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エピソード文字数 698文字

 私は光秀に手紙をしたためる。

 どうか……
 思い留まって下さい。

 どうか……。

 この煌びやかな鳥籠に隠り、羽ばたくことも忘れていたが、この私が、信長も光秀もそして我が子同然に育てた信忠も死なせはしない。

 紗紅……。
 あなたもきっと同じように、2人をお守りするために戦場で奮闘しているのでしょう。

 光秀への手紙を書き終え、多恵に託した。

(多恵、紅殿とお話がしとうございます。他の家臣には内密に、紅殿にここに参るようにと、伝えてはくれませぬか)

「紅殿でございますか?はい。それもご内密に、でございますね。この多恵にお任せ下さい」

 多恵は右手で拳を握り、自身の胸を叩いた。

 どんな時も、いつも私の傍にいてくれた多恵。どんなに感謝しても足りないくらい、心強き味方……。

 多恵がいたから、私はこの時代で生きてこれた……。

 (ありがとう。多恵)

 ――その夜、紅が秘かに私の部屋を訪れた。信長とともに合戦に明け暮れる日々。その肌は小麦色に焼け、神々しいほどに逞しき武将に見えた。

「於濃の方様、ご無沙汰しております」

(紅殿、息災でなによりじゃ)

「多恵やお付きの者はいないようですが」

(人払いをしたゆえ、誰もおりませぬ)

「於濃の方様、上様は明後日上洛するそうにございます」

(明後日……。そうであるか。紅殿、近う寄れ)

「はい」

(目を閉じては下さらぬか、紅殿に新しき着物を(あつら)えました)

「新しき着物でございますか?」

(早く目を閉じよ)

「……でも」

(わらわに背を向けてもよい。早くしなさい)

「……は、はい」
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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