とある日の会議

文字数 1,043文字

 遅れて入った会議室の中は、どこかで見たことある、サングラスをかけた司令官(某アニメの主人公の父親)だらけだった。
「待って、何この光景」
 皆、考えることは同じらしい。頑張ったんだな、コスプレ班。いや、感心してる場合じゃないけど。
「地下の円卓で会議と聞いて、一度でいいからやりたかった」
 なるほど、分かる。しかも、そのポーズで言うか。
「一人くらい、『SOUND ONLY』でも……。あ、逆か」
 せめて、議長だけでもやってほしかったよね。
「猫好きさん、誰か白衣着ない?」
 あれか、博士か?
「それなら、Yシャツ着た気弱な中学生役も」
 それは主人公だね。
「おっと、謎めいた転校生も追加で」
「美少年が務まる人、この中にいると思う?」
 とうとうツッコミが口から出てしまった。好きなキャラだけに、これは黙っていられない。
 一瞬の沈黙。
「年齢、体格、その他に無理がある」
「地下全体探せばいそうだけどね~」
「美少年は信仰対象」
 おお、見事に意見が一致した。妙なところで発揮される団結力。
「はい、皆さんの意見が一致したところで、そろそろ今日の本題に移るよ」
 その他、様々な意見が出たものの、議長が二回手を叩く。趣味について一度しゃべり始めると止まらない。それがオタクだ。

「え~、まずはこちらの画像をご覧ください」
 資料が壁面のスクリーンに写し出される。おお~、という感嘆のため息が周囲からもれる。なんか、それっぽくなってきた。
「皆さんご存じのとおり、先日、地上で発見された巨大生物です。特定班の予想では爬虫類がベースとみられています」
 ネットの情報によると、すでに被害が出始めているらしい。地上のことなんて、割りとどうでもいいが。
「我々の任務は、地上の『一般人』にバレずに、いかにしてこいつを捕獲、あるいは討伐するかだ。なお、我々だけでは任務達成は困難と判断した場合、やむを得ず『一般人』に協力を申し出ることがあることを覚えておいてほしい」
「でも、地上の話ですよね? 地上のことは『一般人』に任せて、うちらがそこまでする必要なくないですか?」
「いや、そうも言ってられない。予想によると、奴の進行方向にあるのは、我々の聖地、旧アキバ」
 皆の雰囲気が変わった。ある者は姿勢を正し、ある者は身を乗り出した。
「オタクの本気、見せてやろうじゃないか」
 静かながらも、決意を込めた声で議長が決め台詞を言った。
 ……あ、この人、さては今の状況楽しんでるな。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み