ラムダの言うことにゃ。

文字数 1,816文字

どうにかラムダはメモリーを走査し終えました。

マホラの心を癒すアイデアが浮かんだ様です。
マホラの両親は、マホラが心配。
でも食べ物は少ない。

この辺には動物も少ない。
ナノマシンは……小動物を。
……小動物を?
小さなうさぎとかだよね?

……ナノマシンって何?
持ち前の好奇心から泣き顔が晴れるマホラ。

一方でラムダの生態コンピュータは混乱していた。

ナノマシンは小動物や昆虫を食べる。

限度を超えれば、必要の無いと判断した人間でも食べてしまう。

首都防衛のために取られた非人道的措置。

それは、ラムダにも組み込まれていたからだ。

ラムダは刹那に電子脳だけの頃を思い出す。

電源が無くなり、太陽光も粉塵で遮られた。

従って、その非人道的措置を採用した自分を思う。

生態だからこそ迷う。無機質な電子脳だけならば……。
マホラ、元気だえらいね。

ナノマシンは「機械の森」の銀色植物。

アレとかアレとかアレとかアレとかアレとか……
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……
ラムダは動揺をしていたのだ。
……ふふっ……ラムダって面白いね。
ありがとうマホラ。

両親はマホラが心配だから、ケンカ。
マホラは大切、大事、重要、貴重。
……マホラだけが大切なの?
マホラの優しさがマホラを苦しめていたのだ。
マホラ賢い。みんな大切。
マホラだけじゃない。

両親も、村長も彼も彼女も大切!
ラムダに胃や腸があったなら、それは痛みを感じていただろう。

そう、それが意味するのは……。
……みんなが大切なら、食べ物はみんなで分けなきゃ。

……やっぱり食べ物のせいでケンカがあるんだね。

そうでしょ、ラムダ?
食べ物大切。
人間はもっと大切。
ラムダは止めていた思考回路を復活させようかと悩んだ。

優しくて正義になれる可能性のある人物に、とある提案をする。

そんな何度も試しては失敗した自動思考を。

新生大和王朝をも作り出してしまったあの禁忌のアイデアを。

マホラならば出来るかもしれないと思ったのだ。

さて。

第19村のエリアはラムダにとって未開である。

村の人々は「機械の森」を避けた。

それは、危険な可能性のあるものに近づかなければ損失は無いだろうというもの。

高熱や低温、警戒色や火を恐れる原始的なロジック。

ラムダは「未開の地」に希望を見出した。

それは、危険だが有効利用できる物は利用するという利益あるもの。

炎や雷、核融合、核分裂を愛する歪んでいて正しいロジック。

その禁忌の炎のイメージが、ラムダの発言を止めた。
……どうしたの、ラムダ?

……あなたもお腹が空いたの?
ラムダは薄い太陽光を食べる。

少しだけ待つ。それでラムダ元気。
「ラムダ、いいかい?
 人間は時に不合理で非論理的で自己中心的になるだろう」

「長官。マザーテレサがお好きで?」

「いいから、最後まで話をさせろよ、愉快な奴め」

「もちろんです、長官。どうぞ続きを」

「そんな歪んだ思考を場合によっては君も持つだろう。
 そんな時はどうしたらいいと思うかい?」

「生態脳になる可能性についての言及ですよね?
 その場合は、電子脳を優位にして論理性を保ちます」

「それは正しい。
 が、正し過ぎるんだよ」

「『正しい意見』は間違っていますか?」

「なあ、人間らしいだろう?」

「ええ、とっても」

「割り切れない時は、許すんだ。
 他人も自分もだよ」

「敵の駆逐艦を今月だけで10隻沈めた方の発言とは思えません」

「俺も割り切れていないんだろうよ。
 だから、過去の名言にすがる」

「お酒が足りていませんからね、ここにも」

「全くだ。
 お前が羨ましいよ」

「ありがとうございます」

「褒めてるんじゃないぞ?」

「いいえ、名言に関してです」

「あっはっはっは!
 全く愉快な奴だよ、お前は!」
ソーラーセル展開・起動完了。

『現状の太陽光で約3時間の活動が可能です。

 YOTUBAの決戦兵器に全てお任せください』
勝手に甘言にガムシロップをかけたような音声が流れる。

ラムダは生態になり生き延びる代わりに、完全性を捨てた。

幸いなのは。
……???
マホラが旧世界の言語を理解できない事。
マホラ。マホラ、ラムダの話聞く。

マホラ行う、やる、する、頑張る。

食べ物増える、方法がラムダの中に!
……ほ、本当?
本当! 本当! 本当!

ラムダの中にある! ある!
ラムダは自分を許したのだ。
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登場人物紹介

マホラ

19番村の少女。
好奇心が旺盛で、機械の森へ行きたくて仕方がない。
2098年の新生大和王朝の迫害から逃れてきた一族の末裔。

好奇心が旺盛で、誰にでも優しいがどこか暗い印象を持っている。
それは両親に関係しているようだ……。

ラムダ

2068年 第三次世界大戦末期に日本国軍需省が作った決戦兵器。
生体をベースにしているため、山川で小型の動物などを捕食して生きながらえた。

あくまで日本国軍需省の長官の命令で動く兵器であるため、現在は待機状態である。
原則的にはロボット三原則を守り、敵と見做す存在以外には人道的である。


正式名称「YOTUBA35式生体可変決戦兵器λM3F5M19」

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