3月ウサギ装飾曲《アラベスク》

文字数 1,088文字


───本質なんて知りたくない。

アリスとおなじなのは母子家庭かなぁ。俺もそうだった。でも違う。俺は目の上のこぶだったんだ。お袋は取っ替え引っ替え男を変えていた。親父に浮気が原因で離婚された。懲りるわけない。理解もせずに、続けていた。俺にはそんなお袋の気持ちがわからなかった。分かりたくもなかったんだ、あの頃は。
帽子屋とおなじなのは、東国出身かな。言ってないけど。

「俺のこと、きらいなの? 」

幼い俺は、わかってなくて聞いた。無言の肯定が帰ってきた。

「なんでいるの! どっか行ってなさいって言ったでしょ! 」

男を連れ込むときは決まって追い出される。うっかり寝ていたりすると、鉢合わせるから怒鳴られた。すぐに変えるんだから、いいじゃないか。麻痺し始めた俺は、反抗的になっていった。

「つまんねぇ……」

気がついたら、同じことし始めていた。お袋の見ている世界を知りたかったのかもしれない。お袋譲りのこのキレイな顔は得だった。ナンパしなくても、女は寄ってきた。最初は気持ち悪かった。お袋と同じ女。そうとしか思えない。

「お袋、さみしかったんだな」

何となく、そう思った。親父がなんでお袋に俺を押し付けたかはわからない。未だに。取り敢えず、一回帰ることにした。そこしかないし。

「変わってないんだろうなぁ」

部屋は真っ暗で、引き払ったんじゃないかって思ったけど、家具はそのまま。布団は敷きっぱなし。だらしないままだ。誰か寝ていた。いや、わかるべきだ。そこで寝ているのは一人しかいないって。

でも、そこにいたのは動かなくなったお袋。

何か病気でももらったのか、それっぼい薬があった。そうまでして、続ける意味ってなんだろうねぇ、俺にはわかんねぇや。女性の方が、男より体がやわだって知らなかったから。

だから、話とかしてみることにした。

ベッドの中じゃ皆素直にしゃべる。体だけじゃわかんないってわかってるさ、でも。一人のすべてを抱えられるほど、俺は出来た人間じゃねぇってわかってるから。悪いけど、女性を知るためにいい顔するようになった。笑ってれば、相手も笑えるだろ? 俺バカだから、何も知らないから、手段がこれしかない。難しい話もわからない。女性が喜ぶ言葉模索して、完璧にした。

まさか、大昔に死んだ女性に見透かされるなんてなぁ。だけど、本気で喜ばせたい気持ちだけはホント。

お袋が幸せだったかわからないから、幸せ探ししてるの。未成年は法に触れるし、子どもだから成人女性がいいよねぇ。


さぁ、レディ。
今日は君と語り合いたいなぁ───。
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