現実はジェラートに同じ

文字数 777文字

 昼食を終えた後、瀬戸と風見は茶菓子を買いに行くと言って街へ出て行き、武寿賀は望月に少し留守を頼むと告げて何処かへ向かった。留守番役となった望月は相棒の草薙と早々に庁舎へと戻り、天野もまた庁舎へと戻るつもりであった。しかし、支給されたスマートフォンの感度があまり良くない事が気に懸かり、庁舎近くでコンビニを探そうと、寄り道をしていた。
「あのー……さっきの男の人って」
鵺田(ぬえだ)さんですか?」
「そんな名前なんだ……それで、その人って」
「あのお店の料理人の方です。あの人もニフテリザで、時々お話を聞くんです」
 情報提供者、あるいは、スパイなのだろうかと天野は頷いた。
「それにしても……獲夢(えるむ)ちゃん、どうしたのかな……ジェラート食べなかったり、豆乳のココアにしたり、なんだかいつもと様子が違うんです……天野さんはどう思います?」
「え……」
 どう思うかと問われても、全く知らない相手の事にどう答えるべきか、天野は困惑した。
「うーん……冷たい物を控えるって事は、女の人なら時々ある事だけど……赤ちゃんかなぁ……」
「え?」
「ほら、妊娠すると体を冷やす物とか、刺激物は控えるから」
「んー……」
 醍醐はよく分からないといった様子で首を傾げる。
 そうしていると、天野が探していたコンビニが見つかり、二人は店の中に入る。
 スマートフォン用のタッチペンを探しながら、天野はふと考えた。
 鵺田から聞いた情報を元に、これから何をするのだろうか、と。
 少なくとも、空飛ぶ異形の犯罪は、相談内容に応じて行政機関に赴いたり、現場へ出向いて問題の解決に向けた議論をする様な案件ではない。
 ――まさか、な。
 天野は内心で首を振った。
 此処は調査係であり、特別機動捜査隊ではない。現地調査を行ったとしても、捕り物をする事は無いだろう、と。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み