顔を上げるとブロンドの白人女性が私のiPhoneを手に持っていた

文字数 929文字

ホテルに帰る途中、コンビニエンスストアでビールを買った。

部屋に入り、シャワーを浴び、ベッドに腰掛けた。

今日一日の出来事を思い返していた。

彼女との別れ際のところまで思い返し、ビールを一気に飲んだ。

私はそのまま仰向けに寝転び、深い眠りに落ちた。


翌朝、私はチムサァチョイのペニンシュラホテルの近くまで来ていた。
昨日の彼女の話では今日の午前中に彼女はこのホテルのティーラウンジに寄ってから帰国すると聞いていたからだ。

ブティックが並ぶフロアをぐるぐると歩き回り、落ち着かない時間を過ごした。

ロビーを抜け、ティーラウンジに向かおうとした時、彼女がティーラウンジに入っていくのが見えた。

私は、しばらくその場に立ち止まったが、踵を返し、ホテルをあとにした。

ヴィクトリアハーバーの海底トンネルを走る地下鉄の中で、私はまだくよくよと落ち込んでいた。

嫌われたくないのか、格好をつけたいのかわからなかったが、私はひょっとすると恋愛につながるであろうチャンスを逃すことが今までも多かった。

トンネルを出て地上に抜けると、香港島のアドミラルティ駅で降り、山頂から香港を一望できる、ヴィクトリアピークに向かった。

ケーブルカー乗り場に着くと、そこは世界中から来た観光客でごった返していた。

香港観光の目玉的なところであるので仕方ないのだが、あまりの混雑具合に私はヴィクトリアピークに登るのを諦めた。

Google mapを見ると近くに香港パークという公園があった。

公園の中は香港の喧騒から離れた静かなところで、緑も多く気持ちの良いところであった。

地元の人達もくつろいだ時間を過ごしている。
携帯ラジオのスピーカーから中華風の音楽を鳴らしながら地元の老人がランニングしていた。

しばらく歩くと、噴水のある広場に出た。香港の高層ビルも見えて、我ながらなかなかいい場所を見つけた。

日陰のあるベンチに腰掛け、ペットボトルに入ったミネラルウォーターを飲んだ。

風がそよぎ、鳥のさえずりが聞こえる。

私はまどろんでいるうちに、そのままベンチで居眠りをしていた。

「エクスキューズミー?」

女性の声で目を覚ました。

顔を上げると、30歳前後くらいの、ブロンドの髪を後ろに束ねた白人の女性が、私のiPhoneを手に持っていた。
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