10
文字数 1,421文字
*****
「脳内に直接語りかけたんですけど。アンタ死んだからね」
むくり、と僕は掛け布団をおしやるように起き上がる。
「なんだ、夢か」
ふぅ、と息を吐く。
「夢じゃないって言ってるんですけど。バカなの?」
紫延ノノの声。
「〈ファンタジー失格〉なあらすじを聞かされてしまった……」
あらすじとはもちろん、最前の双子地球の話だ。オリジナルの地球とコピーの地球があって、オリジナルが滅亡したとかいう……。
「わたしの話、全く聞いちゃいないなんてファッキンシット。脳震とう起こさせるわよ? さっきの話は全部ホントですけど、信じる気は?」
ベッドの横でパイプ椅子に座るナース服のノノは語気強くこちらに問いかけた。看病していてくれたのか? ナース服の短いスカートの奥と太ももから僕は目をそらす。
「信じるというより、現実として、ヤバいのはわかった。弟そっくりの魔王がいて、魔王の触手が襲ってきたのは確かなことだ」
魔王に刺された、広範囲にわたる部分に包帯がまかれていて、血がにじんでいる。
僕が腹部の包帯に手を触れると、
「一応、看護師ですから?」
と言ってそっぽを向いた。ノノが包帯を巻いてくれたのだろう。
「ウサミミ脱いだの?」
言ったら頭をはたかれた。痛い。
「ここ、どこ?」
僕の質問に、ノノとは違う声が答える。
「春葉だよー、わかるぅ? さすが。一言目に言うことが一味違うねっ。晶は一回死んだんだよぉ?」
白梅春葉だった。
ベッドに寝る僕の足の方に立っている幼馴染、白梅春葉。
春葉は首をかしげて笑顔をつくる。僕と目を合う。
そのしぐさがなぜかかわいく思えて、咄嗟に顔を伏せた。
それにより、この場にいる三人に微妙な空気が流れた。
十秒くらい後、春葉は背伸びをしながら、
「ここは春葉のおうち。春葉の部屋のベッドなの」
と、照れた声を出す。
僕は顔を上げる。
「僕が一回死んだって言うのは?」
聞かないと進めないんだろうなぁ、と思って聞いてみた。僕、生きてるじゃん、と思うけれど、尋ねないとね。
「魔導力」
ノノがそっぽを向きながら、言う。
「死ぬとは心肺停止。また動くようにしたワケ。心肺停止からね。ショック死のところを引き戻したんですけど。わたしはスペシャルな看護師よ。アンタにはツケを払う義務がある」
「眠い。もうちょっと眠る」
あくびをする僕。
「ディアヌスはほかの用事があったみたいね。だから逃げたんでしょう」
「難しい話はあとだ。僕は眠る」
春葉が布団を掴み、揺さぶる。
「夜はこれからだよ? 寝ちゃうの? 遊ばないの? じゃ、あとで起きてきてね。一階で映画観てるから。さ、行こ、ノノちゃん。春葉オススメ映画を立て続けに上映だー」
「ま。今日は疲れたし。気分転換に映画、付き合うケド」
「いぇーい!」
どたどた階段を下る音を聴きながら、僕はまた眠りにつく。ああ、ここが春葉のベッドと布団かぁ、と若干ドキドキしながら。
しかし、あと一週間しか時間がないらしいが、これでいいのか。
疑問に思うが、疲れていてはなにもできない。ノノもそう判断したのだろう。
いつの間にノノと春葉が仲良くなったか不明だが、女子一般に対し、僕はなにも理解できないので仕方ない。急に仲良くなるということもあるのだろう。
布団が心地よくて。
僕は深く、眠りに落ちていく。
「脳内に直接語りかけたんですけど。アンタ死んだからね」
むくり、と僕は掛け布団をおしやるように起き上がる。
「なんだ、夢か」
ふぅ、と息を吐く。
「夢じゃないって言ってるんですけど。バカなの?」
紫延ノノの声。
「〈ファンタジー失格〉なあらすじを聞かされてしまった……」
あらすじとはもちろん、最前の双子地球の話だ。オリジナルの地球とコピーの地球があって、オリジナルが滅亡したとかいう……。
「わたしの話、全く聞いちゃいないなんてファッキンシット。脳震とう起こさせるわよ? さっきの話は全部ホントですけど、信じる気は?」
ベッドの横でパイプ椅子に座るナース服のノノは語気強くこちらに問いかけた。看病していてくれたのか? ナース服の短いスカートの奥と太ももから僕は目をそらす。
「信じるというより、現実として、ヤバいのはわかった。弟そっくりの魔王がいて、魔王の触手が襲ってきたのは確かなことだ」
魔王に刺された、広範囲にわたる部分に包帯がまかれていて、血がにじんでいる。
僕が腹部の包帯に手を触れると、
「一応、看護師ですから?」
と言ってそっぽを向いた。ノノが包帯を巻いてくれたのだろう。
「ウサミミ脱いだの?」
言ったら頭をはたかれた。痛い。
「ここ、どこ?」
僕の質問に、ノノとは違う声が答える。
「春葉だよー、わかるぅ? さすが。一言目に言うことが一味違うねっ。晶は一回死んだんだよぉ?」
白梅春葉だった。
ベッドに寝る僕の足の方に立っている幼馴染、白梅春葉。
春葉は首をかしげて笑顔をつくる。僕と目を合う。
そのしぐさがなぜかかわいく思えて、咄嗟に顔を伏せた。
それにより、この場にいる三人に微妙な空気が流れた。
十秒くらい後、春葉は背伸びをしながら、
「ここは春葉のおうち。春葉の部屋のベッドなの」
と、照れた声を出す。
僕は顔を上げる。
「僕が一回死んだって言うのは?」
聞かないと進めないんだろうなぁ、と思って聞いてみた。僕、生きてるじゃん、と思うけれど、尋ねないとね。
「魔導力」
ノノがそっぽを向きながら、言う。
「死ぬとは心肺停止。また動くようにしたワケ。心肺停止からね。ショック死のところを引き戻したんですけど。わたしはスペシャルな看護師よ。アンタにはツケを払う義務がある」
「眠い。もうちょっと眠る」
あくびをする僕。
「ディアヌスはほかの用事があったみたいね。だから逃げたんでしょう」
「難しい話はあとだ。僕は眠る」
春葉が布団を掴み、揺さぶる。
「夜はこれからだよ? 寝ちゃうの? 遊ばないの? じゃ、あとで起きてきてね。一階で映画観てるから。さ、行こ、ノノちゃん。春葉オススメ映画を立て続けに上映だー」
「ま。今日は疲れたし。気分転換に映画、付き合うケド」
「いぇーい!」
どたどた階段を下る音を聴きながら、僕はまた眠りにつく。ああ、ここが春葉のベッドと布団かぁ、と若干ドキドキしながら。
しかし、あと一週間しか時間がないらしいが、これでいいのか。
疑問に思うが、疲れていてはなにもできない。ノノもそう判断したのだろう。
いつの間にノノと春葉が仲良くなったか不明だが、女子一般に対し、僕はなにも理解できないので仕方ない。急に仲良くなるということもあるのだろう。
布団が心地よくて。
僕は深く、眠りに落ちていく。