第4話

文字数 938文字

【 風に乗って 】

二人がそう思った時、静かな優しい声で女王様が言いました。
「遥か昔、・・・私がまだ子猫だった頃、あなた達のような三人姉妹が私の飼い主だったことがあったわ。私達はたくさん一緒に時を過ごした。
かくれんぼしたり、追いかけっこしたり、一緒に眠ったり・・・。懐かしい、大切な思い出・・・」
そして、ゆうな、みさき、まりんを順番に見つめるとこう言いました。
「懐かしい思い出に免じてあなた達を家へ帰してあげましょう」

「!!」
まりんとみさきは静かに抱き合って喜びました。
ゆうなは相変わらずニコニコしていました。

「けれど、ここに来たこと、ここで見たものを誰にも言わないで秘密にするのですよ」

女王様の目がギラリと冷たく光ったのでまりんとみさきは慌てて頷きました。

「では特別に、私が案内しましょう。ついていらっしゃい」
女王様はそう言うと立ち上がって歩き出しました。
まりんとみさきの二人は両側からゆうなの手を取り、女王様の後を追いました。
女王様のフワフワの三本の尻尾が歩くたび揺れて優しく風をおこします。
その風に髪をなびかせながら、三人は階段を駆け降り、庭園を抜け、お城の入口まで来ました。

「では、お乗りなさい。特別ですよ!」
そう言うと女王様は《伏せ》のポーズをとりました。ゆうなは一番に飛び乗りました。次にみさきがおっかなびっくり、まりんも慎重に女王様の背中にまたがり、真っ白でフワフワの毛にしっかりつかまりました。
「さあ、行きますよ」
女王様はそう言って始めはソロリソロリと歩き出しました。
しかし次第にスピードが増して風のように早く走り出しました!
来る時に見た、色とりどりの家が飛ぶように過ぎて行きます。
三人は振り落とされないように必死でつかまります。
やがて前方に猫じゃらしの草原が見えてきたかと思うと、辺りは急に霧が出たように白くなり、ビュウビュウと風が唸り出しました。
三人は今にも飛ばされてしまいそう!
ゆうなは両手でしっかり女王様の背中につかまり、みさきは片手でゆうなを掴み、まりんは片手で妹達を抱き抱えました。
その時、一段と強い風が吹き、三人は空中に投げ出されました!
皆ギュッと目をつぶりながらも、みさきはゆうなを、まりんはみさきを離さないように服をしっかりとつかんでいました。
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登場人物紹介

長女まりん、勉強もスポーツも得意な小学六年生。ヘアスタイルはショートカット。

次女みさき、歌が好きでゲームが得意な小学四年生。ヘアスタイルはポニーテール。

三女ゆうな、天真爛漫な三歳児。いつも思いついた閃きをすぐ行動に移すので事件に巻き込まれる。ヘアスタイルは二つ結び。

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