第12惑星(4)ギャラクシーフェアリーズ

文字数 5,257文字

                  ☆

「~~‼」

 挨拶代わりの爆音が会場に響く。四人組がステージに登場する。赤い髪のロハが叫ぶ。

「よっしゃー! 着いてこいよー! 地球! まずは『愛の駆け引き』!」

「!」

 叫び声とともに曲が始まる。ダンサブルなナンバーだ。いきなりノリに乗ったダンスを見せる四人に観客は早くも魅了されている。しかし、ロハの荒っぽいダンス、アズールの淡々としたダンス、マリージャの少し癖のあるダンス、ヴェルデのゆったりとしたダンス……一見バラバラかのように見えるが、それが妙に調和が取れたようなダンスに見える。綺麗に振りつけを揃えるのが、魅せるダンスとして正しいとは限らないんだな……。そんなことを考えていると、一曲目が終わる。ロハが再び叫ぶ。

「次だ! 『上がりを目指せ!』!」

 今度もダンサブルなナンバーだ。四人は難しい振り付けを難なくこなしてみせる。彼女たちのダンス技術の確かさに観客はもう夢中だ。曲中でマリージャが笑顔で声をかける。

「盛り上がっていこう~♪」

「盛り上がっているか~! 南半球!」

「うおお!」

「北半球!」

「おおお!」

 ロハがなんともスケールのデカい煽り方をする。

「南極! 燃えているか~!」

「いやいや、ロハ、南極が燃えたら大変だから」

 ロハに対し、マリージャが冷静に突っ込み、観客席が笑いに包まれる。

「次だ! 『色、重ねて彩』!」

 今度はメロディアスなナンバーだ。四人はダンスをせずに歌唱に集中する。歌唱面でもそれぞれ独自の色を出しつつ、確かなパフォーマンスを見せる。激しいダンスだけでなく、歌もしっかりと聴かせることが出来るのか……このわずかな時間で彼女たちの確かな実力を感じさせられた。曲が終わり、マリージャが口を開く。

「は~い、地球の皆さん、こんばんは~♪」

「わああ!」

「きゃあああ!」

 観客の反応にマリージャは笑顔を見せる。

「ははっ、盛り上がってくれていますね~どうもありがとう♪ それじゃあ、今回が初めましてっていう方も多いと思いますので、簡単にですがそれぞれ自己紹介をさせて頂きます。よろしいでしょうか?」

「イエーイ!」

「ありがとうございます……じゃあ、よろしく~」

「『オレの前に道はない! オレの後に道が出来る!』 オレがロハ=ヴォルカンだ! よろしくな! 地球のお前ら!」

「ロハ~♪」

 女性からの声が聞こえる。早くも女性ファンを獲得したようだ。

「『狙いは絶対に外さない……君のコラソンにロックオン……』 私はアズール=リオだ……どうぞよろしく……」

「アズール様~♡」

 男性からの野太い声が聞こえる。様づけとは、既に虜のようだ。

「『ビビビッとしびれさす! 衝撃的な思い出を作ろう♪』 アタシはマリージャ=ヌベだよ♪ 地球のみんな、よろしくね~」

「マリージャちゃん~」

 小さい子の声が聞こえる。親しみやすい印象を与えたようだ。

「『静かに……皆の心を……そっと包み込む……』 我はヴェルデ=セルバだ。よろしくお願いする……」

「ヴェルデ……!」

 静かだが、力強い声が聞こえる。分かる人には確実に刺さったようだ。反応がある程度収まったの見て、マリージャが口を開く。

「え~というわけで……アタシたち……」

「「「「『クワトロ=コローレス』!」」」」

「うわあああ!」

 ポーズを取る四人に対し、大歓声が起きる。

「はい! 改めまして、初めましての方は初めまして!」

「……名前だけでも覚えて帰って欲しい……」

「いや、ヴェルデさ、それはコメディアンの方がつかみで言う台詞だから」

 ヴェルデに対するマリージャの突っ込みに笑いが起こる。アズールが口を開く。

「ロハ、何か言うことがあるのではなかったか?」

「? ああ、オレらは銀河制覇を目指している! まずは太陽系制覇するからよ! ガンガンぶっ飛ばして行くんで、よろしくな!」

「……あ~ロハ、意気込みは結構なんだけど、今回はゲストという形だからね、まずは単独で公演してから言おうか? それじゃあ……いきなりですが最後の曲です! せーの!」

「「「「『最後の一枚!』!」」」」

「……うわああ!」

 曲が終わると、観客が興奮に包まれる。オープニングアクトでここまで盛り上げられるとは……クワトロ=コローレス、恐るべしだな……。マリージャが右手を高々と掲げる。

「グラシアス! 合同ライブ、楽しんでいってね♪」

 続いてステージ上に色違いのフリフリのドレスを着て、ネラとビアンカが現れる。

「ど~も~! ネラで~す!」

「ビアンカで~す!」

「わあああっ!」

 客席が二人の登場に大いに盛り上がる。ネラが声を上げる。

「それじゃあ、一曲目行きます! 『恋は心の隅を取れ!』!」

「わああー!」

「きゃあー!」

 一曲目からもの凄い盛り上がりぶりである。早くも総立ちになった客席の皆はペンライトを思い思いに振っている。黒色、白色、の二色のライトが会場を照らす。二人の息ピッタリなパフォーマンスが存分に発揮されて、一曲目が終わる。

「ど~も~! 皆さん、『ジェメッレ=アンジェラ』のライブにようこそ!」

「ようこそおいでくださいました!」

「改めて、自己紹介させていただきます! まずはウチ、色黒ですが心は純白乙女、ネラ=チェルキオで~す♪」

「は~い、こちら、色白ですが心は腹黒親父、ビアンカ=チェルキオで~す♪」

「うおおおっ!」

 客席から地鳴りのような大歓声が聞こえてくる。

「……続いての曲です。『白黒ついたらアリヴェデルチ!』! 負けた方々さようなら!」

「どこの誰かさんとは言いませんが!」

 続いての曲もアップテンポなナンバーだ。ステージ上の二人が、客席に呼びかけ、客もそれに応える。そういうやりとりを何回か繰り返す。『コール&レスポンス』で会場もさらに盛り上がる。客席も楽しそうだ。

「ありがとう! 次は『運命に抗う』です……」

 三曲目はバラードナンバーだ。二人はしっかりとした歌唱力で客席の心をガシッと掴む。何度聞いても綺麗なハモリだ。双子ならではのパフォーマンスだろう。

「……どうもありがとう……」

 曲が終わると、二人がステージ袖で水分補給をした後、すぐにステージに戻ってくる。自らの呼吸を整えながら話し出す。

「……はい、皆さんこんばんは!」

「こんばんはー!」

「ははっ、元気が良いね~」

「いや~しかし、どうよ、ネラさん?」

「なによビアンカ? その急なさん付けは?」

「あのステージよ、あのステージ!」

「おばちゃんみたいな手振りになっているよ?」

「そうじゃなくて!」

「うんうん分かっているよ、凄かったね、クワトロ=コローレスのステージ」

「正直ね……」

「はい」

「白旗です」

 ビアンカが両手を上げる。ネラが慌てる。

「いや、諦め早くない⁉ そこは闘志に火が点いたとか言おうよ!」

「そんなウソは言えないし……」

「ウソでも必要だから! ウチらを応援してくれている方々も大勢いるから!」

「推し変されそう~」

「怖いこと言わないで!」

 首を捻るビアンカにネラが声を上げる。客席からは笑いが起きる。

「まあ、そうならないように常に新しいことに挑戦しようか?」

「新しいこと? ああ、あれね……」

「おお⁉」

 客席から期待の声が上がる。ビアンカが叫ぶ。

「ソロナンバー行ってみようか! まずはネラ!」

「はい、聞いてね、『心に命令はできない』!」

 ネラのソロナンバーが流れる。客席は黒いペンライト一色になる。

「……はい、次はアタシ、『愛がすべてを支配する』!」

 続いてビアンカのソロナンバーが流れ、客席は白いペンライト一色になる。

「……はい、それぞれのソロナンバーを聴いて頂きました。どうだった?」

「最高!」

「マジ? 良かった。それでは続いてはメドレーです!」

「うおおおっ!」

 メドレーが始まった。客席は興奮しっぱなしだ。それから数曲が続く。激しい曲調が多めなのだが、ダンスの息がぴったりと合っている。

「どんどん行くよー! 『とどめのブラボー!』」

「盛り上がっていこう!」

 二人が両手を✕に交差させると、客席もそれに合わせて✕のポーズを取る。定番曲だ。なんだかんだで会場の空気を一変させてしまった。ネラが話す。

「はい! 今日はどうもありがとうね! 聞いて下さい、『恋は一分、愛は一生』!」

「わああああっ‼」

「……皆、またどこかで必ず会おうね!」 

「今日はマジグラッチェね‼ それじゃあ、ラストよろしく~」

 ジェメッレ=アンジェラが手を振ってステージから退場する。

「ど~も~! 皆さん、『ギャラクシーフェアリーズ』のライブにようこそ!」

「わああああっ!」

 客席が三人の登場に大いに盛り上がる。アユミが声を上げる。

「それじゃあ、一曲目行きます! 『恋は前進あるのみ!』!」

「わああー!」

「きゃあー!」

 一曲目から凄い盛り上がりだ。早くも総立ちになった客席の皆はペンライトを思い思いに振っている。青色、緑色、赤色の三色のライトが暗くなった会場を彩る。

「どうもありがとうー! 続いて、『序盤、中盤、終盤、スキしかない!』!」

「うわあああー!」

 二曲目もアップテンポなナンバーである。ステージ上の三人が、客席に呼びかける。客もそれに応える。そういうやりとりを何回か繰り返す。『コール&レスポンス』だ。

「ありがとう! 次は『恋愛に定跡なし!』!」

「うおわああー!」

 三曲目もアップテンポなナンバーだ。たたみかけるような流れに客席のボルテージは最高潮である。ステージ上の三人もそうだが、客側の体力や熱気もすごい。

「……はい! どうもありがとう!」

 曲が終わると、アユミたちがステージ袖で水分補給をした後、すぐにステージに戻ってくる。自らの呼吸を整えつつ、客席の興奮がある程度治まるのを待ってから、アユミちゃんがゆっくりと話し出す。

「……はい、皆さんこんばんは!」

「こんばんはー!」

「ははっ、とっても元気が良いですね~。それでは自己紹介をさせて頂きます。『千里の道も一歩から、夢に向かって一歩前進!』 アユミ=センリです!」

「アユミちゃん~!」

 青色のライトが一斉に振られる。

「はい……『どんな高い壁でもピョ~ンとひとっ跳び! 私に超えられないものなどありません!』 ケイ=ハイジャです!」

「ケイちゃん~!」

 緑色のライトが一斉に振られる。

「は~い♪ 『嫌なこと全部、槍で貫いちゃうよ? 覚悟は出来た? ロケットのように突き抜けるから遅れないでね? コウ=マクルビです!』」

「コウちゃ~ん!」

 赤色のライトが一斉に振られる。

「はい、改めまして、わたしたち……」

「「「ギャラクシーフェアリーズです‼」」」

「うおわああっ!」

 三人が揃ってポーズを決めると、客席から声にならない大歓声が上がる。再び興奮が収まるのを待ってからアユミが笑いながら話す。

「ふふっ、皆さん、元気が一杯でわたしたちもとっても嬉しいです。ライブはまだまだ続きますので、どんどん盛り上がっていきましょう!」

「うおおっ!」

「それでは続いての曲……『貴方への包囲網』!」

「うおおおっ!」

 自己紹介が終わり、四曲目が始まった。客席は興奮しっぱなしだ。それから数曲が続く。

「それじゃあ、わたしのソロナンバーを聴いて下さい! 『アユミの恋路、負け知らず!』!」

「うおおおっ!」

 アユミがフリフリの衣装を着て、王道のアイドルソングを満面の笑顔で歌う。観客も大盛り上がりだ。アイドルが好きだということがよく伝わってくるステージングだ。

「それじゃあ、私のソロナンバーを聴いて下さい! 『ケイのジャンプで、追い詰める!』!」

「ぬおおおっ!」

 ケイがラフな衣装を着て、ヒップホップソングをクールに歌う。トリッキーなジャンプを織り交ぜたダンスに観客は大盛り上がりだ。クールさの中にも情熱を感じさせる。

「それじゃあ、アタシのソロナンバーを聴いてね! 『コウの愛で貫くよ!』!」

「ぐおおおっ!」

 ステージではコウがポップな衣装を着て、ポップスを楽しげに歌っている。ステージを左右素早く移動して行うファンサービスに観客は大盛り上がりだ。冷静さも備わってきた。ソロ曲のメドレーが終わると、三人がステージ袖に引っ込む。

「……アンコール! アンコール!」

 客席からアンコールが飛び出す。しばらくすると、三人がステージに戻ってくる。

「うおおおおっ!」

 客は大興奮だ。三人はまた二曲ほど歌う。そして、アユミが話す。

「はい! 今日はどうもありがとう! それじゃあ、今日のライブを一緒に盛り上げてくれた皆さんをお呼びしましょう! 皆さん、来て下さい!」

 アユミの呼びかけに応じ、ジェメッレ=アンジェラの二人と、クワトロ=コローレスの四人が改めてステージに上がる。客席も大いに盛り上がる。

「どうおわあああっ‼」

「はい、皆さん揃ったところで……続いてが本当に最後の曲です!」

「えええっ!」

「聞いて下さい、『Live or Die?』!」

「わあああああっ‼」

 観客によるこれ以上ないほどの大歓声が会場を包み込んだ。
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