かぶがぶり

文字数 817文字

 かぶちゃんはうちにいるもう一匹のキジ猫で女の子。
 女の子と言っても、今はもう15歳のおばあちゃん。
 これもまたずいぶん前の話です。
 ずいぶん前で、まだ猫部屋はなかった頃です。

 それでその夜、うちのリビングの窓の外に、よそから猫が来ていました。
 そしてその頃人間スペースで一緒に暮らしていた猫たちの、ぴゃーちゃん、ミッキー、アイタロー、そしてラグドールの(と私が思っている)ペコちゃんが窓に集合し、わ~~わ~~っと大声を出し、そのうちに猫たちみんな興奮状態になり、とりわけペコちゃんが大興奮していました。

 ペコちゃんは、それからずいぶん後に、あの迷子事件のわかめちゃんとラブラブになるのですが、それはいいとして、とにかくペコちゃんとかぶちゃんはとても仲が悪かったのです。

 何というか猫が合わないのでしょう。
 長毛で優雅なラグドールのペコちゃん。

 一方、下町で育ったような、野良経験のあるかぶちゃん。
 猫が合うはずもありません。

 それで、大興奮したペコちゃんの声を聞きつけたかぶちゃんは、二階からたったかた~~っと降りてきて、そして何を思ったのか、興奮したペコちゃんが私に襲いかかっていると勘違いしたみたいで、それからさささっとペコちゃんに近づいて、わ~~~っと、ペコちゃんを威嚇するような大声を出しながら、ペコちゃんをにらみつけながら、だけど何故か私の手にがぶりと噛みついたのです。
 
 その場の雰囲気では、かぶちゃんは明らかにペコちゃんを攻撃に行っています。
 だけどともかく、かぶちゃんががぶりと噛みついたのは、よりによって私の手だったのです。
 つまりかぶちゃんの手違いだったのです。

 それで、私の手はハナビ君に噛まれたときと同じくらいに腫れ、そのあとの惨状は、ハナビのときと似たりよったりでした。



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