第3話 セッティスカヤ

文字数 12,396文字


うきょけきょけきょけきょけきょけーーーー!!

「あれはなんですの?」
「あれは鳥の鳴き声でございますお嬢様」
「ふうん、聞かない鳴き声ね」
「ここは生態系も結構違いがあるのでしょう、さて、お疲れでしょうが、もう少し進んでおきましょうお嬢様」

まばらな茂みの中を、初老の男を先にして進む。
なるべく汗をかかせないように、茂みの草木を踏み倒して、なるべく後ろの若い女性が歩きやすく、服になにかが引っかからないように、ゆっくり進んだ。
それは必要性からと言うよりは、執事がそうしたいから、というところからのものであった。


日が暮れて、焚き火を前に、小さな木のボール?カップ?で白湯をすする初老の男と若い女性。

「もう少しなんとかできればよかったのですが、申し訳ございませんお嬢さま」
獲物がいなかったのだ。食べられるような獲物が居なかったのだ。
「いえ、こんなことで音を上げていたら、この復讐ができないでしょう?せいぜい私を鍛え上げるために利用させてもらうわ。じいもそのつもりで遠慮無用、可能な限り私を鍛え上げるためにこの苦境を利用して。
敵のこちらへの攻撃の手を、こちらの最大の利益になるために利用するのが、最も効果的よ。」


初老の男はサスケ・コウガーヌス・(ゴーロ)・シューゴ。伯爵家当主の弟である。
若い女性は、セッティスカヤ・タバカールダ・(ゴーロ)・アクヤクノー。伯爵家長女。15歳。
(ゴーロ)は、家族以外には秘密だ。王家さえ知る者はいない。というか、王家に知られたら一族郎党即処刑されるだろう。その名の通り、ゴーロ王国王族の直系なのだから。

ゴーロ王国始祖が、自分の下の子達数名を産まれたときから王族から外し、普通の貴族とさせていた。
始祖は「必ず安全装置になる」と言って。サスケの一族もその1つ。各赤子を育てる責を負った者達に始祖は、これからできる赤子一族に一つ一つ責務を与えていた。
「普通に、何の問題も無く幸せに一生を過ごせればそれが一番良い。しかし、必ず危機は訪れる。各一族を、常にそれに備えさせ、最善の対応をできる体勢を維持しておくのだ。」

*ーーーーーーーーーーーーー*


もういい加減我慢ならん!どうしてくれようかっ!!
王太子ゲロデバラン・ヌスミーノ・ムーノウは怒り心頭で自室を歩き回っていた。
小柄、胴長、小太り、髪は濃い茶色、顔は平凡。一般人の服を来させて町中に立たせれば、彼を王族だと気づくものは皆無だろう。彼の真っ白な柔らかい手が、金持ちの息子だとわからせるだけだ。
彼の父は子供を一人しかもうけられなかった。后の他に幾人もの側室を持ったが、だめだったのだ。
「ムーノウ一族は、子作りでさえも無能なのか、、」と人々は思っていた。

近隣諸国含めこのムーノウ王国も末期症状に入っていた。王としての資質の無い一族による世襲が続くと、国は徐々に荒廃していく。小悪党が権力を握りっぱなしになるからだ。
巨悪のほうがわかりやすく、人々の心も対処できやすい。だが、小悪党が社会に少しづつ染みてくるのを気づくことができる者は少ない。
せっかく前の王国が豊かな国を造り国民全体が豊かになっていたのだが、ムーノウ王国になってからその蓄えはどんどん食いつぶされていった。

ムーノウ王国始祖ヌスミーノがゴーロ王国を盗んだのは、たまたま謀略がうまくいったからだった。
王太子の成人の儀の宴の乾杯で、参加者全員に毒を飲ませた。主だった貴族当主と後継が全滅。王族も全滅させたとヌスミーノは信じていた。


セッティスカヤの良い評判は彼女が物心付いた頃からあった。
聡明、努力家、そして美貌。性格は、、、豪放、、権力にカサに来ている者達には傲慢と受け取られ嫌われていた。生意気だと。
ゲロの父親現王は、無能であるが、それでも王国の現状を無能なりに把握し、「これはまずい」と、「聡明な血筋を入れなければ!」として、セッティスカヤを王太子婚約者とした。
アクヤクノー伯爵家側にノーを言う権利はない。取り潰しかYesの2択のみ。

気に入らないのは王太子側も同じ。
王太子は、常に自分より下の者が好きなのだ。自分を「凄い!」と言ってくれる者が好きなのだ。

なので、何をやっても自分より上手どころか「凄い」になるセッティスカヤは気に入らなかった。とても目障りだった。しかも王太子に甲斐甲斐しくするので、彼には「バカにしている」としか思えなかった。セッテイスカヤが何をしても悪意に受け取るだけだった。
王も王妃もそれを見抜く資質などまったくない、まさにムーノウ一族そのものだった。


「殿下、では、あの悪女が消えればいいのでは?」
「そんなことできるんだったら世話ないわっ!!」
「いえいえ、殿下、私ならお手伝いできると思いますが?」
バカを利用し大きな悪事を働こうと常に目を光らせチャンスを逃さない悪党は、バカの周囲にあふれるほどいるのだ。


セッティスカヤが毎日のお茶を飲む東屋に、めずらしくきれいな敷物が敷かれていた。
侍女に聞くと、今朝外国から来た絨毯売りが、帰国するから余り物を安くするから買ってくれ、あの東屋に丁度よいだろう、と門からも見える東屋を指したそうな。丸い絨毯の大きさが東屋にぴったりだったので買ったそうだ。

「とてもきれいだし気持ちいけど、このお茶のためだけに毎回敷くのは手間ね。」と気遣ったが、侍女は庭だから庭師が毎回手伝ってくれることになるので問題ないと。

サスケがセッティスカヤの後ろに侍り、セッティがお茶を飲んでくつろいでいると、
いきなり周囲の景色が変わり、お茶のセットとガーデンチェアーのセットのみを残して全て消えていた。
周囲の景色はジャングル。領地の森の景色ではなく、サスケは「明らかに南方の密林内だ」と推測した。


王都中が大騒ぎになった。
王太子が消えたとしてもこの半分の騒ぎにもならないだろう。しかもその騒ぎの大半は「祝い酒」の騒ぎになったろう。それほどムーノウ一族とセッティスカヤの差があるのだ。
王太子が妬みひがみで凝り固まるのも無理はないと言えば無理がないのだが、それも全て王太子やムーノウ王族の自業自得なのだが、彼らは絶対にそれを認めない。

セッティが消えたことを確認できた王太子ゲロ。
ゲロは満面に笑みを浮かべ、数日は喜びいっぱいで過ごせた。
が、もともとの性格がそのままなので、我儘は加速する、我儘が満たされないと怒りになる、怒る者に近づきたい者はいない、「お世話されにくい状況を自分で作り出している」のだが、世話が足りないと更に怒る。
ゲロの喜びもほんの一瞬だけ、数日だけで消えてしまった。
セッティスカヤがゲロの側にいた時には彼の怒りをセッティに集中させていた「囮」のようなものだった、だけなのだろう。
我儘な奴には「八つ当たりの対象」が、常に必要だ。


*ーーーーーーーーーーーーーー*

ひゅっ! ドサッ、
ザク、 どぼっどろどろでろー、、、ごしごしごしごしごしごし、、でろー

昨晩じいは、長さ20cm程、太さ2cm程の木の枝の先を尖らせたものを何本も用意しておいた。
それを投擲しウサギを仕留めた。
一丁だけのナイフを投げてなくしたらまずいので、使い捨ての道具を作ったのだ。

血抜きをし、しごいてできるだけ多く更に血抜きをした。
調味料が無いので臭いはもろ出るから。サスケは問題ないが、お嬢様には少しでもよくしたものを食べてもらいたい、という気持がそうさせる。

サスケもセッティも魔法を使える。
この世界、魔法を使える者は少なくなく、でも大概は日常を便利にするためくらいにしか使えない。やっぱり疲れるのだ。なので皿洗いや洗濯などは手でやるほうが良い。高級服の洗濯は魔法で、というように使い分ける。台所での火起こしは、魔法に慣れたものでは魔法で、慣れていなければ火打ち石やマッチで。というように。

(ゴーロ)一族の中で タバカールダ一族が最も魔法を使える。強さも強い。

ちなみにアクヤクノーの家名は表向きのものであり、ゴーロ一族の中では前にあるミドルネームが始祖から与えられた家名だ。その後ろの(ゴーロ)は、ゴーロ一族の証。

セッティがやろうと思えば、今居る密林を、どの程度の広さかわからぬが、それでも”全焼”させることは難しくないだろう。
だがセッティは剣技好きなのだ。タバカールのみではなく、ゴーロ一族はほぼ全員が上手い下手に関わらず武術、剣技が好きなのだ。剣、刀、槍、薙刀、を最も好む。

サスケとセッティが全く汚れていないのも、虫さされも引っかき傷1つ無いのも、鍛錬の結果と無意識まとう魔法があるからだ。



「さて、やっと密林の縁に届きました。今までのペースで歩けば、2−3日の距離でしょう。縁の外は、見える限りでは人の手の入らぬ草原のようです。まず食事をし、お茶を飲んでから転移いたしましょう」

2人はウサギの香草シチュー(薄味)を食べ、その後レモン葉茶を飲んだ。
密林に放り出されたのは2日前。探査魔法で密林の縁を探しつ、食料などを得ていた。
食器は木から魔法で、水も火も魔法で作る。流石に食材は出すことはできない。
サスケは氷の礫で獲物を捉えることもできるが、投擲のほうが速いし、本人が言うには「正確」だと。
セッティは見ていて違いがわからぬが。
セッティも投擲はできる。サスケから数本もらっており、時折襲ってくる猛獣の両目を潰していた。
「反射の訓練には良いな、、」と思った。襲い方が人より数段巧妙だからだ。特に気配の隠し方が上手い。


方向がわかったので、森の外に転移した2人。
草原に出ると風が気持ちいい。午後の緩やかな風だ。
日差しは暑く感じるが、それほどでもない。2人は草深い草原の草より少し上に浮かび、緩やかに移動を始める。高く浮いても良いが、魔力を多く使うので腹が減る。現状は魔法使用はなるべく抑えておくほうが無難だ。

たまに深い草の中からネコ科の猛獣が飛び出し襲ってくるが、サスケは手を出さず、セッティだけで対処している。
一度、猛獣が草の中に隠れている状態で飛び上がるために体を縮め、次の一瞬で飛び跳ねる、という寸前を狙って仕留めた。その姿は全く見えないのに。
「流石です」
この時はサスケから褒められた。

2人は、それから日が傾くまで草原を飛び回り、狩りをした。

狩りをしながら北に移動している。
セッティはもう無意識に投擲している。襲いかかる気配が無い場合、見過ごす。だが、襲う寸前になった猛獣は全て飛びかかる寸前で仕留めた。
「これが、寝ながらできるようになれば一人前なのですが、、」とサスケは思う。

数日後、
セッティが朝起きた時、周囲は獣の死骸で満ちていた。皆やせ細った獣だった。
ここらは草もまばらで、所々に灌木の茂みがあるくらいの、荒野に近い土地になっている。
餌が少なかったのだろう、人など良い獲物だ。
セッティはサスケがやったのだと思った。
「お嬢様、もう一人前にお成りです。これらは全てお嬢様が寝ているうちに仕留めたものです」
とサスケ。
うわー、、、寝ているうちに?家に帰ったら、部屋に入ってきた侍女とか無意識にやっちゃわないかな?
と不安になった。その顔色を見たサスケ
「ご心配は無用です。殺気を出していない者を無意識に殺傷することはないでしょう」
サスケの言うことだ、信じるに値する。

「ではこれを、、」
サスケが小石をひとにぎりセッティに渡す。
「で、こう、、」
親指で空に弾く。高空に黒い点にしか見えないものが弾けて落ちてくる。
どさっ、
鷹だ。
「さぁ、食事の支度を始めます。お嬢様は、あと2−3羽お願いいたします」

セッティが弾いたが、さほど飛ばない。「そう言えば、サスケは飛ばした後に魔力を乗っけていたな」と先程の情景を思い出した。
親指でピンッとはじき、すぐに魔力を乗せ、威力を込め、精度を高める、どんどん、、、、高空の黒点が弾けた。

その日の午後から、セッティは小石で狩りを行った。

移動は人気のある場所、村や町を避けた。人との接触は今回は無用なものだった。
「帰還」が第一目標だが「訓練」も重要なので、さほど重要ではない「時間」を消費し訓練に充てることにしていた。サスケの目論見はセッティには言わないが、セッティはそのくらいわかっていた。産まれたときからの付き合いなのだから。一緒に居る時間は両親よりも長いだろう。

タバカールダ家とコウガーヌス家の関係はこのような関係なのだ、その始まりから。
まだセッティが小さい頃じいに聞いたことがある、

「じい一族はうちと同じく始祖王族の直系なのに、なぜ皆うちの一族の側付きになっているの?」
「うちの一族は始祖のお頼みにより、タバカールダ一族の基本的には長女に付き、幸せな人生を送るために努力することを使命としております。」
「基本長女、、ね、、。一番面倒くさい性格の娘、に、でしょう?」
「ははは、、でも、そのような性格のお方が、必ずタバカールダ一族を守り、強くしていっています。一族の要となる方の必須の性格なのでしょう。」

森の中を歩きながら、無意識に一回のはじきで2つ礫を飛ばし猛獣の両目を潰し、脳まで破壊させながら、セッティはそんなことを思い出していた。


森が多くなり、深くなり、どんどん北になってきていることがわかる。
猛獣も毛皮が濃く深くなっている。
食用の獲物も、脂身が多くなってきている。
故郷は近い。


ムーノウ王国の南東に位置するのはデガラーシ王国。
デガラーシの東部分は山岳地帯。農地は極端に少ない。酪農、林業を僅かにしているのみ。
西部は平地で、農地が多い。山からの水で本来豊かになるはずなのだが、山に鉱物が多いらしく、余り土地は肥えていない。かといって、鉱山開発を行えば、川の水は一発でだめになり、下流の農地は全滅だ。
常に八方塞がりのデガラーシ王国。

ムーノウ王国の南東に領地を持つモブ領主は、デガラーシを舐めていて、いつかその鉱石のうなる山を奪ってやろうと狙っている。年具を酷く多く徴収し、軍部を増やしている。が、クズにはクズが集まり、数だけの軍になっていることをそのモブ領主は気づくことはない。

サスケとセッティがムーノウとデガラーシの国境付近の森を通り抜けていると、
前を行くサスケが停止しながら手でセッティを制止、しゃがんだ。セッティもしゃがみ、気配のある方向に影になるように茂みの後ろに動く。

ほどなく、軽装備の者達が50mほど先を通り過ぎる。ムーノウの傭兵に見える。デガラーシの兵や傭兵は木や竹でできた漆塗りの軽い防具を好んで使う。ムーノウと見ただけで違いはわかる。
今セッティたちがいる場所は、明らかにデガラーシ国境内だ。しかも明らかに「狩りに来て迷い込んだ」人数ではない。
そのままセッティ達が潜んでいると、次から次へとやってくる。

サスケとセッティは気配を殺しながら下がっていった。


「どうしますか?お嬢様」
指揮権をセッティに預けたサスケ。「これも訓練か、、」と納得するセッティ。訓練目的の変更がなされたわけだ。
セッティは無意識に、状況に合わせ自分の意識を変更する。言動が変わる。

「まず、状況把握をしたい。この侵入軍の集結地点を確認。できればその侵入部隊指揮者を確認しておきたい。
その後、デガラーシ側の軍動向の確認。できればデガラーシ側に侵入軍を撃退してもらいたい。どうせモブ領主がバカなことを考えてのことだろうから。最終的に、モブ領主に許可を与えた王族側も確認できればなお良い。モブ領主は小心者だ、奴一人で決断はできなかったろう。」
「承知いたしました。では、」
探索もサスケのほうが上手だ。範囲内に集結地点はあった。なので、その近くに転移する。

集音し、翌朝攻撃を仕掛ける事がわかった。侵攻軍は、この軍と、逆側にもう1軍。こちら側の指揮者はモブ2。向こう側の指揮者はモブ3だと、わかった。
その後、集結地点の向こう側、つまりデガラーシの中の方に転移した。

デガラーシ軍は集結していた。モブらの軍事行動は筒抜けだった様子だ。
「この際です、いかがでしょうか?」サスケが問いかける。
デガラーシの圧勝は見えている。なので、デガラーシ王側と折衝し、セッティに協力すれば、ムーノウ王家を滅ぼしたときにモブ領主の領地を割譲してもいいのでは?どうせクズ領主どもは全て粛清するのだから同盟国を作るほうがよほど有効でしょう、と。問いかけているのだ。
そのくらいならセッティはわかっている。

「む、、」本当はそこまでことを大きくしたくはなかった。が、これも天意なのだろう、と諦めたセッティ。
「仕方がない、今この時点で私達がこれに行き当たった、ということ時点で、避けようがないことの始まりなのだろう。私も諦めた、とことん行こう。」


セッテイぃとサスケは探索と転移を使い、デガラーシ王城の一角に忍び込んだ。
風を使って声を飛ばして王に謁見を求めた。王は小声で自分の部屋に来いと返答した。
間もなくセッティとサスケは王の部屋の前に立つ。衛兵も下がらせたようだ、誰も居ない。
ノックして、返答を聞いた後、入った。

「緊急時にいきなりの要請、大変申し訳無い。」
「いや、これほどの魔法を使えるものであれば、それなりどころか相当の者だろう。逃げることさえ敵わぬならば、誠意を持ってあたるしかない」
「申し訳ない。」

セッティは自己紹介をし、ムーノウ王族を滅ぼし、国を改めるつもりだと全て語った。
そして、相手が本物のデガラーシ王だと確認できたあと、セッティは自分の本名全てを名乗った。
デガラーシ王はセッテイの前に跪いた。

「始祖ゴーロ大王陛下の直系がまだおわしたとは、、、」声がくぐもった
「このサスケも直系だ。我らは今このようなときのために、始祖が密かに用意しておいたのだ。日の目を見なければそれはそれで重畳、ということだった。だが、不幸にも、、」
「、、はい、、我がデガラーシも始祖大王が作られた国。自国と、内外の民達の安寧ために在れ。と、我らデガラーシ王家一族は始祖の言葉に従い今日まで在り続けて参りました。悪徳下賤な一領主の餌になるためではありません。」
「ならば、全て殲滅せよ。そして、モブ領も占拠し領有するのだ。私はムーノウ一族を殲滅し、我の国はデガラーシとともに在ろう。」
「御意に従います」


無理言って、デガラーシ軍先頭に立ったセッテイスカヤとサスケ。
風を使い、セッティの声をモブ両軍全体に轟かせる。

「聞け!!小物の盗人モブ共!!お前らはもう終わりだ。この私、
セッティスカヤ・タバカールダ・ゴーロ・アクヤクノーが、始祖ゴーロに代わり、お前らを成敗する。
投降も許さん。潔く死ね!」

最後の言葉と共に、両軍の最後尾あたりから大爆発が起きた。両軍、半数くらいが即死。
後ろから攻撃され、パニックに陥り、前方に逃げなから攻撃を仕掛けるモブ両軍。
左翼にセッティ、右翼にサスケが襲いかかる。二人共尋常ではない太く重い槍を振り回している。
一度振ると数人から10人ほどが吹き飛び、、

終了後数を数えたら、侵略軍は2千体あった。爆発で粉々になった分は頭だけを数えた。頭はあまり粉砕されない。吹き飛ばされどこかにぶち当たった場合のみ、割れるくらいだから。

セッティとサスケはそのままデガラーシ軍を引き連れ、モブ領に向かう。
が、全体で行くと遅いので、セッティはサスケ、それと王直属部隊とその隊長デガラーシ王子と共に転移した。
流石にサスケはその全員の転移まではできず、ゴーロ一族でも今そのくらいできるのは魔力量の多いセッティスカやくらいなものだろう。


「侵略軍のお帰りだ!!」
デガラーシ王子はモブ2とモブ3の首を掲げた。モブ領主の長男と次男の首だ。
モブ領城は大パニックで使用人たちは逃げまくった。警備についているはずの騎士たちまで剣や槍を捨て、鎧をその場で脱ぎ捨てて逃げていった。

人気(ひとけ)の無い小さい城に入る一団。

探査に引っかかったのは3階の正面の部屋。

書類の1つも載っていない新品同様のでかい机の足元に隠れているつもりのモブ領主の背中が見える。

セッティが後ろの襟首を掴んで、片手のまま大きく投げ出す。デブりまくった脂肪体がぐちゃと落ちる。
「貴様、剣を向ければ、自分も剣を向けられる、と理解しているよな?あ?」

「姫様、ここは私が、、」
「うむ」
デガラーシ王子に譲る。

「我が国を侵略し平和を侵した罪は大きい。貴様の首で償ってもらおう」
ずばっ!!
脂肪で太く肥大化した豚首は、見事な剣捌きによって切り飛ばされた。


あとから来た本隊がモブ領を占拠し、新たな国境を固めた。
セッティスカヤとサスケは土地を接する3つの領主の邸に転移し、2つの領主にはそれぞれ釘をさした。「軍を向けたら滅ぼすぞ」と。
そのときに本名を名乗り、
「貴様はどちらに付く?」。
双方ともに、「始祖直系に忠誠を誓います!!」と。
残り1人は屑だと名高いゴミだ。何も言わずにいきなり軍駐屯地を破壊。領城を瓦礫にし、
その領内に残る領主の身内共一人残らず首にし、領城瓦礫の前に領主一族全員の首を晒した。
たまたまいた悪徳商会の会頭もついでと、首にし、晒した。
国内の全ての情報は、サスケの一族によって常に把握されていた。悪党どもはその「手のひらの上」にいただけだったのだ。


そうだ、と思い出し、
「お嬢様、南部辺境に近いので、せっかくですから、、」
「おう、挨拶くらいしておこう」
モブ領から2つ南が南部辺境領で海と荒野に接している。厳しい環境なので領主になりたがるコバンザメゲスどもはおらず、まともな、元ゴーロ王国貴族だったこの領主がそのまま継続している。
当然精強な軍を持っている。資力が乏しいので規模は小さい軍だが。

本当の素性を知らないときでも、この老領主はセッテイリアを好ましく思っていた。どこかに始祖の影を感じたのだろうか。
セッテイリアが風を使い、老領主に訪問を伝え、直後、セッティとサスケの2人で転移で訪れた。
案内された、多分この荒野の城で最も上品な部屋であろう客用の間で、セッティスカヤは本名を名乗った。
「お、、おおっ、、、おおおーーーーっ、、、、、」号泣しだした老人。
「よ、、よもや、、いっ生きて始祖様の係累どころか、、直系に、、、、おおおぅーーーー」泣き止まない

しばらくしてやっと落ちついたので、デガラーシとのこと、これからムーノウを滅ぼすことも。

「姫、、」いつの間にかお嬢様呼びが姫になったのか?サスケ、、
サスケは
「デガラーシ王と世代が近いので、もしかしたら、、」
「うむ、、やってみてもよいかもな」
「お主、デガラーシ王を知っているか?」
「、、、はい、存じております。秘密にしておりましたが、、、」
いくぞ、と言い、転移。

デガラーシ王城。和風の城。
風でデガラーシ王に面会を求め、程なく案内がやってきた。

辺境領主は長距離+複数人の転移というものの凄さを知っているが、始祖直系だから、と、さほど驚きもしなかった。
「おおお!よく来たな!よくきてくれた!」
「おお久しいのう、、、見たか!?聞いたか?!直系の姫じゃっ!!」
「おお、我らも明け方救われたばかりじゃ、一兵も傷一つ無く、な。」
「我らの念願も、、やっと、やっとだ、、やっとかなった、叶うんじゃ、、、」
「おう、おう!!」
老人二人、号泣し始めた。

デガラーシ王の側近に
「我らはこれからムーノウ王国を滅亡させてくる。終わったらこちらに顔を出すから、それまで預かっていてくれ」

側近が念の為と、でかい槍を2振り、刀を2振りくれた。2人はムーノウ王城に転移した。



王都上空
風にのせ、王城内部全体どころか、王都全域にも聞こえるようにした。

「我は セッティスカヤ・タバカールダ・ゴーロ・アクヤクノー。ゴーロ王国始祖直系だ。今からムーノウ王国を滅ぼす。今迄悪事を働いてきた者達は、全員死ね。」

サスケは近場。セッティは国内各領地の悪徳領主の領城および軍を遠距離魔法、広域魔法で一度に一瞬で破壊しつくした。


その次の瞬間、サスケは、サスケとセッティをジャングルに送り込ませた転移陣をムーノウ王太子に紹介した者を捕まえてきた。
そいつは喜々としてついてきた。恐怖も何も感じておらず、むしろ喜んで。

セッティの前に立ったそいつから、徐々に瘴気が漏れ出した。
「やっと会えたか、、、我が一族の始祖を滅された恨み、今返してや
「破っつ!!」

そいつが現れてすぐにセッティは九字を唱え印を結びはじめていた。瘴気を感じたから。
話しなんぞ聞く意味なし。滅するのみ。

「うっぎゃぁあああーーーーーー、話くらいくけぇ・・
消えていった。

「ふむ、、始祖がなにかのついでに消した悪魔の子孫かなんか、だったのかな?、、まぁいい。」

だが、ムーノウ王国の始祖ヌスミーノに無味無臭の毒薬を渡し与え、ゴーロ一族を滅ぼす機会を作ったのは、この悪魔だった。
悪魔も時空を超えたのだろうか、、




誰も覚えていないだろうが、セッティとサスケを密林に転移させた当時王太子ゲロは、王城が木っ端微塵になり身寄りが全く無くなったその時、歓楽街で遊んでいた。勿論コバンザメどもが数人ついて。そのコバンザメどもの実家も木っ端微塵になってそいつらも身寄りが全く無くなったことも、奴等は知らない。

「おらー!もっと良い酒もてこーいっ!!」
「お!そこのおねいちゃん!こっちゃ来い!」
「あ?逆らうってのか?王太子様に逆らうってのか?」
「減るもんじゃねーだろ?」

やりたい放題。しかもこいつら今迄金払ったこと無い。

ごっつい傭兵が3人やってきました。元王太子+5匹のコバンザメ、襟首を捕まれ猫のように両手にぶら下げられ首をしめられ目を回しながら、外に放り出された。
外には人だかりができていた。

「てっ!てめぇ!なにしやがんだ!!この方を王太子だと知っての狼藉かっつ!??」

一人が粋がるが、他の5人は人だかりの殺気にびびりまくっている。

傭兵の一人が、あまりの頭の悪さを気の毒そうに言う、
「あのなぁ、、お前ら、もう終わりなんだわ。ムーノウ王国終了しました。おわりです」

「は?何言ってんの?終るわけないじゃん!!」

「見てみろ」
傭兵の指差す方角
いつもはでっかい城が見える。はず、、、?土煙は幾分残っているが、空間が広がっている。

「 セッティスカヤ・タバカールダ・ゴーロ・アクヤクノー様が、ムーノウ王族とそれに群がるゴキどもを全て潰したんだよ今さっき。」

「はあ?セッテイスカヤなんか俺が南のジャングルの中に捨ててきたんだぞ?居るわけなかろうがっつ!!!」
「王都がどうなろうと、各地の領主が黙っていないわ!!すぐさま軍を率いて逆にほろぼしてやるぞ!!」

見ている全員が、方をすくめ両腕のひじから先を方の高さに上げ、手のひらを上に向け、首を振る。

だめだこりゃ、、

「というわけで、だ。お前らは、ここで皆に仕返しされ袋叩きにされるのと、奴隷として売られるの、どっちがいい?」

「「「「「「「貴様ら平民ごときごみどもに

言い終わらないうちに四方からケリ、レンガや棍棒で殴られ、刃物で刺され切られ、、、
またたく間に肉塊というか、服の破片とゲル状の血のかたまりっぽいなかになんか頭つか毛?とかうでとかがある?みたいな。
頭も丁寧に細かくつぶされているので、人数を数えるのは手足の数で数えることができるかな?くらいであった。

言いがかりでやられたなら目も当てられないが、今回は確実に元王太子とその取り巻き連中だと確認が取れているのでおk♪

誰かが魔法を使えたらしく、残骸を全て高熱でもやし切った。



セッティスカヤの両親と兄弟は領地に居る。北部辺境だ。
なのでこの騒ぎを知ったのは、終了後。
サスケ一族の連絡網で知らされた。実はサスケ一族にはリアルタイムで情報が入っていたが、セッティが「特に急いで知らせる必要はない」というので、事後にした。

セッティは「わが父を王、母を王妃として、ここにゴーロ王国建国を宣言する!!」
と勝手に宣言していた。

何も知らない両親がのこのこ出てきたら、全て丸投げされている、という始末である。
まぁサスケの一族が付いているから全く何も問題ないだろう。



半年後。
デガラーシと接する南部辺境と近辺2つの領とデガラーシが「経済軍事連合」を結び、仲良くやっている。間の領主も老人だったので、気が合ったようだ。
南部辺境の港湾開発と荒野の灌漑を国(セッティ親)に行わせ、進めさせた。デガラーシの南部もこの荒野に続いているので参加している。デガラーシも荒野を農地にするのだ。セッティとサスケが猛獣を狩りまくっていた荒野だ。


北部辺境と国境を接する北の国から特使がいそいそやってきて、ゴーロと「同盟」を結んだ。侵略された場合、互いに兵を出して助け合う。侵略する場合は加担しない。というところ。
北は昔ゴーロがいた時代に手痛い敗北を負っていて国家のトラウマになっていた。数十年復活できないほどに。なのでその直系が支配するとなったらもう「戦いにならないようにするには?」と、喧々諤々大変だったそうな。


西側の小国達は、ほぼゴーロの傍系達の国だったので、より一層つながりを深くする、ということになった。



サスケとセッティは父母に変わり、外交を行った。楽しんだ?
周囲の国はほぼ全て過去にゴーロの影響が強く残っており、その伝説も未だ伝えられ広く知られている。
なので、訪問時は大変だ。
ゴーロ直系というだけでも、今迄途絶えていたと伝えられていたのだから大変なのだが、それが
「たった二人でムーノウ王国を全滅させた英雄伝説」の本人達なのだから。

西の小国達、北の大国、なども内政が腐り始めていたが、セッティ達の影響で膿が取り除かれ始めた。殆どが強硬策で、セッティ達が訪問したときに合わせ一気に潰した。ゆっくりやると膿は他国逃げ他国を汚染するので「一気に」とゴーロ王国からの「指導」があったのだ。勿論大国と言えど北もそれに従い、宰相まで首を晒した。



「なーんか、暇になったのう?」
「姫様、密林以前と変わらないか、それより少し忙しいくらいだと思いますが、、、」

「なんかもの足りぬ、、、魔法でドン!は、つまらんものだったのう、槍も剣も全く使わなかった」
「始祖様達が武技好きなのがわかる気がします」
「まったくだ」

「姫様、お言葉遣いを以前のようになさらないのですか?」
「はは、あれは、、(ゴーロ)仕様だ。今はゴーロ仕様なので、な」





デガラーシ王国との国境付近の森林で、黒い人影が森の中を飛び回り、危険すぎるレベルの猛獣を次々に倒していくのを、マタギ達がたまに目にするようになった。
休憩する彼らと話した、とホラのようなことを言う若いマタギによると、まだ年若い女性と初老の紳士っぽい者だったそうだ。温かいレモン葉茶を馳走してもらったそうな。その後、消えるようにいなくなったと。

「天狗様だ」
「天狗様親子じゃ」

デガラーシには天狗伝説があった。なのでそう思われるのも必然だろう。
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