第３話

男は私の姿を見てざわついた。成人の日の姿なのにTシャツ一枚だけである。すぐ整ったその髪にあの子だと気づいた男はシャツの柄に疑問に思う。

「そのハートマークなんだ？」

「またカレー食わせてよ。いつでも来ていいって言ってたでしょ？」

「？--」

「あの子お前だったのか--今日はハヤシライスだ。あがれ。」迷いながら家にあがらせる。

そいつは上がり込んで正座でニコニコしていておもむろに喋りかけた。
「どういう意味かわかるよね？成人したんだよ。」


ハートマークに目がいき、
そして無理矢理服を乱暴に脱がす、その子は興奮しかけたとき、
その男は無理矢理服を着せた。

「これでよし。」

その服は品がよくおちついた色のボーイッシュだ。
「あんたがあのカレーの子なら、俺はあんたをたやすく扱わない。親はどうしたんだ？」

あざけた男を燃える執念が見つめる。

「こんなの付け焼き刃よ。それに親とはもう関係ない！」

「親は腐っても親だ。家出しても関係がついてまわる。お前暴力をうけてたろ！なぜそのことをあの時言わなかった？」

服を脱いだ時に傷を見られていたので言い訳できない。修羅場になりつつある女は突然素直になる。

「あの時は親が怖くて言えなかった。でも今は違う！私仕事して生活してたもん。」

「なんの仕事だ？その尻軽さ、人には言えない仕事じゃないのか？」

その子は苦悶する。図星だったのだ。その目はやけになって見えた。
「だから私はのことが------「いうな！」
男がその悪い流れを止めて続けた。

「頑張ったんだな。今までほんとよく一人で生きた。お前は偉い！」

みえないわたしの心を見て言っていた。

「だって、君のは死にたい自分に打ち勝った大人じゃないか。」
その執念は言葉にザワつき、変化する。

その一言はわたしの狂おしい生き方を肯定しそしてなぜ好きになったかわかった。
「私ごときあなたの前では死ねないのにきづいたよ。あなたに出会えてよかった。」
そう言いながらもその子は諦めた。
なにもかもに。

心の声が自然と出たとき彼は男の目をしていた。
「ハヤシライス食うか？」
「食べる！」

男は脱いだ服をたたむさい、ポッケを確認しそこに「会いたい」の手紙を見つけて、それをじっと眺め、彼女の想いに純真さを感じた。

去り際にさりげなく男は引き止める。

「なあ。俺の遺書を読んでみないか？」

「そのアルバイトまだやってるの？」

男は見つめて補足する。

「いやその俺のほんとの遺書をだよ。」

「え？-」
言葉に詰まるとはこのことである。

もう死ぬ理由がなかったがこの出会いをやり直したかった。誰かと、

「さようなら」
笑顔でまた会う時を夢見ながらクスクス笑う、会えたと思うその日、気分転換で違う道に進む。信号を青で渡った時、信号無視する車に驚きながら違う車が女に突っ込んだ。

そして
男はかばった。男は横転した車の下で伏せながら手紙を彼女に渡す。
「わすれものだ。」
会いたいの文字がそこに書かれてある

静かにそっと女は約束する。

「また来世であえるといいね。」

するとすーっと男は眠った。
その手紙をずっとにぎって絶望している私は手紙に字が添えられていた。

「お前名前なんだっけ?」

え？ガ〜ン---

「ははは」
死んだと思われた男は笑い出す。

そのあと初めて抱きしめた。その時やっと泣けたのだ。