第71話

文字数 381文字

 貴大さんが、すっと目を細めて俺をみた。

「確かに厄介ですね」

「俺の姪っ子だからな、簡単にはいかないよ? 」

 そういって貴大さんは得意のウィンクをして、まあ頑張れと肩を叩いてきた。雫があーあ、とカウンターに頬杖をついて呟いた。

「いいなあ真琴。私も奪い合いされたい!」

「あ、じゃあ俺が奪ってあげようか?」

 その場の空気をなごませるように、 いたずらっぽい表情でそういう貴大さんをまじまじと見つめたあと、雫は白い頬を微かに紅くして、口を尖らせた。

「いいです。本気じゃなきゃ、奪ってほしくないし」

「あれ、酷いな。俺の本気、伝わらなかった?」

貴大さんは、雫の気持ちをわかっているのか、いないのか。そんなふうにからかわれて、雫も拗ねながら嬉しそうに見える。2人の会話をぼんやり聞きながらため息をつく。色々な感情が交差するこの場所から、俺もまた、真琴のことを考えていた。



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