第50話 久坂の弟子入り
文字数 645文字
明けて八月。
久坂は寅次郎の弟子となって彼の塾に入門した。
寅次郎はこの時久保から正式に塾を継承して、塾の名を「松下村塾」と改めていた。
「あの玄機殿の弟である玄瑞殿がよもや僕の塾に入ってくれるとは、全く喜ばしい限りじゃ」
自身の幽室に挨拶にやって来た玄瑞に対して寅次郎がうれしそうにしている。
「文の上とはいえ数々の無礼を申し上げた事、謹んでお詫び申し上げます。これからは貴方様を先生とお呼び致しまする。ぜひ愚かな私にいろいろなことをご教授頂ければと存じます」
寅次郎に対して玄瑞は土下座をしながら師弟の礼をとった。
「そねー堅苦しいあいさつをせんでもええ。君は僕から何かを学びたいと思うちょるみたいじゃが、僕の方が逆に君からいろいろな事を学びたいくらいじゃ。僕がこの塾の塾主になったのも、世にいる様々な人から様々なことを学ぶためとゆうても過言ではないからの」
寅次郎は笑いながら言うと玄瑞の肩に手をぽんと置く。
「ありがたき幸せでございます。この久坂玄瑞、これからは貴方様のことを先生とお呼びし、お慕い申し上げる所存であります」
玄瑞は相変わらず土下座したままの状態であり、すっかり恐縮しきっていたためか、顔を上げることもできなかった。
「本当に誠実じゃのう、久坂君は。張良を臣として迎えたときの漢の高祖もこねーな気分じゃったのじゃろうかのう」
礼儀正しくしている久坂を見て寅次郎はますますうれしい気分になる。
寅次郎はこの時、自身の幽室生活にまた新たな光が差し込んだ実感を得ていた。
久坂は寅次郎の弟子となって彼の塾に入門した。
寅次郎はこの時久保から正式に塾を継承して、塾の名を「松下村塾」と改めていた。
「あの玄機殿の弟である玄瑞殿がよもや僕の塾に入ってくれるとは、全く喜ばしい限りじゃ」
自身の幽室に挨拶にやって来た玄瑞に対して寅次郎がうれしそうにしている。
「文の上とはいえ数々の無礼を申し上げた事、謹んでお詫び申し上げます。これからは貴方様を先生とお呼び致しまする。ぜひ愚かな私にいろいろなことをご教授頂ければと存じます」
寅次郎に対して玄瑞は土下座をしながら師弟の礼をとった。
「そねー堅苦しいあいさつをせんでもええ。君は僕から何かを学びたいと思うちょるみたいじゃが、僕の方が逆に君からいろいろな事を学びたいくらいじゃ。僕がこの塾の塾主になったのも、世にいる様々な人から様々なことを学ぶためとゆうても過言ではないからの」
寅次郎は笑いながら言うと玄瑞の肩に手をぽんと置く。
「ありがたき幸せでございます。この久坂玄瑞、これからは貴方様のことを先生とお呼びし、お慕い申し上げる所存であります」
玄瑞は相変わらず土下座したままの状態であり、すっかり恐縮しきっていたためか、顔を上げることもできなかった。
「本当に誠実じゃのう、久坂君は。張良を臣として迎えたときの漢の高祖もこねーな気分じゃったのじゃろうかのう」
礼儀正しくしている久坂を見て寅次郎はますますうれしい気分になる。
寅次郎はこの時、自身の幽室生活にまた新たな光が差し込んだ実感を得ていた。