AC7.11

文字数 1,175文字

 それからも結局は戻っては入って帰っては行ってをくりかえし、十三回目のふりだしでとうとう精根尽き果てて、崩れ落ちるように地べたに座りこんだ。
 ダメだ、これ以上は続けられない。単純に二択でハズレを引くこともそうだけど、それを確率がゼロではないとはいえ十三……十二回も連続でハズして、その度にここを目にしこれが現実じゃないという思いがどんどん強くなっていって、さらに二択に行くまでの道中も結局最後で足止めされるようになっているからやる必要がなく、これまでのような一本道で十分なのに無駄なことさせ嘲笑しているようで、とにかく色んなことが自分を取り巻いて煽る殴る蹴るの猛攻を浴びせかけてくる。もう完全に打ちのめされてしまった。
 そしてその打ちのめされた背中に、彼女のあの言葉が――「諦めなければ必ず」が重くのしかかってくる。…………
 崩れ落ちてから長い時間がながれた。その間、ずっと静かだった。その間、心も頭も体も何一つ動かなかった。それなのに、やる意味を見出せないのにそろそろなにかしないと、と何かが急かしてくる。自分のなかのどこにそんな力がありあまっているのか不思議に思うけど、だからといって動いてくれるわけではない。
「ずいぶんお疲れのようですが、大丈夫ですか?」
 陰鬱とした沈黙の中、心配そうにする彼女の声が聞こえてきた。長いこと保っていた沈黙を破り、久しぶりに口をひらいたとおもったらそんなことを聞いてきた。聞かなくてもわかっているくせに、と心の中では答えて
「大丈夫です……少し休憩してただけです」と口では答えた。
 それに対して彼女は
「そうですか……」となんだか煮え切らない返事をし、黙った。どうやらなにか言うべきかどうか迷っているようだけど……。
 彼女のその態度に興味をそそられて邪魔をしないように待った。ところが彼女は何も言わない。もう少し待ってみたもののいっこうに話す気配がないので、しびれを切らして自分のほうからたずねた。
「……なにかあるんですか」
「あ、いえ……なんでもないです。すみません、紛らわしいことをして」
「そうですか……」はぐらかしたと思ったが、追求はしなかった。
 そのせいでふたたび気まずい沈黙が生まれてしまったが、自分はそれを口実にテストを再開することにした。それも前は彼女が話しかけてくることを期待したものの、いざ実際に心配されてしかも妙な態度をとられそれに関心を寄せていると、本当に彼女の手のひらで転がされているようで気に入らないから。ものすごく子どもっぽいことは自覚している、でもこのまま終わるのよりは理由がなんであれ続けられるほうがいいはず、と自分に言い聞かせわざと「さて、と」と声に出し起き上がり、おしりをはたいて扉へ向かった。とはいえ希望なんかもはや欠片もありはしない。からっぽのまま深い深い暗闇の中へと身を投じた。
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