七、女人は……そう軽蔑するべきものでもないな……
文字数 1,429文字
Kは自分の殻に閉じ籠もっているように私には思われました。
彼の精神を健全ならしめるためには、ともかくも殻の外に彼を連れ出し、奥さんやお嬢さん、私と、同じ部屋で同じ時間を過ごさせる必要があると考えたのです。
私はむずがるKを宥めすかし、ある時は強引に部屋から引っ張り出しました。
まず、Kが奥さんたちと口を利くようになりました。最初は必要最低限の応答を端的に行うだけの素っ気ないものでしたが、次第に雑談にも応じ始めるようになりました。
次に話の最中に笑顔を見せ始めました。時には声を出して吹き出すことさえありました。
さらには、私と二人っきりのある時に、Kはお嬢さんの部屋の方を見つめて頬を赤らめながら、
私は笑って答えました。
良かった、奥さんとお嬢さんの優しさが……Kにも届いたのだ。そう思って私は、
と二人の真心に心の中で何度も感謝したのです。
Kの精神は目に見えて復調していきました。
――ところが、それから数カ月後のことでした。私が玄関で編上を苦労して脱いで、Kの部屋のふすまを開けた時、私は目の前の光景に一瞬言葉を失ってしまったのです。
Kと――、お嬢さんがそこにいたのです。
四畳の狭い部屋の中で、二人が膝を突き合わせる程に近付いて、楽しそうに談笑していたのです。私を見上げたKとお嬢さんの瞳にも困惑の翳りがよぎりました。三者は三者とも一瞬の沈黙に沈みました。
一呼吸の後、お嬢さんとKが、何事もなかったかのように私に次々と声を掛けてきました。その場を取り繕うためだけの二人の言葉に腹の底で苛立ちを覚えながら、「ああ」「うん」などと私も曖昧な返事を返しました。
私は恐る恐る尋ねました。奥さんは私とお嬢さんが近付くことを鷹揚に許してくれましたが、一線を超えさせるつもりはなかったらしく、私とお嬢さんの二人を残して家を開けるようなことはこれまで一度もなかったのです。それが、まさか……
まさかKは……お嬢さんと二人きりだったのでしょうか。自分でさえ未だ許されていない二人きりの時間をお嬢さんと過ごしていたのでしょうか……。私は僅かに唇を震わせながら二人の回答を待ちました。ですが、お嬢さんはKと顔を見合わせた後に、
と小さな笑顔を見せて、それっきりなのです。それきり何の示唆も私に与えることなく、彼女は立ち上がり、自分の部屋へと戻っていったのでした。
私はよたよたとした足取りで自分の部屋へと入りました。Kの部屋と自分の部屋を遮るふすまをしっかりと閉めました。
それから、私は