第14話:サブプライムからリーマンショックへ

文字数 1,615文字

 同じ頃、米国で、低所得者向け高金利型「サブプライム」住宅ローンの焦げ付きが多発。これをきっかけに世界の金融市場が大きく動揺した。リスクに対する警戒感が急速に高まり、8月以降、信用の収縮、株価急落、ドル安などが一気に加速した。ローン債権を証券化した金融商品に投資していたヘッジファンドや金融機関は相場の急落で巨額の損失を計上。

 資金繰り難に直面し、一部は破たんに追い込まれた。米国や欧州の中央銀行は市場に巨額の資金を供給。米国は利下げ、英国は住宅ローン会社への緊急融資に踏み込み、事態の沈静化を図ったが、2008年の景気見通しは米国、欧州、日本いずれも下方修正された。その頃、ニューヨーク商業取引所の原油先物相場が急騰し、1バレル、100ドルの大台に迫った。

 原油相場は2007年11月20日に一時99.29ドルと史上最高値を更新。その後も高止まりが続いた。中国などの需要増大も原油高の原因だが、むしろ、世界的な低金利を背景にしたカネ余りの結果、投機的な買いが相場を押し上げたとみられる。やがて2008年を迎えた2008年1月、中国製冷凍ギョーザを食べた千葉、兵庫両県の3家族10人が中毒症状を訴えた。

 そのうち女児が一時意識不明になったことが1月末に発覚。日本で農薬使用が禁じられている有機リン系殺虫剤メタミドホスが検出された。製造元は中国河北省の食品会社「天洋食品」。高濃度だった事から人為的混入の疑いが強まり、日中の警察当局が捜査を開始した。日本側は、メタミドホスが袋の内側から検出された上、成分に不純物が含まれておいた。

 そのため、日本で使われている高純度の試薬用とは異なるとして国内の混入を否定。中国側は国内での混入可能性は極めて低いと主張した。しかし、中国で製造元関係者が事件後の回収品を食べ中毒症状を起こした事が8月に判明。中国の公安当局は同社工場での混入を視野に捜査を進めている。しかし、その後も原因については、わからなかった。

 2008年5月12日、中国四川省を震源とするマグニチュード8.0の大地震が発生。死者・行方不明者が8万人超の大惨事となり、北京五輪を控えた胡錦濤指導部に大きな衝撃を与えた。最も大きな被害を受けたのは、当時授業中だった子供らで、校舎倒壊で6500人以上が死亡。背景には校舎建設費を安く抑えるための手抜き工事という根深い問題が潜んでいた。

温家宝首相が迅速に被災地で陣頭指揮を執ったほか、震災直後には内外メディアの自由な取材を認めるなど異例の政府の対応に注目が集まった。さらに日本の国際緊急援助隊が他国に先駆けて駆け付け、中国の対日感情好転につながった。政府は復興に全力を挙げているが、被災地が負った傷跡は大きい。

 米国の住宅バブルが崩壊し低所得者向け高金利型「サブプライム」住宅ローンの焦げ付きが多発したことで、米欧金融機関の経営が急速に悪化、世界的な金融危機に発展した。2008年9月には、リーマン・ブラザーズの経営破綻を受け、危機が深刻化。議会で金融安定化法案が否決されると米株価が暴落しダウ平均株価指数は史上最大の下落幅777ドルを記録。

 米国発の金融不安が世界中に拡大、東京でも株価が暴落。日経平均株価は10月27日、終値ではバブル後最安値となる7162円90銭まで下落。1982年10月以来およそ26年ぶりの低水準だった。昨年末からの下落率は最大53%超に達し、企業活動や個人消費の冷え込みに拍車を掛けた。9月以降は米金融大手リーマン・ブラザーズの倒産で株の投げ売りが加速。

 中でも10月16日は欧米の大手金融機関の連鎖倒産懸念から11.4%安と1953年のスターリン暴落を超える下げ率を記録。87年のブラックマンデーの14.9%安に次ぐ過去2番目の急落となった。政府は空売り規制など緊急対策を発動したが、日米景気の先行き不安は根強く、年末を前に株価は不安定な動きを続けている。
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