夜の喧噪
文字数 1,878文字
日が落ちてだいぶ経つ。
シュトラとフィーネ姉妹は一足先に宿に向かった。
今はラオとロギアが、並んで海沿いの小道を歩いている。
右側に海が広がっている。すぐそこは崖になっており、眺めはとてもいい。
月明かりに照らされた海面は美しかった。
冷や水をかけられた気分だった。
もちろん忘れていたわけではない。
ただ、一日中はしゃぎ回って、復讐のことが頭から離れていたのは事実だ。
――無茶をするな。
要約すればそれだけだ。
しかしその言葉の中にロギアの思いが込められているのを、ラオはひしひしと感じた。
それからはしばらく会話もなく歩いた。
小道を抜けて、街に戻ってくる。
ロギアとはそこで別れ、ラオは街の中を一人歩いた。
とても騒がしい。
誰も彼もが浮かれたように動いている。
酒をあおる男、すりよる女、おこぼれに預かろうとする浮浪者たち……。
一軒の店の前で、ラオは足を止めた。
そこは酒場だった。
中ではたくさんの男達が酒盛りに興じている。
聞こえてくる蛮声はラドミール語だ。
ラオは、彼らの話を聞いて理解することが出来る。
ラオは思い切って酒場のドアを開けた。
蛮声が一気に大きくなった。
みんな叫びまくって、ある者は歌い、ある者は仲間に酒をぶっかけている。
ドサリとカウンターに置かれた袋を見て、周囲の男達が息を呑んだ。
それくらい、ラオの袋には貨幣が詰まっていたのだ。
囲んでいた男の一人に羽交い締めにされた。
その間に、大男が貨幣の入った袋を懐にしまう。
ジョッキをむりやり押し込まれる。
ラオの口に酒がドバドバ入ってきた。
まずい、苦い、くらくらする。
すぐに頭が回らなくなって――