(一)

文字数 265文字

「ちょっと待ってて」
 俺はそう言うと、玄関ドアを閉めた。慌てて部屋の中を片付ける。一人暮らししている大学生のワンルームの部屋だ。散らかるのに時間はかからない。大学に入学してすでに三週間経ったが、部屋が散らかるには十分長すぎる時間だった。
 ベッドの上の洗濯物を洗濯機に放り込み、床に転がっている大学のテキストと漫画本を背の低いカラーボックスに押し込めるなどして片付けた。
 そしてドアを開けた。外ではが同じ大学に通う保田イチロウが立っていたが、一歩動いて開くドアを避けた。
「お待たせ」
 俺はそう言ってイチロウを中に招き入れた。

(続く)
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