第35話 進化(こたえ)

文字数 3,722文字

剣、刀、槍、弓、銃、鎚などのあらゆる武器を使い、千の魔獣を倒したため、人々からはこう呼ばれている、万武英雄と。
彼の勇姿は色んな街で聞いた、その一つの中でここから北の大陸を支配した十二魔獣の中で最強の魔獣の群れの侵攻を今現在からこの数年間停滞させ、この大陸を守った話しもあった。

それを行った人が今、目の前にいるのだ。
ただでさえ恐ろしい魔獣をたった一人で立ち向かえる人が。

「四英雄の一人、モーガン・アイハム。
彼のマギアは天地。
大地に触れることで地上にある魔力を吸収でき、また魔力は使用するが無詠唱で空を飛ぶこともできる、四英雄の中では魔力の生成力が一番高い四英雄の中でもかなりの実力の持ち主」
アスラさんがそう言うと、彼は頭をかかじりながら苦笑いしていた。

「へっ、マギアもそこまで知っているのか。
俺のことを過大評価しすぎだが、何者だオメェは?」

「ただの魔獣やリンネを追っている吸血鬼です
魔獣は僕たちで倒したのでもう探しても意味はないですよ」
アスラさんがそう言うと。

ビュンッ

ザッ

ガキィン

一瞬の出来事だった。
理由は分からないが彼はいきなり腰に掛けていた刀剣を抜いて振るった。
だが、アスラさんは全く動じず片手でその刀剣を握ったのだった。

「持っている杖を盾にもしないで、片手で受け止めるとはよく見切ったな、やっぱり何者だ、オメェは。
吸血鬼にこんな魔王軍幹部クラスの奴がいるとは知らなかったわ」

「僕は魔王軍の幹部ではないアスラだ」
そうアスラさんに言い返すと、彼は喜ぶように口元を緩ませてた。

「まぁどうでもいいが、マコトは転生者だからともかく魔獣を倒すマーニにアスラ、お前らに興味が湧いてきた。
転生者でもなく、魔王軍幹部でもなくあそこまで魔獣に対抗できるからな」

「そうですかもうマコトが転生者だったと知っているんですね。
いいですよ、そしたら全力で相手にしますよ」

同じ仲間であるミーナさんに事前に教えてもらったのだろうか、そしたらあのことも知っているんだろう。
いいや、今は。
「アスラさん、俺も手伝うよ」

自分がそう言うと、彼は手のひらをこちらに向けて拒否した。
「いやしなくていい、マコトはさっき魔獣と戦ったせいでマギアの消耗が激しいから、無理に手を出すと巻き込まれてケガするから。
それとマーニ、お前も手を出すな」

「分かったけど、大丈夫なの」
心配する自分たちに彼なりに安心させてもらうためなのか、無表情で親指をグッと上げた。

「一対一で戦おうとは、舐められたもんだな転生者も」
すると、モーガンさんは腰につけていたサブマシンガンという映画の軍人などが使う連発式の銃のようなものを片手で撃ってきた。

「魔力蒸着、術式破壊。
式・零(シキゼロ)」

ババババッ

「貫くは氷の槍、纏うは焔、氷槍絶火!!!」

ビュッ

バシュン
バババッ

アスラさんは炎を包み込んだ氷の弾丸を使って全て撃ち返し、撃ち返された何発かの弾丸は彼の脇腹を横切った。

「へっ、結構やるじゃねぇか」

ビュンッ

サッ

次は、腕にしまっていた一つの短刀を振るった。
だがそれも彼はヒラリとかわした、すごいアスラさん。

「その身のこなし、即座に俺が闇属性の魔法を使うと思ったその洞察力、かなりの戦場をくぐり抜けたな。
本当に貴様は魔王軍幹部ではないのか」

「魔王軍幹部は、四人しかいないだろう」

ドンッ

アスラさんが距離を取ろうと、相手を手で押し倒した。
だが、それを狙っていたのか、倒れそうな瞬間、彼は胸元に手を入れてに仕込んでいた魔力が装填されているドラマで警察の持っている拳銃を取り出し、発射させた。

バババァァーー!!!

ビュン

危ないと思った瞬間、アスラさんは見切っていたのか瞬時に横に避けた。
そして、発射された魔力弾は空に昇って消えていった。

「避けやがった、普通はどんな奴でも当たるぞ。
なんて言う動体視力だ」

「アナタでは、僕には勝てない。
さっさとここから立ち去るといい」

「まぁそうだな、ムカつく野郎だが、まるで手札も分からん、あの至近距離からの銃も避けれるからな。
ここは一時退散かな」

ビュッ

そして、彼はそう言うと空に向かってどこか飛んで行ってしまった。

「よかった逃げてくれた。
アスラさん、大丈夫ですか」

「大丈夫です、早く帰りましょうマコト」
そう言って、足を進めようとすると。

ババァーン

突然、少し離れたところから強大な魔力が直撃した音が聞こえた。

「なにあの爆発音は、何かあったんですか」

「モーガンが出した音だが、モンスター程度にあんな攻撃はしない魔獣かもしれない」

「じゃあさっそく行こう」

「ちょっと待って」

すると俺たち二人がそこに向かおうとするとマーニさんが呼び止めた。
「でもさマコトにアスラ、彼は敵じゃないの」

「何言っているんですか、あの人はちょっと暴力的だけど、でも魔獣を倒すという目的は同じですから。
だって四英雄の人たちもみんなの為に魔獣と戦ってくれているんだから」

「そうなんだ……」

ザァァァッ

その爆発音の近くにいくと、先ほどまで晴れていた天気が嘘のように突然の豪雨となった。

ブゥゥゥン
ザザザッ

その豪雨のなかからでも聞こえる、鋭い羽音、そう間違いない。

「やっぱりここにいたんだ、暴食のリンネ」

ヘラクレスとギラファの大角と大牙を合わせた四本の槍。
黒雲と同じ色の体躯。
羽は、形は蝶のように美しく、色は蛾のように妖艶だった。
そこに彼はスナイパーライフルのようなものでリンネに攻撃していた。

「魔力蒸着、術式破壊、式・零(シキゼロ)」

ババァーン

ザッ

リンネと交戦していたモーガンさんはこちらに気づいて後ろに下がった。
「マコト、コイツがリンネか」

「はい、そうです」

「そうか、そしたらマコト、マーニ、アスラ!!!
協力してくれ、さすがの俺じゃあ勝てないかもしれん」

「そんなこと言われなくても手伝いますよ」

「へっありがとうよ、アスラ。
ちょっとコイツを一発奴に打ち込んでみるから足止め頼むわ」
そう言うと、彼は手に持っている銃に何か特殊な弾丸を入れ込んでいた。

「勝手にしろ」

「なんですか、それは」

グイッ

ダッ

ドガッ

ガチャン

弾丸の装填が完了すると彼は話し始めた。
「これはな、俺の世界ではな、どんなに道が荒れてていてもそこをキャタピラ音を鳴らしながら進撃し、建物だろうが何でも破壊する鉄の怪物みてえな奴がいるんだよ。
その鉄の怪物を貫く徹甲弾と貫いた直後に弾丸が炸裂して内側から破壊する榴弾。
とある国がそれら二つの性質を掛け合わせた弾丸を作り出した」

「ピィッ、キィッキィッ」
ブゥゥゥン
金属が擦れたような声と重厚な羽音ともに、リンネがこちらに突撃しようと羽ばたいてきた。

「それを改良して、自身の魔力で撃てるようにしたものがこの対魔獣ライフル、零式ダインスレイブ。
俺の魔力は対象の魔術を侵食して破壊する闇属性の魔力、それをまとわせることよって相手が物理的、魔力的に耐性があっても対抗できる」
彼はそう高らかに言った後、黙り込んだ。

「どうかしたんですか」

自分が尋ねると、何か分かったのかバツの悪い顔になった。
「チッ、どういうことだよ。
コイツ、リンネじゃねぇな」

ボンッッッッ

ババァーン!!!

弾丸はリンネに直撃して、そのままそれは地面に落ちていった。

「キィッキィッ!!!」

「暴食のリンネを一撃で撃ち落とした」
俺がそう言うと、アスラさんは肩を掴んで頭を横に振って。
バツの悪そうな顔をしていた彼に言った。

「モーガン、暴食聖域の発動をみたか」

「いや見てないし、感じられる魔力量が少なすぎる、あれは恐らく魔獣が暴食のリンネに擬態している。
厄介なことになるぞ、リンネよりかは劣っているが強さは魔獣以上だ、恐らく魔獣達、モンスターと同化する他に別の進化にも手を出しているのか」

彼らの言う通り、そのリンネに擬態した魔獣の真の姿が見えた。

落ちていくそれは、鱗粉をまき散らしながら、四つのハネを持っており、前の二つはアゲハチョウのように黒と白の模様に後ろの二つのハネは暴食のリンネの赤い目を似せるようにしているかのように大きな赤い模様だった。

ザッ

モーガンさんは落ちていく魔獣に向かって再び、対魔獣ライフルを向け発射した。

バァンッ!!!

✳︎✳︎✳︎

そこにあったのは、強力な闇属性の魔力に編み込まれたマギアによって、物理や魔力に強い特殊な殻が解かれ、弾丸の火薬で黒焦げに焼かれた魔獣の姿だった。

その焼け焦げたものを見ながら彼は、厳しい顔で言った。

「もう知っていると思うが転生者はリンネになるんだろう。
お前も覚悟はあると思うが、マコトもリンネになったらアスラやマーニも容赦はするなよ」
知っていたんだ、転生者がリンネになることを。

それを聞いたアスラさんは彼を睨みつけ言い返した。
「いいや僕がマコトを絶対にリンネにはさせない」

「そうかテメェ、俺が言うのもおかしいが口は悪いけど結構仲間思いなんだな。
少ししたらラウも来るからここで待ってやるよ」

「なぜ、モーガンさんがそのことを」

「いやぁ、あんちゃん、それでも気づかないとはワテの変装もなかなか捨てたもんではないですな〜」

「あっ、街で話した交易船の船長」

「じゃあ、またラウが来るまでな」

そう言って彼はどこかに行ってしまった。

追いかけているのは一緒だからまた会えるだろう。
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