実家は肛門科の専門病院ですSS

1 しもの病?

エピソードの総文字数=1,107文字

 「どうなさったの、初音(はつね)お姉さま。お顔の色が、真っ青よ」

玲音(れおん)が……」

「まあ! 玲音ちゃん! 彼、もう、高校生なのよね……。お祝い、あげたわよね!」

「あなた、それ、去年の話よ」

「去年! 月日の経つのは、本当に早いものね……」

「それはあなたが、40歳を過ぎたからでしょ!」

「なんてことを! 姉さんだって、とっくに過ぎたでしょ! お金をかけた若作りだけど!」

 姉は、綾音の挑発に乗らなかった。心ここにあらずで、そわそわと髪をいじっている。

「あのね、玲音が……」

「玲音君が?」

「あの子ね……」

「うん」

「玲音が……」

「だから、何よ!」

「痔らしいの」

「痔!」

綾音は、目を剥いた。

「それは大変!」

「そうなの。大変なのよ」

「あれは、辛いのよ。私も、創を生んだ時、いきみすぎて、切れちゃったのよ」

「あなたのことは、どうでもいいの!」

「よくないわよ!」

「あのね、綾音。玲音は、子どもなんか、生んでないのよ?」

「そりゃそうよ。男の子ですもの」

「うちの料理人が、食べ物に気を配っているから、お腹の調子だって、絶好調の筈! ヨーグルトも、ふんだんに食べさせているもの!」

「じゃ、どうして?」

「……」

「……」

 「ねえ、綾音。玲音に、あなたの義理の娘さんを、会わせて貰えないかしら」

「義理の……って、典子さんに?

 ……なんで?」

「なんで? 彼女、その方面では、有名だからよ。経済産業省に勤めている、私の友人が、手放しで褒めていたわ。彼女のおかげで、日本の経済は救われたって!」

「ちょっと、姉さん、それ、何の話?」

「 BL よ!(きっぱり)」
BL

 綾音は、立ち上がった。2、3歩、姉の方に歩み寄り、立ち止まった。床にクッションが置かれているのを確認して、その上に倒れ込んだ。

「なんて恐ろしいこと言うの! め、目眩が……ああ、私、失神するわ!」

「あなた、知らないの? BLが売れに売れて、今、日本経済は潤っているの。彼女の会社のBLは、海外では引っ張りだこだという話よ?」

「だからって、玲音君をなんで、典子さんに会わせなくちゃならないの? 彼女は危険よ! 若い美形の男性には、特にね!」

「あら、あなた、失神したはずじゃ……」

「姉さんだって、かわいい息子に、男をあてがわれたくないでしょう? それでもって、典子さんは、物陰から覗いて、にやにやするんだわ!」

「……手遅れかもしれないのよ」

べそべそと、初音は泣き出した。

「私、あの子の部屋で、いろいろ、見つけちゃったの……あの子、あの子……」

涙を拭いて、妹を見た。

「もう、何を聞いても驚かないわ。だから、この世界に造詣の深い典子さんに、玲音から、真実を聞き出してほしいの……」

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