第48話  その人は目の前に

エピソード文字数 2,405文字

 ※


 じいじが離脱し、クル竹さんが厨房に回る事となったが、ここは踏ん張らねば申し訳ない。

 というわけで楓蓮はとてもやる気だった。



 そんな時、厨房の奥から現れたのは白竹ママだ。

 しかも、どう言う訳か、ナース服での登場である。

 

みんな待たせたわねっ! ママが来たからにはもう安心よっ!

もう楽勝だわっ! 完全勝利よっ!

いいから手伝ってよ! 誰も休憩行ってないんだから!
 クル竹さんの容赦ない突っ込みだったが、ママは顔色一つ変えずにキラキラお目目でクルクル回り出すと。

私に任せるのよっ! いってらっしゃい。

しばしの休憩をっ! 堪能してくるのよっ!

 今日はまともに動いてるママだった。

 まぁこんな日にもクルクル回り続けてたら、俺も流石に手が出そうだぜ。


 

 まずは一番長く働いてる紫苑さんが行くと、次は魔樹が更衣室に入っていく。


あふぅ……今日はキツいのでし。

 あいつもハードだったのか、足元が千鳥足っぽくなってやがる。


 入れ違いに紫苑さんが出てくると「よっしゃ」と気合を入れてやがる。

楓蓮さん龍子さん。どちらか休憩どうぞ。ウチやっておきますから
 頑張りすぎだろ紫苑さん。そこまでしなくていいのに。
楓蓮さんどうぞ。こいつと二人でやっておきますんで。

 う~ん。俺も活躍したい所ではあるが、二人の熱い視線に「行って来ます」と言うしかなかった。



 ※


 更衣室に入ると、まだ休憩中の魔樹がスマホを眺めていた。

 俺を確認するなり笑顔を見せてくれる。


どうしたんです? 何だか今日はえらく機嫌が良さそうで

 と言うのも、魔樹らしからぬ赤ら顔で、スマホを見ながらデヘヘ顔になっているからだ。


 まぁ、これはクネ魔樹なので、あんまり突っ込むのもどうかと思うが、あまりにも酷い顔になってるからな。

うん。今日お友達と遊んだんです。とっても楽しかった

 お前がそう言う風に言うなんてな。

 蓮じゃまず聞けない情報に、俺までデレ顔になっちまいそうだ。



 魔樹はスマホに夢中だな。なので俺も自分のスマホを確認してみると……

 蓮のラインに白竹さんの伝言が届いていた。



今日は本当に楽しかったです。黒澤くんとはあまり喋れなかったけど、今度また遊びましょうね

 その内容を見た瞬間、思わず目を閉じていた。  

 

 嬉しい。その一言に尽きる。



 俺だって楽しかったし、是非また遊びたいですね。



 おっと。

 こんな返事もらっておいて、すぐに返信しなければ。 




 目の前にいる魔樹はまだスマホに夢中っぽいので、早速白竹さんに返信していた。

こちらこそ是非よろしくお願いします。

俺も白竹さんと同じく、この集まりは大事にしたいと思ってます

 もっと長文を書きそうだったが、あんまり重すぎるのもどうかと思い、ここまでにしておいて……送信。



 っていうか白竹さん。あなたは今まさに厨房で働いているのに、俺にライン出来るなんて凄いな。


 しかもすぐ既読になっちまったし。


あっ……
どうしたのです?
う、ううん。何でもないの……

何でもないの。ですか……

もはやクネ魔樹には何も言うまい。そう思っていたが……

黒澤くん……ありがとぉ。美優はとっても嬉しいですっ!


私もみんなと……ずっと仲良くありたいよ

 魔樹は両手でスマホを持ち、胸に当てた。そして目を閉じ、天井を見上げる。


 まるでその仕草は……女の子そのもので、思わず白竹さんと被って見えるのだった。

 何だ? なんなんだ?

 魔樹の頭の中がどこでどうなって、そんな顔になるんだよ。

あひっ、のんびりし過ぎちゃった! いかにゃいと!

 魔樹はそういいながら立ち上がると、すっげークネクネしまくってるぞ!

 「おしゃきです!」 と一声俺に掛けると、スタタタっと更衣室から出て行くのであった。

 そうだっ! 

 今の内に染谷くんにも連絡しておこう。


   


今日は楽しかった。またみんなで遊ぼうね。

またゲーセン行きたいです

 彼の場合は、あまり真摯に書くと変な男だと思われそうだし、短文にしておこうか。



 今日は楽しかった。それだけでも伝わればいいだろうし……

 でもな……もうちょい捻りも欲しい所だが。



 と、そのタイミングで更衣室のドアの開く音がした。


うぃっす楓蓮さん
おいっす龍子さん

 更衣室に入って来たのは龍子さんだ。

 咄嗟に言われたういっすのノリに、おいっすで返したが。


 こういうノリで喋られると、妙に落ち着く楓蓮であった。

ラインですか?
そ、そです

誰だろうか? 男だったら瞬殺するんだが。

 ささっと画面を隠す。

 これがバレたら俺の人生終わっちまうからな。絶対見られてはいけない。



 しかも勢い余って送信ボタンを押していたらしい。

 短文だが、あの文章を染谷くんに送ってしまった




 俺がラインに夢中になっていると、龍子さんもスマホを取り出した。




おっと。黒澤くんからか。

確かに。今日は色々と楽しかったし返事せねば。


ラインなら龍子になっても連絡できるからありがたい。

 龍子さんがスマホを見てる。その間にもう一回染谷くんに送ろうとしたが……
もちろん。あの集まりは大事にしよう
 という返事が速攻返って来たのだった。
うん。みんなで仲良くやろうね。これからもよろしくっ!

 そう送り返すと……劇画風のリーゼントヤンキーが中指を立てて「押忍」と言ってるスタンプが届いてきた。


 思わず笑いそうになったが堪える。

 君はそのスタンプ好きだな。

楓蓮さん。どうしたんですか? ふにゃけてますよ
なっ! しまった。こっ恥ずかしい顔見られちまった。
わ、私もう行かないと……龍子さん。ゆっくりしてくださいね

うぉおおお~~~~!


誰だ?  誰なんだよ!


ラインの相手は誰なんだっつーの!


あの楓蓮さんを……こんなふにゃけた顔にする奴は許せねぇ!


 俺はささっと更衣室を後にすると、頭を切り替える。



 さぁて。今日はさっさとバイトを終わらせて、みんなとラインのやりとりをしてみようかな。

――――――――――――――――



次回。まゆちんとさゆりん。

 

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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