13.イズミ、正体を明かす
文字数 3,034文字
いずれ、フリースクールの中か、その帰り道に、私がミツキにアオイ殺害を指示します。
その時、私の正体を明かすことから始めてたら、手間です。
あらかじめエージェント・マスムラとレノックス博士から私の正体を伝えてもらった方が、現場で事がスピーディに進みます。
ミツキは、イズミと目を合わせたとたんに、状況を察する。
アオイさんは、ああいう人だから、直接イズミさんに御礼しなかったかもしれないけど、私には「イズミさんに教わるようになって、あたし、ひょっとして、大学行けるかも……なんて思ったりして」と話してました。
アオイさんをだまして、イズミさん、ひどすぎます。
まして、CIAに追われてる事を知ってて、大学進学の話なんて、めったな相手にするはずがない。
それだけ、アオイがあなたを信用して、心を開いているということ。
つまり、アオイは、あなたには、無警戒、無防備ってことよ。
山科アオイは、あなたと違って、人間兵器に改造される前から、性格に問題がある危険な子どもだった。そんな子が人間兵器化して、ますます危険な存在になっている。
今あなたがアオイを抹殺しなかったら、そのうち、アオイは罪もない大勢の人を殺すようになる。
あの子は、人間ではない、怪物なの。
アオイさんは、他人に危害を加える怪物なんかじゃありません。
見た目は優しくないけど、正直で、心の広い人です。
初日に私がヒドイことを言ったのに、「悪かったのは自分の方だ」と素直に謝ってくれて、それから、ずっと、仲良くしてくれてます。
誰にも懐こうとしない男の子が、アオイさんだけには、なついてる。
ミツキがこのように面と向かって逆らうのは初めてのことだ。
なに、面倒くさいこと、言ってんのよ。
ミツキ、あんたも、アオイも人間兵器なんだから、普通の人間から見たら怪物に決まってるでしょ。
そんなこと言ったら、人殺しの訓練を徹底して受けてる私やエージェント・マスムラのようなCIA工作員だって、普通の人から見たら、十分に怪物だわ。
怪物には、怪物の務めがある。四の五の言ってないで、その務めを果たしなさい。
だから、あなたの正式名称は田之上ミツキじゃなくて、アメリカ国防総省人間兵器番号21091。
アオイの正式名称は、山科アオイじゃなくて、アメリカ国防総省人間兵器番号21085。
兵器は兵器らしく、私やマスムラ工作員のような兵士に使われていればいい。今さら、人間のフリなんか、しないでくれる。
イズミさん、あなたの指示通り、いつでも、どこでも、アオイさんーーじゃなくて、人間兵器番号21085--を破壊します。
私は、自分の機能をちゃんと果たしますから、ご安心ください。
今日は、疲れたので、これで、休ませてもらっていいですか?
残された3人の間に気まずい雰囲気。