ルールその2:他人の下着を盗んではならない

文字数 2,145文字

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映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2020/01/03/133028)


 パンケーキを詰め終わったあと、男はもがきくるしみ、血へどを吐きながら、全部食べ終わった。

 俺はやつのチョンマゲをつかみ、顔を持ち上げたあと、



「おい! なんで俺の下着を盗もうとした! 俺のことを愛してるのか!?」

「ちっ違うでござる……拙者、遠くに妻を残し、食料を求めてここまできたのでござる。あの家は古そうだったし、誰もいないと思ったのでござるよ」

「俺の下着を盗んだ理由を吐け!」



 髪をつかむ手を強くする。



「自分がはくためでござる。この世の中、男性ものの下着がないのでござる」

「リアナさんや、萌美の下着じゃだめなのか!」

「ちっさすぎて、圧迫されてしまうでござる。わが精子が全滅の危機にひんしてしまうでござる」



 チョンマゲ男は泣きべそをかきながら訴えてくる。

 うそを言っているわけではなさそうだ。

 俺は同情し、髪の毛を離してやった。



「お前、名前は?」

「宮本言左衛門でござる。取引をせぬか?」

「どんな?」

「鶏とヤギを進呈しよう。その代わり、拙者と妻を家においてはくれぬだろうか?」



 言左衛門の提案は利益があった。

 鶏とヤギはこの時代、貴重な家畜だ。

 萌美がじゅるりと唾をのみ込む。

 丸のみする気かな?



「ちょっと待ってろ。萌美。この男をもてあそんであげなさい」

「はーい。ちょっと待っててね。熱々のお餅持ってくるから」



 萌美は元気よく手を挙げて、家の中に入っていく。

 これから、この男の鼻や耳といった穴に、熱々のお餅をつっこむつもりだろう。

 言左衛門は顔を青くして、両足をじたばたさせていた。



 リアナと家の中に入り、家族会議を行う。

 外から言左衛門の悲鳴が聞こえてくる。

 新しい家族を迎え入れるか、否か。



「私は賛成よ。人手が多いほうが助かるもの。協力し合いましょ」



 リアナは賛成のようなので、俺も反対することなくうなずき、言左衛門に協力することにした。

 軽トラックの荷台に言左衛門を乗せ、トラックを運転していると、突然窓ガラスがはじけた。

 驚いて顔を伏せたものの、外からの銃声が鳴りやまない。

 言左衛門は荷台から降りているようだ。



 トラックの扉を無理やり開けられ、見たこともない男が、俺の服をつかんで、車から引きずり下ろした。



「下着をよこせ!」



 俺のズボンを脱がそうとしたので、ポケットに入れてあった、萌美専用のおもちゃのハンドガンで眉間を撃ち込んだ。

 プラスチックの弾が見事命中し、男が倒れる。

 弾ははじかれて空に飛んでいった。



 言左衛門はもうひとりの男に、馬乗りになって、顔をビンタしていた。

 俺は銃を倒れている男に向け、顔めがけて撃ち込む。

 プラスチックの弾は鼻の穴に入り、死亡を確認した。



「殺すことはなかったのではなかろうか?」



 言左衛門が同情の視線を向けているが、どうせ俺の下着を狙っていたんだ。

 貴様らに、俺の下着はわたさん。

 これ1枚しかないんだぞ。

 無言でトラックに乗ると、言左衛門の妻がいる家に向かう。

 言左衛門を乗せ忘れたことに気づいたのは、それから30分後だった。



 家に帰ると、リアナと萌美がガスマスクをつけて、俺たちを迎えにきていた。

 新しい家族にわくわくしているようだ。

 早くも上下関係を教え込むつもりだろう。



 誰が奴隷で、誰が神か。



 俺は荷台に乗せた段ボール箱を、言左衛門と下ろした。

 リアナが首をかしげ、



「それは何?」

「この中に、彼の妻が入っているらしい」



 俺は段ボールを指さした。

 どうやら言左衛門の妻は、箱の中に詰めとかないと、いろいろとやっかいらしい。

 病気なのかと何度も確認したが、言左衛門は首を振るばかりだ。

 もし感染していたのなら、殺さなければ。



「で、この箱どうやって開けるんだよ?」

「日本の有名な念仏を唱えるでござる」



 言左衛門は両腕を広げ、顔を上に向けると、重く、深く首を曲げ、手を静かに合わせる。

 本格的だな。

 なんらかのすごみを感じる術式だが、なぜに妻を段ボールに封印したのかが気になる。

 もしかして、妖怪が出てくるんじゃないのか?

  

「はあああああああっ!!!! オキュラス・レパロ(超しぶい顔で)」



 観音様のごとく、穏やかな念仏を唱える言左衛門。

 えっ? ハリーポッター?

 呪文の意味は「眼鏡よ、直れ」。

 日本語じゃ、ないぞ?



 段ボールのフタがぶち破られ、黒いハートのサングラスをかけ、手にギターを持った女が飛び出てきた。

 段ボールのサイズ的に、物理の法則がおかしい。

 彼女は俺たち家族を認識すると、



「あなたたちね! 今日から私をお世話する一家は! 私は美雪雪音! ミッキーって呼んで! パンケーキ食べたい!」



 美雪と名乗ったあとは、ギターを演奏し始めた。

 ひどい。耳が痛くなる。下手すぎる。

 しばらくぼうぜんとしていたが、リアナと萌美が家に入っていくので、俺も帰る。

 言左衛門は美雪のひどい演奏に涙を流していた。


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