第七話 わけがわからないよ

文字数 1,098文字

   
 ……あれ?
 先ほど私が「『ウイルス』とは、お店で売っているポーションのこと」と言った時、マドック先生は「それは違う」という感じで苦笑したのですが……。
 今ハッキリ「ポーションとして店で販売」と、マドック先生は言いました。
 では、やはりポーションのことなのですか……?

 混乱が私の顔に出たのを見て、マドック先生の『苦笑』が『微笑』に変わりました。
「お嬢ちゃん、『わけがわからないよ』って感じだな。まるで、俺の元の世界で有名な、白いマスコットキャラみたいだ」
「はあ、どうも」
 それこそ、よくわかりませんが……。マスコットキャラに例えられたのですから、おそらく「可愛い」と言われているのでしょう。
 童顔ですからね、私。褒め言葉やお世辞で、そう言われることも結構あります。
「それで、お嬢ちゃん。わからないのは、ウイルスのことだろう?」
「ええ、そうです」
 結局『ウイルス』とは、特殊なポーションのことなのか、そうではないのか。まず、そこを教えてもらわないと困ります。
「まあ、ポーションをウイルスだと勘違いしていたレベルでは……。いきなり組換えウイルスの話をされても、意味不明だよなあ」
 あれ?
 それを『勘違い』と言い切るということは。
 もう「『ウイルス』とは特殊なポーションのことではない」のは当然という前提で、話が進んでいますね。
 まあ、いいでしょう。
 そこまでは了解しました、と示す意味で、私は大きく頷きました。

「じゃあウイルスって何なんだ、というのが、まず最初にお嬢ちゃんの知りたいことだろうが……。というより、そこに興味がないようでは、俺の手伝いなんて無理だから、うちの店では働けんよなあ」
「大丈夫です! 興味あります!」
 慌てて、そんな言葉が私の口から飛び出しました。
 でも、これだけでは、とってつけたような感じですから……。
「マドック先生は『冒険者のステータスに関わる』云々って言いましたよね。つまり人間の身体能力に関わること、要するに人間の医学的な構造に関わる話ですよね……?」
 医療系の知識のあるお手伝いを募集という話と、聞いたばかりの情報とを継ぎ合わせると、そうした推測が導き出されます。
 将来的に私が回復魔法を活かした医療士になりたいという話も、紹介状には書いてあったはず。この言い方ならば、本当に私が「興味ある」と、マドック先生にも伝わるでしょう。
「おっ、お嬢ちゃん! 頭の回転は速そうだな!」
 褒められました。素直に、嬉しいと感じます。もしかすると、少し顔がニヤけたかもしれません。
「うむ、これなら期待できそうだ。俺の話にも、しっかりついてきてくれるだろう。では……」
   
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