第三話 フェイスブック・デビュー

文字数 887文字

 裕也は、昔からハキハキして物怖じしない子だった。言葉は乱暴だが、私が寂しくないのかと気遣っている事は十分わかった。だから私は逆らわずに、裕也にスマホを手渡した。フェイスブックとやらが、どういうものだかさっぱりわからなかったが。

「ほい、できたよ! 写真がいるんだけどさ、なんかない? 違う違う、おじいちゃんの顔じゃなくてもいいって。あっそうだ、ミイの写真にしようよ、かわいいし」

 そう言うと裕也は、寝ているミイをスマホでカシャッと撮った。ペンネームのような物が必要だというので、ミイパパとしておいた。まあ、実際にはミイ爺さんと言ったところだが。
 
 こうして私は、見事フェイスブック・デビューを果たした。

 裕也は私に使い方についてのレクチャーをし、大学の見学会も無事済ませて自宅に戻っていった。また暇になった私は、なんとなくフェイスブックを開いてみた。ミイのかわいい寝顔が、私のシンボルマーク? として出てくる。

 それを見ながら、裕也に教わったように、とりあえず検索で「猫 好き」と入れてみた。すると「猫好きが集まるグループ」といったものがいくつか出てきた。その内の一つを適当に開いてみると、かわいい猫の写真がたくさん並んでいて、私は思わず微笑んだ。どうせ毎日やる事もないし、ここに参加してみるか。

 私は早速、ミイの写真を撮って投稿してみた。するとすぐに、「わあー、アビシニアンですよね、かわいーうちの子と同じです!」というコメントが付いた。なるほど、その人のマークも茶色っぽい短毛の猫、エジプト原産のアビシニアンだった。
初めはコメント上の返信でやり取りしていたのだが、毎日一言ふたことの交流をしている内になんとなく仲良くなり、やがて個人メッセージで猫以外の話もするようになった。とは言え、テレビの話とか、昨日食べた物とか、他愛のないどうでもいい話であったが。

 相手が私の顔どころか年さえ知らない(個人情報だからと、裕也が相手に見えない設定にしてくれた)のをこれ幸いと、おそらく自分よりずいぶん若いであろう(こちらも年齢は伏せてあった)にゃあごさんとの、気軽な筆談を楽しんだ。
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