一刀両断(7)

文字数 474文字

 電車を降り、俺は日毬を家まで送った。
 麴町から日毬の家まで、タクシーですぐだ。ここから事務所までも歩いて帰れる。
 俺たちはタクシーを降り、日毬の家の前で向き合った。
 真摯に俺は言う。
「日毬には辛い思いをさせちまって、すまないな。俺にもう少し力があれば、こんな風に好き勝手はさせないんだが……」
「颯斗が私に、どうして謝る必要なんてあるんだ? 颯斗には、とても感謝している。これからもずっと傍で私を支えていてほしい。颯斗が私の初めてで……本当によかった」
 日毬の言葉に、俺は少なからぬショックを受けた。
 この状況になっても、日毬は以前と寸分違わず俺に感謝してくれていると言う。だがメディアの反日毬の動きは、たとえアステッドが仕掛けたものだとしても、すべて自分の至らなさによるものだ。以前アステッドの狩谷常務が指摘していたように、「調整するのがプロダクションの仕事」なのだから。
 ここまで一途に相手を信じてくれる子など、他にいるのだろうか。改めて俺は、日毬のためになんとしてもこの状況を打開してやりたいと気持ちをかき立てられたのだった。
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登場人物紹介

神楽日毬(かぐらひまり)

日本の未来を憂う女子高生。雨の日も風の日も、たゆまぬ努力を重ねて政治活動に励んでいる。

織葉颯斗(おりばはやと)

日本最大の広告代理店、蒼通の社員。営業先に向かう途中、街頭演説の最中だった日毬と出会うことになる。

健城由佳里(けんじょうゆかり)

日本最大の広告代理店、蒼通の社員。新人として織葉颯斗の営業に研修のため同行していたとき、演説中だった日毬に出会う。

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