第3話(10)

エピソード文字数 1,919文字

 時間は、どんな時でも進む。容赦なく淡々と進む。
 ――只今、AM0時25分――。
 ついに『今晩』が訪れ、俺は布団が四つ敷かれた和室におります。にゅむ星人、土佐弁星人、変人と共に……。

「うふふ、お楽しみの時間が来たわね。ささ、お布団に入りましょう」

 普段は着ないネグリジェを身につけた変人が、ワクワクした御様子で誘ってくる。
 …………なんでかなぁ。俺は健全な青少年なのに、嫌気が差してるよ。

「し、シズナ、ここは余所の家だ。帰ってからに変更しない?」
「絶対に、変更はしないわ。あの従妹の傍でイチャイチャして優越感に浸れるチャンスなんて、滅多にないんだもの!」

 やっこさん、やる気満々だ。しかも今宵は彼女が護衛係で、午前4時まで寝ずに護ってくれる。
 つまり、逃げ場がない。

「……………………まぁ、自分から言い出したんだもんな。やるしかないっか」
「レミアさん達と布団を離して…………セット完了ね。さ、従兄くん」
「畏まりました。……レミアフュル、少しうるさくするよ……」

 嫌々、ベッドインならぬ布団イン。ちょっとした拷問の幕開けだ。

「い・と・こ・くん。まずは、太腿を撫でていいわよ」
「………………」
「? 従兄くん?」
「あ、おう、そうだね。そうですね」

 やるしかないっか。そう思っていても、躊躇してしまう。シズナフトモモ怒り、恐るべし。

「従兄くん。太腿、どうぞ」
「は、はい……。なでなで、致します――」

 ビリッ ブチッ ブチブチ ボンッ!
 不承不承手を伸ばしていたら、不思議な音がした。方向からするに、あれの発生源は俺のバッグだ。

「………………なに、今の。異様だったよね?」
「異様、だったわね。調べてみる?」
「そ、そうだね。チェックしてみるよ」

 無性に怖いので『金硬防壁』を展開し、恐る恐る障子の前にあるマイバッグを調査する。怖々ジーッとチャックを引っ張り、ビクビクしつつ開けると――


「レミアがくれた新しいお守りが木っ端微塵になってる!?


 まるで破裂したかのように、バラバラ。バッグには爆弾も刃物も入っていないのに、新品同様のお守りがバラバラになっていた。

「れ、レミア先生……。それ、安全を祈願したお守りやったろ……?」
「にゅ、にゅむ……。今度は壊れないよーに、布さんを重ねて作ったお守りだよー……」

 丈夫にしたモノが、ボロボロだなんて。左の頬を、汗が伝いました。

「………………ねえ、みんな。一つ、発言させていただきますね……」

 汗さんが左頬くんを伝ったボクは、小さく右手をあげる。
 皆様。よく、聴いてください。

「…………………………あのね。口にしてなかったけど、気になってたことがあるんだよ……」
「そ、そうなの? なに、従兄くん?」
「今迄1日数回戦ってたのに、今日は朝1回だけ。高知に来てからは、襲撃がない。これって、嵐の前の静けさってヤツじゃないのかな?」

 地球が壊れたら心臓を奪えなくなるので、ヘンな表現になるが、敵はある程度譲り合って空間を展開――襲ってきている。とはいえ、1日1回はおかしい。
 疑問形にしたが、こいつは的を射ているだろう。

「にゅ、にゅむぅ……」
「これ、近いうちに何かあるぞ……。『金硬防壁』、消しとこう」

 俺は、1日30分しか使えませんからね。非常事態に備えて解除しました。

「ぅぅ…………どうするかな……。と言っても、こちらからアクションを起こせないんだよなぁ」
「私には『遠見』があるけど、次元は多くて広いわ。敵を見つけて犯行を未然に防ぐのは、ほぼ不可能なのよね」
「ワシらぁは、来た悪者先生を倒すしかないがよねぇ。でも安心してや!」
「にゅむっ、あたしたちは英雄(えーゆー)だよーっ。しっかりゆーせー君をお守りしますっ」

 レミアがトテトテ歩み寄ってきて、俺にギュッと抱き付いた。
 にゅむ~ん。彼女はこうやって、言葉と身体で安心させてくれてるんだな。

「ありがとね、レミア、フュル、シズナ。アナタ達がいてくれると、心強いよ――」


 ボッ


 ワォッ。イッツアミラクル!
 バラバラになってたお守りさんが、燃えて灰になりましたっ! 火なんてないのに!!

「………………………………俺、塩を被って寝るわ……。もう起きていたくない……」
「そ、そうね。怒るのも太腿もいいから、おやすみなさい……」
「し、師匠……。おやすみぜよ……」
「にゅむ……。グッドナイトだよー……」

 こんな感じで僕は、現実逃避。育月の農作業を皆で見学する午前7時まで、死んだように眠りましたとさ。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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