浮世離れ
文字数 1,464文字
受付へと戻るエルナは肩を落としながら4人の前を歩く。
廊下を進む途中、エルナは突然立ち止まると4人の方へ振り返る。
申し訳ありません……。普段のルイスさんはもう少し穏やかな人なんですが、先程のように時折予想のつかない事も……
シャロアは表情と手振りで懸命にカイゼルの言葉を遮る。
すみません、ヴェルスさん。私が慎重にならなかったばかりに、危うく怪我をさせてしまうところでした……
いえ、カイゼルさんの言う事も間違いではないかもしれません。一時的に害物の力を取り入れるスレイヤーとは違い、ルブルムは害物と常に共生関係にある今までに類を見ない特別な存在です。データが存在しない皆さんをルイスさんが物珍しがるのは分かっていたんですが……
口を動かすと共にエルナの表情が曇る。
あはは……残念ながら、私はただの一般人です。ルイスさんへの対処法は私もある程度の把握はしているのでいち早く動く事が出来ましたが、仮に私が訓練を受けていたとしても皆さんの力を超える事は疎か、同等にまで近付く事ですら不可能かと思われますね
それについては心配は要らないと思うよ
やぁ、また会ったね
音も無く現れたルイスは微笑みながら、軽く手をあげて5人に挨拶をした。
ははは、当然だよ。僕は囚人じゃないからね
そうそう、君達の戦闘記録はエルナから聞いていてね。イヌと戦って後遺症も残らずにこうして生きているなら、上手く機能していると考えたんだ。スレイヤー技術に関わっていた人間が言うんだから間違いないよ
君達4人とフォルクが訓練の時に見た害物だよ、暫定的だけど僕が名前を付けたんだ
データの無い害物が出現した際には、基本的に各支部の有識者が仮称として名前を付ける事になっています。姿が確認された支部で過去の記録に残っている生物の姿と比較し、本部に報告した後、正式に決定された名称が全支部に伝えられるんですよ
不満だったかな?
困ったなぁ……。ルブルムは今後の研究に欠かせない存在だから僕としてはある程度、親密になっておきたいんだけど……
そういう事を言うから良くないんだと思いますよ……
あぁ……それは一理あるかもしれないね……
ルイスさんは独特な人ですが、悪い人ではないという事は理解してもらえると助かります……
何だか僕が可哀想な人みたいな話になってないかい?
そうですか?気のせいですよ
そうか、それならいいんだ