本日の論題:年上か年下notディベート&恋々子
文字数 4,286文字
恋々子たちが必死で桜の相手をしている中、永久莉とエレナは憩いの場を探していた。
マスメディア部の部室だと、再び桜に見つかってしまう。
飽きっぽい桜の性格を考慮すると、長くは持たない。
加え、恋々子もその場のノリと勢いだけで生きているので同調する危険性があった。
そして、男子たちは言わずもがな。年下の男にあのふたりをどうこうできるはずがない。
そう言って、エレナが案内したのは英国研究会の部室だった。
英国研究会の会長はいきなりの訪問+注文に当然の反応を示す。
いやいやいや、エレナ。
あんたいきなり現われて何ほざいてんの?
しかしエレナは別の部員――後輩に案内を頼んで、ちゃっかりと席に付いていた。
そう言いつつも、永久莉に止める気配は一切なかった。
何その旧日本的な考え。
ここ仮にも英国研究会でしょう?
イギリスは基本的にティーバッグなんだよ。
日本がイメージしてるお茶会とかは上流階級のもんであって一般的じゃないの
へー、でもそれじゃ他の紅茶系の部と協同活動は無理くない?
中高一貫組の3年生だけど、もしかしたら協力できるんじゃない?
……英国研究会会長の桜木杠です
ところで、ここの顧問って誰?
まさかSTYだったりする?
STYこと山本先生は両手で溢れるほど顧問を兼任していた。
現にマスメディア部も担当だが、
こんにちは。
ちょっと、協同活動の件で伺っていました
ディベート部、マスメディア部、英国研究会と関係性は薄いだろうに響先生は微塵も気にしていない様子だった。
あっ、でもちょうどよかったかも。
今度、ディベート部に伺おうって思ってたから
以前も言ったと思いますが、そういうのは山本先生を通していただかないと困るんですけど?
えー、やっだぁ。
山本先生っていい年して独身だから絶対何かあるって
(んー、確かに問題はありそうだけど響先生ほどではないかなー?)
でも山本先生ってまだ33とかじゃなかったですっけ?
ここまで言われると、響先生もさすがに気付いたようだ。
先ほどの発言が自虐になっていた事実に。
……ねぇ、結婚するなら年上と年下どっちがいいと思う?
そうして、ディベートでもなんでもない一方的な質問――否、ガールズトークが始まる。
両親がお見合いとか勧めてくるんだけど、みんなオジサンなの
でも…後退してるの。
生え際の境界線がぼやけてるの。
それってAGAの兆候なんでしょ?
そもそも、私たちの年齢に聞いたらたいはんが年上になりますって
相変わらず、悪意のない杠が一番効果的なダメージを与えていた。
まぁ、藍生先輩が言うには同年代と恋愛できなかった人が年上か年下に逃げるらしいんで
世代が離れた異性を好きになる人は性格に難がある可能性が高いそうですよ
年上が好きだとして、本人の精神年齢が高いのか。
それとも、我が強くて我儘なだけなのか
癖になっているのか、ただの雑談にもかかわらず永久莉は理論武装を口にする。
もしくは単に嗜好の問題か。
容姿の影響は思っているよりもずっと大きいですからね
そもそも、男性の場合は本能的に若い女性を求めます。
生物学的なオスとしての本能でしょう
もちろん、その相手が若すぎる場合は別ですけど。
生物学的に語るのであれば、出産を経験しているメスが最もモテるはずですから
一方、女性の場合はリソース――財産の問題があげられるでしょう。
自分とその子供を養ってくれるか否かは重要な案件です
ですが、貯金額が一定を超えると明らかな影響がでるそうですよ
そして、不貞行為をするかどうか。
いくら財産があったとしても、それらを他所の女や子供に浪費されたのでは意味がありませんからね
はいはい質問。
世の中のニュースを観ると、それとは逆の男性のほうがモテてると思うけど?
モテるの定義によります。
単純な性行為となると、自己中心的でスリルを求めるタイプに軍配があがるそうですし
そららの要素に加え、見栄を張れること。
重度の嘘吐きとも言えますけど、とにかく女性に魅力的だと思わせられる人がモテるそうです
そもそも、結婚詐欺師は男女とも容姿端麗ではない人が多いです。
見た目が悪いからこそ、内面は良いに決まっている――少なくとも、異性を騙すような真似はしないというバイアスがかかるからでしょう
充分な財産があるのであれば、年下が良いでしょう。
女性の年齢における卵子の問題同様、精子の老化も認められていますので
でもでもー、お金がなくても年下の男に貢いでいる女性とかいない?
基本的に女性が男性を選ぶと間違えると云われています。
もっとも、その間違いが楽しいわけですけど
そこまでいきますと別の要因が多いかと。
たとえば学生時代に輝けなかった人は、いつまで経っても当時の劣等感から逃れられないそうですから
周囲がキラキラと輝いている中、勉強やアルバイトに精を出していた人に起こりがちな現象ですね
いわゆる夜のお仕事。また、ブランドで身を固めている人。
そういう方々は総じて、その手の傾向が強いと言う話です
自分が羨んでいた存在になりたい、という無意識の行動でしょう。
それをお金の力で成し得る為、辛くとも実入りの良い仕事に就く。
たとえ暴力を振るわれようとも、若くて魅力的な異性に尽くす
あまり容姿が良くないカップルが公共の場でいちゃつくのもそう――
今の自分は他人が羨むモノを沢山持っている、と誇示したいんです
どれも自己肯定感の低さが招く問題です。
自分が信じられないからこそ、誰もが認めるブランドや魅力的な異性を欲する
それなら私は大丈夫かな。
勉強もアルバイトもそんなにしてこなかったし
(……その所為で別の問題が生じている気もするけど)
でも、言われてみるとそうね。
学生時代、苦労してたコがそういうところで働いてるって聞いたことあるわ。
あんなにも頑張っていたのにどうしてかな~って疑問だったけど、そういうことなんだ
可哀そう。
卒業旅行さえもお金がかかるからって我慢してたコがそうなるなんて……人生ってままならないのね
(ナチュラルに酷いんだよな、この先生。まぁ、紅茶やケーキの趣味的に上流階級なんだろうけど)
現代の社会的観点からすれば、その傾向が強いだけです
当然といえば当然ですが、家族に祝福される結婚が最良なんです
特に女性の場合は母親に認められるかどうか。
もちろん前提として、家族仲が良好の場合ですが
よくよく考えてみると、ママの為に結婚しなきゃって考えてる節はあるかも
最終的には一目ぼれが良いと云われていますが、社会的要因を無視できない現代では難しいですしね
それほどまで年齢――社会的に植え付けられたイメージは大きいんです。
おそらく、年齢さえ知らなければ許容できる事柄は多いと思います
(響先生って可愛くて好きだけど、先生としてはまったくもって信頼できないんだよね)
そういった生徒たちの気持ちなど露知らず、響先生は少女みたいに首を傾げるのであった。
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