第04話(3)

文字数 1,374文字

 リリアンはマクスウェル家領主の家に忍び込んでいた。
 理由は簡単だ。同志のモニカを牢獄から出す為である。
 鍵はこっそり同じ物を作って持ってきた。
 あとは、モニカを救出するだけである。
「あ、リリアン……どうしたの……?」
 牢屋にいたモニカは酷く痩せていた。
 おそらく、まともに食事をしていないせいだろう。
「馬鹿モニカ、あんたを助けに来たのよ!」
「リリアン、ありがとう……」





 こうして、モニカはリリアンによって、救出された。
 しかし、肝心のモニカは天使教の本山であるリーフィ村に帰っても、口を閉ざしたままだ。
「モニカさん、吐いて下さいませんね。何も。きっとマクスウェル家で辛い事があったのでしょう」
「そうですね。リリィ様……、あたし、許せないです。あのマクスウェル家の領主の事……」
 続けざまに、リリアンはマクスウェル家領主に苦言した。
「モニカの事もそうですけど、澄ました顔して、良からぬ事をしているって噂でしょ! お金で物を言ってるものじゃないですか。そんなの許せない!」
「リリアンさん、口が過ぎます。でも、確かに、マクスウェル家のやっている事は度が過ぎていますね。ダニエル・フォン・マクスウェル……ただ者ではないですね」
「あたし、モニカの敵を取る為ならなんでもやりますから! いつでもご用命を!」
 そうリリアンが告げるや、リリィはリリアンに下がるように伝えたのだった。





 天使教の教会の一室。
 そこで、少年――ユウと、天使教会の教皇である老爺――セラビムが話をしていた。
「そうか。シュヴァルツ王国が生意気にも、ツツジの里を襲撃か……」
「ええ。その書類にはそう書かれています」
 先日、騎士団長の部屋を漁った時見つけた書類を、ユウはセラビムに手渡した。
「今すぐにでも、ノールオリゾンやツツジの集落に伝えるべきでしょう」
「ああ、そうだな。さすれば、我らの信頼は得られるだろう」
 ご苦労だった、それだけセラビムはユウに告げる。
 それを聞いたユウは、そのまま部屋を後にしたのだった。





 ユウはその後、教会の掃除をメリルと一緒にしていた。これも、神子であるユウの勤めだ。
 今一室にいるのは、ユウとメリルだけだ。他には誰もいない。
「ねえ、ユウ。君、何か良からぬ事をしているんじゃないよね?」
「それは、どういう事ですか。メリルさん……?」
 メリルに告げられ、ユウはずきんと胸が痛んだ。
 先日、アリスに暴力を振るった事が思い起こされる。
 自分でもよく分からなかった。神子という権力支配により、思うがままアリスに暴力を振るってしまった。
 それは自分の汚い本能のせいかもしれない。
「君、噂になってるよ。信者であるアリスさんを強姦したんだって? 神子の分際で、そんなことをするの?」
「……メリルさん、何が言いたいのですか?」
「僕はね、思うんだ。天使教なんて嘘っぱちって。そんな事をした君にも、それを命じたセラビムにも嫌気が差すよ」
「メリルさん、貴方も神子ですよ。セラビム様の言う事は絶対です」
 ユウはメリルに、そして自分に言い聞かせるように告げる。
「さあ、どうだろうね?」
 メリルは笑みを浮かべ、告げた。その笑みが、ユウにとっては背徳心を突き刺すような感覚だった。
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登場人物紹介

エレン・ディル(16)

シュヴァルツ王国第二皇女の少女。

性格はほのぼの穏やかだが、王女としてのプライドはある。

フェイを心の底から信頼している。

亡国となったシュヴァルツ王国を再建する為に、奮闘する。

フェイ・ローレンス(17)

エレン姫に仕える護衛騎士。

クールで一匹狼だが、面倒見が良い。

エレンの事が好き。

エレンの夢の為に、フェイもまた奔走する。

セレナ・エーデル

ニコラが作った機械人形。

通称・仮初めの姫。

たどたどしく喋るのが印象的。

アレックとニコラを親のように感じている。

アレック・リトナー(20)

おちゃらけている謎の剣士。

セレナとニコラを連れて、旅をしている。

昔はセレナ姫の護衛騎士だった。

セレナ姫と瓜二つのセレナに特別な感情を抱いている。

ニコラ・オルセン(19)

腕の立つ技師。

部乱暴なしゃべり方で心は熱い。

アレックとはなんやかんやで仲が良い。

機械人形・セレナの親的存在。

香月七瀬(16)

ツツジの集落に住んでいた香月家の少女。

今は家出して、ダニエルの元にいる。

明るく元気な性格。

ダニエルの事を少々気になっている様子。

ダニエル・フォン・マクスウェル(25)

若き青紫男爵家領主。

シュヴァルツ王国を再建する為に奔走する。

物腰柔らかで爽やかな性格。

七瀬の事をなんやかんやで信頼している。

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