくみ上げて作ったようなだだっ広い空間だ。
天井はもうぼろぼろになっていて無いに等しく、その向こうには青空が広がっていた。
「ナナさん、あれ見てください!」
レユさんがぼくの襟を引っ張る。
「ちょっと、引っ張らないでくださいよ」
「それより、あれです!」
「あれ?」
レユさんの指さす方を見たぼくは、一瞬言葉を失った。
そこにあったのは、先ほどまでぼくらを追って来ていたあのロボットと同じような人型のマシンだった。広い空間の壁際に、膝立ちの姿勢で佇んでいる。
だけど、動く気配はない。
きっと長い間放置されていたのだろう、装甲のあちこちが錆びいてくたびれた様子のマシンは、どこか寂し気な雰囲気を漂わせていた。
「そうかしこまるじゃあないっ! セキカって呼び捨てにしてくれ、ナナ! それから、そっちの子は……」
「れ、レユです」
「そうか、レユかっ! お前可愛いなあっ! ちょっと私にもだっこさせてくれよっ!」
「え? ああ、いいですけど」
セキカさんは手際よく、レユさんを自分の胸に抱いた。
セキカさん――意外と胸、あるじゃん。軍服の上からでも分かるくらいだから相当だ。土下座したら揉ませてくれるだろうか。
「そうか……妹か……」
ふとセキカさんが悲しげな表情を浮かべる。
何か妹に思い入れでもあるのだろうか。さてはシスコン?
ちなみにロリコンとシスコンは全然違うからな。ベトコンとファミコンくらい違う。
ま、その違いはおいおい説明するとして。
「すまんな、ナナ。返す」
「あ、ああ、はい」
セキカさんがぼくにレユさんを手渡す。抵抗なくぼくの腕の中に納まるレユさん。
っていうかこの人はもう少し人を警戒した方がいいと思う。このままじゃ悪い大人に掴まって過激イメージビデオにでも出演させられそうだ。
そんな大人、絶対にぼくは許さない。表向きは。
「ここ、前時代の遺跡みたいだなっ。もと来た道を戻って魔王軍に見つかっちゃ大変だ。奥の方に出口があるかもしれないし、先へ進んでみるぞっ!」
セキカさんはそう言うと、遺跡の更に深部へと歩き出した。
そこでふと、ぼくはセキカさんの声に違和感を抱いた。
「どうかしましたか、ナナさん?」
レユさんがぼくを見上げる。
「あの、何か変なんですよ。セキカさんの喋り方」
「確かに。「っ」が多いような気がします!」
「それはキャラ付けなんであんまり気にしないでください。ぼくが言いたいのはそこじゃなくて、セキカさんの発音と口の動きが合っていないような気がするってことなんです」
そうなのだ。
言葉とか言いたいことは伝わって来るのに、面と向かって話していると変な感じがする。
そもそも異世界人とコミュニケーションが取れてること自体、おかしなことなんだけど。
「ああ、それなら簡単な事ですよ、ナナさん」
「え?」
「その力こそ、私の父があなたに与えた能力だからです」
「なるほど、わからん!」
「ですから、あなたはチート能力によってどんな言葉でも理解することができるようになったのです。言葉を理解するというよりも、相手の意思を理解すると言った方が正しいのですが、とにかく便利でしょう? いい能力だ、馬力が違いますよ」
「わけがわからないよ……要するに、テレパシー的な能力ってことですか?」
「その通りです。この能力の素晴らしいところは意思の疎通が一方的でなく双方向に行われる点で……」
「いや、もう説明はいいです。本当にありがとうございました」
これ以上説明パートが長引くとストーリーがどんどん進まなくなる。
気付けばセキカさんはぼくらをおいてどんどん先へ進んでいた。
急がなきゃおいて行かれる。
「セキカさん、待ってくださいよ!」
と、ぼくが声を上げた瞬間だった。
『そこにいるんだろ、反乱軍!』
がらがらがらっ!
轟音と土煙を上げながら遺跡へ突っ込んできたのは、あの鋼鉄の巨人だった。
それも一機じゃない。後ろに二機ほどの仲間を連れている。
「ナナ、走れ!」
「は、はい!」
セキカさんの声に弾かれるようにして、ぼくは再び走った。
「走るのはもううんざりですーっ!」
レユさんが悲鳴を上げるけど、お前、走ってないだろ。
なんて心の中でツッコミを入れながら、セキカさんの待つ通路口へ飛び込む。
中は暗く、そして狭かった。これなら敵のロボットも入っては来れないだろう。
「怪我はないか、ナナっ!?」
ぼくの後ろから、セキカさんが這入って来る。
「大丈夫です。この通路、どこまで続いてるんですか?」
「行ってみなくちゃわからないんだっ!」
そのどこまで続いているか分からない通路を、ぼくらは這うようにして進んだ。
レユさんは自分で歩く気がさらさらないようで、ぼくの胴体にしがみついて離れない。
まるで親に寄生するニートのようにな(自虐)!
……なんか自分で言ってて悲しくなってきたなあ。
細長い通路を抜けると、広い空間にでた。
「ここは……?」
計算されたように四角い、ブロックをくみ上げて作ったようなだだっ広い空間だ。
天井はもうぼろぼろになっていて無いに等しく、その向こうには青空が広がっていた。
「ナナさん、あれ見てください!」
レユさんがぼくの襟を引っ張る。
「ちょっと、引っ張らないでくださいよ」
「それより、あれです!」
「あれ?」
レユさんの指さす方を見たぼくは、一瞬言葉を失った。
そこにあったのは、先ほどまでぼくらを追って来ていたあのロボットと同じような人型のマシンだった。広い空間の壁際に、膝立ちの姿勢で佇んでいる。
だけど、動く気配はない。
きっと長い間放置されていたのだろう、装甲のあちこちが錆びいてくたびれた様子のマシンは、どこか寂し気な雰囲気を漂わせていた。