恋愛経験値0の元勇者魔王と側近ちゃん

文字数 1,060文字

★★★

「……な、なんで恋話になってるの……? ……これだからリア充カップルは……」
「なっ、なに言ってんだ、あいつらはっ……!」
 水晶を前にして、リュータとミカゲは赤面していた。
 お互いチラッと視線を向けて目があい、バッと顔を反対側に向ける。
 ふたりとも戦闘経験は豊富でも、恋愛経験値は限りなく0に近かった。いや、0だった。
「……そ、それにしても……まさかレアスキルを持っているなんて……」
「お、おう……そうだな……俺が勇者時代に持ってなかったレアスキルをふたつも持っていやがるとはな……レベル120とか、なんだよそりゃ……」
 とりあえず、ふたりはバトル関連の話をすることでいつものペースに戻すことにした。どんな攻撃や状態異常にも耐えるふたりだが、恋愛っぽい空気は苦手だった。
「……で、ど、どうする? 四天王……」
「お、おう、そうだな……」
 いまの四天王は連日の鍛錬疲れで肉体も精神も悲鳴を上げていた。いくら表面上全回復してもパフォーマンスの低下は免れない。
 それに―ー。
「勇者時代も思ってたんだが、四天王って、わざわざひとりずつ拠点にこもってたから、ボス戦が楽だったよな?」
「……ん……四天王が同時にボスとして出てきたら、ものすごく苦戦してたと思うし……そっちのほうが絶対に戦闘が楽しかったと思う……」
 せっかく、攻撃・防御・素早さ・魔法――とそれぞれ突出した能力を持っているのに、一対四で戦う挑むから勇者パーティにボコられるのだ。
「なら、四天王を同時にぶつけたらいいんじゃね?」
「……確かに……それなら四対四の手に汗握る超楽しいバトルになること間違いなし……むしろ、わたしが戦いたいぐらい……」
「だろ? だから、もともとあったダンジョンの最下層に魔王城への鍵は置いておくけど……四天王は魔王城で四人まとめて戦わせればいいだろ!」
「なるほど……そうすれば、四つのダンジョンも無駄にならない……そして、四天王もこれまでの鍛錬でボロボロになった心身を全回復することができる……」
「ああ、どうせなら、最高のコンディションで四天王も戦わせてやりたいしな。せっかく鍛えてやったんだし。……それと、あのチートスキル持ってるふたりも、どうせならもっと強くなってから戦いてぇよな!」
「ん……最高のコンディションで最強の敵と戦ってこそ、バトルは楽しい……」
 バトル狂のふたりの意見は一致した。
 ……こうして、魔王軍の歴史上初めて四天王のダンジョンに四天王が不在ということになったのだった。
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登場人物紹介

ルーファ。

元魔王。人間に転生して村で暮らしていたが、勇者に選ばれてしまう。


リイナ。

ルーファの幼なじみ。宿屋の娘。

冒険者だった父母から武術を学び、ルーファと共に冒険の旅に出る。


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